【異世界転生】転生ガチャ
死んだ。
交通事故だった。
気づくと、真っ白な空間に立っていた。
「ようこそ、転生センターへ」
目の前に、スーツ姿の男性が立っていた。
「あなたは死亡しました。これから、転生していただきます」
「転生...?」
「ええ。異世界への転生です。最近、標準サービスになりました」
男性がタブレットを差し出した。
画面には、様々な異世界が表示されている。
「中世ファンタジー世界」
「SF未来世界」
「現代風魔法世界」
「和風妖怪世界」
「お好きな世界を選べます。ただし...」
「ただし?」
「転生時の条件は、ガチャで決まります」
「ガチャ?」
男性が説明した。
転生時のステータス、能力、家柄、容姿。
全て、ガチャで決まる。
「無料ガチャは1回だけです。課金すれば、何度でも回せます」
「課金? 死んでるのに?」
「生前の貯金が、ポイントに換算されます。1万円=1ポイント。1回のガチャは10ポイントです」
つまり、10万円で1回。
僕の貯金は約500万円。
50回回せる。
「まあ、とりあえず無料ガチャを回してみてください」
画面の「ガチャを回す」ボタンを押した。
キラキラとしたエフェクトの後、結果が表示された。
『レア度:コモン(最低ランク)
世界:中世ファンタジー
身分:平民の三男
能力:なし
容姿:普通
ステータス:全て平均以下』
「これは...ひどいですね」
男性が苦笑いした。
「まあ、無料なので」
「これで転生するんですか?」
「できます。でも、かなり厳しい人生になるでしょう」
「じゃあ、課金します」
10ポイント支払って、もう一度回した。
『レア度:コモン
世界:SF未来世界
身分:スラム街の孤児
能力:なし
容姿:普通
ステータス:体力のみ高い』
また微妙だ。
もう一度。
『レア度:レア
世界:現代風魔法世界
身分:中流家庭の長男
能力:小さな炎を出せる
容姿:やや良い
ステータス:魔力が高い』
「お、レアが出ましたね。悪くないですよ」
でも、「小さな炎」って弱そうだ。
僕は回し続けた。
10回、20回、30回...
ほとんどがコモンかレア。
たまにスーパーレアが出るが、それでも微妙。
『身分:騎士の息子だが、魔力なし』
『能力:動物と話せるが、戦闘力なし』
『容姿:超イケメンだが、病弱』
40回目。
ついに、ウルトラレアが出た。
『レア度:ウルトラレア
世界:中世ファンタジー
身分:王族(第二王子)
能力:剣術の天才、魔法も使える
容姿:超絶イケメン
ステータス:全て最高ランク』
「すごい! これは当たりです!」男性が興奮した。
完璧だ。
でも、何か物足りない。
「もっと上のレアはないんですか?」
「ありますよ。『レジェンダリー』です。でも、確率は0.1%。ほぼ出ません」
0.1%...
でも、気になる。
「どんな内容なんですか?」
「例えば、『勇者として召喚され、最初から最強スキル全部持ち、美少女ハーレム確定』とか」
それだ。
それが欲しい。
「もう一回、回します」
残りポイント:10。
最後のガチャ。
ボタンを押した。
画面が虹色に光った。
「レジェンダリー!?」
『レア度:レジェンダリー
世界:中世ファンタジー
身分:勇者(異世界から召喚)
能力:【無限成長】【万能魔法】【不死身】【美女に好かれる】
容姿:完璧
ステータス:カンスト』
完璧すぎる。
「これで決定します!」
「かしこまりました。では、転生を開始します」
意識が遠のいた。
目が覚めると、異世界だった。
王城の謁見の間。
僕は勇者として召喚されていた。
「勇者様!」
美しい王女が駆け寄ってきた。
「魔王を倒してください!」
チュートリアルのようにスムーズだ。
ステータスを確認すると、全てがカンスト。
スキルも最強。
最初の戦闘で、魔物を一撃で倒した。
「すごい...!」
冒険者たちが驚愕する。
一週間で、僕は英雄になった。
魔王軍の幹部も、あっさり倒した。
そして、1ヶ月後。
魔王城に到着した。
「勇者よ、よくぞここまで来た」
魔王が玉座に座っていた。
でも、僕の【鑑定スキル】で見ると、魔王は弱い。
レベル100。
僕はレベル500。
「終わらせます」
一撃で、魔王を倒した。
世界に平和が訪れた。
僕は英雄として称えられ、王女と結婚した。
完璧な人生だった。
でも、何もかもが簡単すぎた。
戦闘も、恋愛も、全てがイージーモード。
半年後、僕は飽きていた。
何をやっても、勝てる。
誰と話しても、好かれる。
どんな問題も、スキルで解決できる。
つまらない。
ある日、王城の図書館で見つけた。
「転生センターとの通信魔法陣」
これを使えば、あの空間に戻れる。
僕は魔法陣を起動した。
「おや、勇者様。どうかされましたか?」
男性が現れた。
「飽きました。別の世界に転生し直したい」
「え? でも、あなたはレジェンダリーで...」
「簡単すぎてつまらないんです」
男性は困った顔をした。
「そういう方、時々いるんですよね...」
「別の世界に行けますか?」
「できます。ただし、今の記憶を持ったままだと、どの世界でも無双できてしまいます」
「じゃあ、記憶を消して」
「本当にいいんですか?」
「いいです。また、ガチャから始めたい」
男性がため息をついた。
「分かりました。では、もう一度転生します」
意識が遠のいた。
目が覚めると、また真っ白な空間にいた。
「ようこそ、転生センターへ」
男性が立っていた。
「え? また?」
「あなたは死亡しました。これから、転生していただきます」
記憶が消されている?
でも、何か違和感がある。
「これ、前にも来たような...」
「気のせいですよ。さあ、無料ガチャを回してください」
ボタンを押した。
『レア度:コモン
世界:中世ファンタジー
身分:平民の三男
能力:なし』
「うーん、微妙ですね。課金しますか?」
「します」
ポイントを確認すると、500ポイントあった。
「あれ? 前回の貯金より多い...」
「...ん?前回?」
「気のせいでしょう」
男性が微笑んだ。
僕はガチャを回し続けた。
そして、40回目。
またウルトラレアが出た。
王族、天才、イケメン。
「これ、前にも見た気が...」
「気のせいですよ」
何かおかしい。
でも、思い出せない。
僕は続けた。
最後のガチャ。
またレジェンダリーが出た。
勇者、最強、ハーレム。
完璧だ。
「これで決定します」
「かしこまりました」
転生した。
そして、また1ヶ月で魔王を倒した。
また、つまらなくなった。
また、転生センターに戻った。
「飽きました」
「そうですか」
男性が慣れた様子で言った。
「では、転生しましょう」
これを、何度繰り返しただろう。
5回? 10回? 100回?
分からない。
でも、ある時、気づいた。
男性の表情が、疲れている。
「あなた...何回目ですか?」
「え?」
「僕の転生、何回目?」
男性は観念したように答えた。
「1,253回目です」
「1,253回!?」
「ええ。あなたは毎回、レジェンダリーを引くまで回し続け、転生し、飽きて戻ってくる。そして記憶を消してまた始める」
「なんで止めなかったんですか?」
「止められません。転生は本人の意志ですから」
男性が疲れた顔で続けた。
「もう、やめませんか?」
「でも、完璧な人生を求めて...」
「完璧な人生なんて、ありません」
男性がきっぱり言った。
「レアでも、レジェンダリーでも、結局あなたは飽きるんです」
「じゃあ、どうすれば...」
「諦めて、コモンで転生してみては?」
「コモン? あの最低ランク?」
「ええ。能力もない、容姿も普通、身分も低い。でも、だからこそ必死に生きられる」
僕は悩んだ。
そして、決めた。
「分かりました。最初の無料ガチャで出たやつで、転生します」
ボタンを押した。
『レア度:コモン
世界:中世ファンタジー
身分:平民の三男
能力:なし
容姿:普通
ステータス:全て平均以下』
最低だ。
でも、これでいい。
「これで決定します」
男性が驚いた顔をした。
「本当にいいんですか?」
「いいです」
「分かりました。頑張ってください」
転生した。
貧しい農村の三男として。
魔法も使えない。
剣も下手。
顔も普通。
毎日、畑仕事。
でも、不思議と楽しかった。
小さな成功が、嬉しい。
初めて魔物を倒せた時、心から喜んだ。
村の娘に告白して、断られた時、本気で落ち込んだ。
これが、人生だ。
完璧じゃない。
でも、生きている。
そして、思った。
現実世界の僕も、こうだったんだろう。
コモンの人生を。
でも、それが当たり前で。
それが、良かったんだ。
ガチャで引き当てた完璧な人生より。
自分で作る不完全な人生の方が。
ずっと価値がある。
評価いただけると嬉しいです。




