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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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20/83

【コズミックホラー】最後の信号

ホラーかな

 宇宙ステーション「ホープ」から、地球への最後の通信が途絶えて、3日が経っていた。

「まだ、応答ありません」

 管制室のオペレーターが報告した。

「乗組員は6名。全員、生命反応なし」

 僕は、救助隊のリーダーとして、ホープに向かうことになった。

「原因は?」

「不明です。3日前、突然通信が途絶えました」

 宇宙船に乗り込んだ。

 メンバーは、僕を含めて4名。

「これより、ホープへの救助ミッションを開始する」

 24時間後、ホープに到着した。

 外見は、正常に見える。

 損傷もない。

「ドッキング開始」

 ステーションに接続した。

 ハッチを開けた。

 中は、真っ暗だった。

「電力は?」

「生きています。でも、照明が全て消えている」

 懐中電灯で照らしながら、進んだ。

 廊下には、誰もいない。

「こちら、リビングエリア到着。異常なし」

 でも、違和感があった。

 テーブルに、食事が並んでいる。

 まだ温かい?

 いや、3日も経っているのに、おかしい。

「これ...」

 近づいた。

 食事に、手を伸ばした。

 その瞬間、背後から声がした。

「触らないで」

 振り返った。

 そこに、女性が立っていた。

 ホープの乗組員、リサ・チェン博士。

「リサ博士!」

「来ちゃったんですね...」

 彼女の顔は、青ざめていた。

「大丈夫ですか? 他の乗組員は?」

「...死にました」

「え?」

「全員、死にました。私以外」

 リサが、僕を見た。

 その目は、虚ろだった。

「そして、あなたたちも...」

「どういうことですか?」

 リサは、ゆっくりと歩き出した。

「ついてきて。説明します」

 メディカルベイに案内された。

 そこには、5つのボディバッグが並んでいた。

「これが...他の乗組員?」

「開けないで」

 リサが制止した。

「何が起きたんですか?」

 リサが、ため息をついた。

「3日前、私たちは信号を受信したんです」

「信号?」

「宇宙からの。未知の信号」

 モニターを起動した。

 画面に、波形が表示された。

「これです」

 規則的なパターン。

 明らかに、人工的な信号。

「これを解析したら...」

 リサが続けた。

「メッセージが含まれていました」

「何て?」

「『見るな』」

「見るな?」

「ええ。でも、キャプテンは無視しました」

「見せてもらえますか?」

「見ない方がいい」

「見せて下さい」

「後悔しますよ。見ない方がいいです。」

 リサがの静止を振り切り、別のモニターを起動した。

「はぁ...信号の発信源を追跡したんです。そして、見つけました」

 画面に、映像が映った。

 深宇宙の、何もない空間。

 でも、よく見ると、何かある。

 巨大な、球体。

 真っ黒な球体が、宇宙に浮かんでいた。

「これは...」

「直径、約10キロメートル。完全な球体。表面は、光を全く反射しない」

「人工物?」

「わかりません。そして、この球体から、信号が発信されていました」

 リサが、声を震わせた。

「キャプテンは、望遠鏡カメラでこれを観測しました。高解像度で」

「それで?」

「...球体の表面に、何かが書いてあったみたいです。」

「何が?」

「わかりません」

「確認しましょう」

「これ以上はダメです!」

 リサが強く静止する。リサの静止を振り払い画像を拡大した。


 球体の表面に、無数の文字。

 いや、文字じゃない。

 人の顔だった。

 何億、何兆という人の顔が、球体の表面に浮かび上がっている。

 全員、同じ表情。

 恐怖に歪んだ顔。

「これは...」

「キャプテンは画像を見た瞬間、倒れました」

 リサが続けた。

「心臓発作。即死でした」

「他の乗組員は?」

「みんな、同じです。この画像を見た者は、全員死にました」

「なぜ、あなたは?」

「私は、見なかったんです。キャプテンが倒れた時、すぐにモニターを消しました」

 リサが、僕を見た。

「でも、あなたたちは、今、見てしまいましたね」

 心臓が、ドクドクと音を立てた。

「まさか...」

「ええ。この画像を見た者は、みんな死にます」

「そんな...」

 後ろを振り返った。

 他の救助隊メンバーも、画像を見ていた。

「みんな、まずい...」

 一人が、倒れた。

「佐藤!」

 駆け寄ったが、もう息をしていなかった。

「これは、呪いですか? それとも...」

「分かりません」

 リサが言った。

「でも、確実です。見た者は、死にます」

 残り、3人。

 僕と、リサと、もう一人の隊員、田村。

「どうすれば...」


 リサが、端末を操作した。

「この球体、実は移動しているんです。地球に向かって」

「地球に?」

「ええ。このままだと、3ヶ月後、地球の軌道に到達します」

「それで?」

「地球から、この球体が見えるようになります。望遠鏡で」

「つまり...」

「世界中の天文学者が、この球体を観測します。そして、高解像度の画像を撮影します」

 リサが、悲しそうに笑った。

「その時、沢山の人が死にます」

 絶望した。

「止める方法は?」

「分かりません。でも、一つだけ試せることがあります」

「何ですか?」

「信号に、返信するんです」

「返信?」

「ええ。『見るな』という警告を送ってきた存在に、『分かった、もう見ない』と返信する」

「それで、球体は止まるんですか?」

「分かりません。でも、試す価値はあります」

 僕たちは、信号を送信した。

『我々は理解した。もう見ない。地球から離れてほしい』

 返信を待った。

 1時間、2時間...

 そして、12時間後。

 新しい信号を受信した。

 解析した。

 メッセージが表示された。

『手遅れ。お前たちは見た。代償を払え』

「代償...」

 その夜、田村が死んだ。

 睡眠中、突然心臓が止まった。

 残り、僕とリサだけ。

「もう、終わりですね...」

 リサが、窓の外を見た。

 遠くに、黒い球体が見える。

 こちらに近づいている。

「なぜ、こんなものが存在するんですか?」

「分かりません。でも、一つだけ仮説があります」

「何ですか?」

「この球体は...墓なのかもしれません」

「墓?」

「ええ。死んだ文明の。見た者を殺すことで、自分たちの存在を永遠に保つ」

 リサが続けた。


 それから、数時間。

 僕の体調が悪化した。

 胸が苦しい。

「もう、時間ですね...」

 リサが、僕の手を握った。

「一緒に、死にましょう」

「...怖いですか?」

「怖いです。でも、一人じゃないから」

 そして、僕たちは、最後のメッセージを地球に送った。


『これより、全人類へ警告する。

 宇宙の座標XXXに、黒い球体が存在する。

 絶対に観測するな。

 見た者は死ぬ。

 我々の犠牲を無駄にしないでくれ。

 ホープ、最後の乗組員より』


 メッセージを送信した後、僕は意識を失った。


 そして、目を覚ました時。

 僕は、球体の表面にいた。

 いや、僕の顔が、球体の表面に刻まれていた。

 無数の顔の中の、一つとして。

 リサの顔も、すぐ隣にあった。

 そして、僕たちは、見ていた。


 宇宙を。


 地球を。


 これから、誰かがこの球体を見るのを。


 そして、死ぬのを。


 仲間が増えるのを。


 永遠に。




【地球 - 3ヶ月後】

「新しい天体を発見しました!」

 天文台の研究員が、興奮して報告した。

「黒い球体です。非常に興味深い!」

「高解像度で撮影しよう」

 望遠鏡が、球体に向けられた。

 画像が、画面に映し出された。

「これは...」

 研究員の顔が、青ざめた。

 球体の表面に、無数の顔。

 そして、その中に、見覚えのある顔があった。

 ホープの乗組員たちの、顔が。

「まさか...」

 研究員が、倒れた。

 そして、3ヶ月後。

 地球の人口は、半分になっていた。

 黒い球体には、新しい顔が、何十億と刻まれていた。

 そして、球体は、次の星に向かって移動を始めた。




 永遠に、犠牲者を増やし続けるために。

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