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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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【SFアクション】音速の狩人

【第一章:降下】


 その日、空が裂けた。


 午前十時、東京上空。青く澄んだ空に、突然亀裂が走った。亀裂は広がり、そこから「何か」が降ってきた。


 巨大な外骨格生命体。


 体長は約五十メートル。甲殻類のような外殻を持ち、六本の脚と四本の腕を持つ。頭部には複眼があり、口には鋭い顎がある。


 しかし、最も恐ろしいのは、その速度だった。


 生命体は、音速を超えて飛んだ。マッハ1.5、いや、マッハ2。ソニックブームが、都市を揺らした。ビルの窓ガラスが割れ、車のアラームが鳴り響いた。


 生命体は、旋回しながら降下した。そして、渋谷の交差点に着地した。


 着地の衝撃で、地面が陥没した。周囲の建物が揺れた。人々は、悲鳴を上げて逃げ惑った。


 生命体は、動かなかった。ただ、そこに立っていた。複眼で、人間たちを観察していた。


 その時、自衛隊が到着した。戦車、装甲車、ヘリコプター。しかし、彼らが攻撃を始める前に、生命体が動いた。


 音速で。


 生命体は、一瞬で自衛隊の部隊に突っ込んだ。衝撃波が、車両を吹き飛ばした。兵士たちは、何が起きたのかわからなかった。


 生命体は、再び音速で飛び去った。そして、別の場所に着地した。今度は、新宿だ。


 そこでも、同じことが起きた。破壊、混乱、恐怖。


 その日、東京は地獄と化した。


 俺の名前は、ハヤテ。二十八歳。航空自衛隊のパイロットだ。いや、だった。


 俺は、基地で緊急召集を受けた。しかし、F-15で出撃する命令ではなかった。別の命令だった。


「ハヤテ三佐、特殊プロジェクトに志願してもらいたい」


 上官が言った。


「特殊プロジェクト?」

「コードネーム『ソニックハンター』。音速生命体に対抗するためのプロジェクトだ」

「どうやって対抗するんですか」

「新型のパワードスーツだ。音速を超えて動けるスーツだ」


 俺は、驚いた。


「人間が、音速を超えて動く?」

「可能だ。しかし、リスクもある。このスーツを着用すると、もう普通の人間には戻れない」

「どういうことですか」

「体を改造する必要がある。生物学的再設計だ。もう、生身の人間ではなく、生体戦闘機になる」


 俺は、考えた。しかし、選択肢はなかった。音速生命体は、すでに数十体が地球に降下していた。通常兵器では、対抗できない。


「志願します」


 俺は、答えた。


【第二章:改造】


 手術は、三日間続いた。


 俺の体は、徹底的に改造された。


 まず、骨格。人間の骨は、音速の加速に耐えられない。だから、炭素繊維複合材に置き換えられた。軽く、強く、しなやか。


 次に、筋肉。通常の筋肉は、音速の動きについていけない。だから、人工筋繊維が埋め込まれた。電気信号で収縮し、人間の筋肉の百倍の出力を発揮する。


 皮膚。通常の皮膚は、音速の摩擦熱に耐えられない。だから、超高強度の合成皮膚に置き換えられた。炭素繊維レベルの強度を持つ。


 内臓。最も難しい部分だった。音速で加速すると、内臓が体内で移動する。それを防ぐために、内臓固定機構が埋め込まれた。内臓を、柔軟な繊維で固定する。


 血液。通常の血液は、高速移動時の圧力変化に対応できない。だから、血流圧自動制御システムが埋め込まれた。血圧を、瞬時に調整する。


 肺。音速移動中は、呼吸ができない。だから、体内酸素貯蔵システムが埋め込まれた。イルカのように、大量の酸素を筋肉と血液に貯蔵する。


 脳。最も重要な部分だった。通常の脳は、音速の情報処理についていけない。だから、神経処理加速装置が埋め込まれた。脳の処理速度を、十倍に高める。


 手術が終わった時、俺はもう人間ではなかった。いや、人間だが、普通の人間ではなかった。


 鏡を見た。外見は、ほとんど変わっていない。しかし、体の中は、完全に別物だった。


「気分はどうだ」


 医師が聞いた。


「悪くない。体が、軽い」

「それは、骨格が軽量化されたからだ。しかし、強度は十倍だ」

「いつから、訓練できますか」

「明日から。まず、スーツに慣れることだ」


【第三章:スーツ】


 パワードスーツは、格納庫にあった。


 それは、美しかった。流線型のフォルム。黒と銀のカラーリング。まるで、戦闘機のようだった。


 俺は、スーツに近づいた。スーツは、自動で開いた。中に入る。


 スーツが、閉じた。瞬間、俺の体とスーツが同期した。神経接続が、確立された。


 スーツは、俺の第二の皮膚だった。いや、俺自身だった。


 ディスプレイが、起動した。視界に、情報が表示される。速度、高度、周囲の状況。すべてが、リアルタイムで更新される。


「ハヤテ、聞こえるか」


 通信が入った。オペレーターの声だ。


「聞こえる」

「これから、基本機能のテストを行う。まず、慣性制御システムだ」


 慣性制御。これが、音速移動の鍵だった。


 通常、物体が加速すると、慣性が働く。人間が急加速すると、内臓が潰れ、血液が偏り、脳が損傷する。


 しかし、スーツには慣性制御システムが搭載されていた。スーツの周囲に、特殊な力場を発生させる。この力場が、慣性をキャンセルする。


 俺は、テストを開始した。スーツで、一歩踏み出した。すると、体が軽く浮いた。慣性制御が、機能している。


 俺は、走った。時速百キロ。しかし、体への負担はほとんどない。慣性が、キャンセルされている。


 次に、衝撃波制御システムのテストだ。


 音速を超えると、衝撃波が発生する。ソニックブーム。これは、周囲に大きな被害を与える。


 しかし、スーツには衝撃波制御システムが搭載されていた。電磁バリアとプラズマシールドを組み合わせて、前方の空気を分離する。これにより、衝撃波を最小限に抑える。


 俺は、加速した。時速五百キロ、八百キロ、千キロ。そして、音速。


 マッハ1。


 しかし、ソニックブームは発生しなかった。衝撃波制御が、機能している。


 俺は、さらに加速した。マッハ1.5、マッハ2。


 視界が、歪んだ。しかし、神経処理加速装置のおかげで、すべてが認識できる。


「素晴らしい。完璧だ」


 オペレーターが言った。


「次は、熱制御システムのテストだ」


 音速移動では、摩擦熱が発生する。スーツの表面温度は、数百度に達する。


 しかし、スーツには熱制御システムが搭載されていた。体内冷却循環システムと、放熱フィンだ。


 俺は、長時間の音速飛行をテストした。十分間、マッハ2で飛び続けた。


 スーツの表面温度は、上昇した。しかし、体内は涼しいままだった。熱制御が、機能している。


「すべてのシステム、正常だ」


 オペレーターが言った。


「ハヤテ、君は、人類初の音速戦士だ」


【第四章:初陣】


 訓練から一週間後、実戦が来た。


 音速生命体が、大阪に出現した。すでに、数百人が死亡している。


 俺は、スーツを装着した。そして、基地から出撃した。


 音速で飛んだ。マッハ2で、東京から大阪まで。所要時間、約十分。


 大阪上空に到着した。下を見ると、生命体が見えた。


 巨大な甲殻。六本の脚。四本の腕。複眼。


 生命体は、ビルを破壊していた。音速で移動し、体当たりで建物を粉砕していた。


 俺は、降下した。生命体の前に着地した。


 生命体は、俺を見た。複眼が、俺を捉えた。


 そして、生命体が動いた。音速で、俺に向かってきた。


 しかし、俺も動いた。音速で。


 俺と生命体は、衝突した。いや、すれ違った。互いに、音速で移動しながら。


 俺は、反転した。生命体も、反転した。


 再び、衝突。いや、攻撃。


 俺は、スーツの腕部に搭載された高周波ブレードを展開した。振動数、毎秒一万回。どんな物質も切断できる。


 俺は、生命体に斬りかかった。音速で。


 ブレードが、生命体の外殻に当たった。火花が散った。しかし、外殻は切れなかった。


 硬すぎる。


 生命体が、反撃してきた。腕を振り下ろす。音速で。


 俺は、回避した。しかし、間一髪だった。生命体の腕が、俺のすぐ横を通過した。衝撃波が、俺を吹き飛ばした。


 俺は、バランスを崩した。地面に激突した。いや、慣性制御が働いて、衝撃は吸収された。


 しかし、生命体の攻撃は容赦なかった。連続攻撃。音速で。


 俺は、必死で回避した。しかし、一撃が当たった。胸部に。


 スーツの装甲が、凹んだ。内部にダメージ。


「くそ」


 俺は、距離を取った。音速で後退した。


 生命体は、追ってこなかった。ただ、その場に立っていた。俺を観察していた。


 まるで、俺の能力を測っているようだった。


 俺は、考えた。正面からの攻撃では、勝てない。別の方法が必要だ。


 その時、オペレーターから通信が入った。


「ハヤテ、生命体の弱点を発見した」

「どこだ」

「腹部だ。外殻が薄い」

「了解」


 俺は、戦術を変えた。生命体の注意を引きつけて、腹部に回り込む。


 俺は、音速で生命体の周りを旋回した。生命体は、俺を追おうとした。しかし、俺の方が速い。


 俺は、生命体の背後に回り込んだ。そして、腹部に向かって突進した。音速で。


 高周波ブレードを構えた。


 そして、斬った。


 ブレードが、生命体の腹部を切り裂いた。青い体液が、噴出した。


 生命体は、叫んだ。甲高い音。耳を劈くような音。


 しかし、俺は止まらなかった。さらに斬った。深く、深く。


 生命体は、倒れた。巨大な体が、地面に崩れ落ちた。


 そして、動かなくなった。


 俺は、勝った。


「ハヤテ、任務完了だ」


 オペレーターが言った。


 俺は、安堵した。しかし、同時に疲労を感じた。音速戦闘は、想像以上に消耗する。


 俺は、基地に帰還した。


【第五章:進化】


 最初の勝利から、数週間が経過した。


 音速生命体は、次々と地球に降下していた。世界中で、戦闘が行われていた。


 各国が、音速戦士を育成していた。アメリカ、ロシア、中国、ヨーロッパ。みんな、同じ技術を使って、人間を改造していた。


 俺は、何度も出撃した。東京、大阪、名古屋、福岡。日本中を飛び回った。


 そして、勝った。何度も。


 しかし、生命体も進化していた。


 最初の生命体は、単純だった。ただ、音速で動いて、破壊するだけだった。


 しかし、新しい生命体は違った。戦術を持っていた。連携していた。学習していた。


 ある日、俺は二体の生命体と戦った。彼らは、連携して俺を挟み撃ちにしてきた。


 俺は、苦戦した。一対一なら勝てる。しかし、二対一は厳しい。


 俺は、一体を倒した。しかし、その隙にもう一体が攻撃してきた。


 俺は、被弾した。スーツが、大きく損傷した。


 俺は、撤退した。基地に戻った。


 医師が、俺を診察した。


「ハヤテ、君の体はもう限界だ」

「何?」

「改造手術の副作用だ。体が、拒否反応を起こし始めている」

「どういうことだ」

「人工筋繊維と自然組織の境界で、炎症が起きている。このままでは、体が崩壊する」

「治療法は?」

「さらなる改造だ。もっと深く、もっと徹底的に」


 俺は、考えた。しかし、選択肢はなかった。


「やってくれ」


 二度目の改造手術が行われた。


 今回は、さらに徹底的だった。残っていた自然組織も、ほとんどが置き換えられた。


 手術後、俺は鏡を見た。外見は、以前と同じだった。しかし、中身は、ほぼ完全に人工物だった。


 俺は、もう人間ではなかった。生体戦闘機だった。


 しかし、俺は受け入れた。これが、俺の選択だ。


【第六章:新たな脅威】


 二ヶ月後、新しいタイプの生命体が出現した。


 これまでの生命体とは、明らかに違った。体は小さい。体長、約十メートル。しかし、速度が桁違いだった。


 マッハ4。


 そして、群れで行動していた。十体、二十体、時には百体。


 俺は、群れとの戦闘に投入された。場所は、横浜上空だ。


 群れは、編隊を組んで飛んでいた。まるで、戦闘機の編隊のようだった。


 俺は、単独で突入した。音速で。


 群れは、俺を捉えた。そして、一斉に攻撃してきた。


 俺は、回避機動を取った。急上昇、急降下、急旋回。音速での空中戦だ。


 俺は、一体を捕捉した。高周波ブレードを展開して、斬りかかった。


 ブレードが、生命体を両断した。


 しかし、他の生命体が反撃してきた。俺を包囲しようとしている。


 俺は、加速した。マッハ2、マッハ2.5。包囲網を突破した。


 しかし、群れも追ってきた。彼らも、マッハ4で飛べる。


 俺は、地上すれすれを飛んだ。ビルの間を縫うように。群れも、追従してきた。


 俺は、ビルの角で急旋回した。そして、反転して群れに向かって突撃した。


 正面衝突。


 俺は、高周波ブレードを横に薙いだ。三体を一度に斬った。


 しかし、他の生命体が攻撃してきた。俺の背後から。


 俺は、背後の攻撃を察知できなかった。被弾した。


 スーツの背部装甲が、割れた。内部システムにダメージ。


 俺は、墜落しかけた。しかし、慣性制御を再起動して、体勢を立て直した。


 群れは、さらに攻撃してきた。容赦ない。


 俺は、プラズマキャノンを起動した。スーツの両腕から、高エネルギープラズマを発射する。


 プラズマが、群れを貫いた。五体が、蒸発した。


 しかし、弾数は限られている。残り、三発。


 俺は、再び音速で機動した。残りの群れを、一体ずつ撃破していった。


 戦闘は、三十分続いた。最終的に、俺は群れをすべて撃破した。


 しかし、俺のスーツも大きく損傷していた。背部、腕部、脚部。あちこちが破損していた。


 俺は、基地に帰還した。そして、修理を受けた。


 医師が、俺に言った。


「ハヤテ、君の体も限界だ。もう、これ以上の戦闘は危険だ」

「しかし、戦わなければ」

「わかっている。だから、最後の改造を提案する」

「最後の?」

「完全な生体戦闘機化だ。もう、人間の要素は残らない。しかし、戦闘能力は、十倍になる」


 俺は、黙った。完全な生体戦闘機化。それは、もう人間ではなくなることを意味する。


 しかし、地球を守るためには、必要なことかもしれない。


「考えさせてくれ」


 俺は、答えた。


 その夜、俺は基地の外に出た。夜空を見上げた。


 星が、輝いていた。美しい星空だ。


 俺は、この星空を守りたい。この地球を守りたい。


 そのためなら、人間であることを捨ててもいい。


 俺は、決断した。


「やってくれ。完全な生体戦闘機化を」


 三度目の改造手術は、二週間かかった。


 手術後、俺は目覚めた。しかし、感覚が違った。


 視界が、データで満たされていた。周囲のすべてが、数値化されている。距離、速度、温度、気圧。すべてが、リアルタイムで処理されている。


 体を動かすと、まるで機械のように動いた。無駄がない。完璧だ。


 俺は、鏡を見た。外見は、以前と同じだった。しかし、目が違った。虹彩が、青白く光っていた。機械の目だ。


「気分はどうだ」


 医師が聞いた。俺は、答えた。


「最高だ。いや、最適化されている」


 言葉も、変わっていた。感情的な表現が、減っていた。


 俺は、もう人間ではなかった。


 完全な生体戦闘機だった。


 数日後、俺は実戦投入された。


 音速生命体が、札幌に出現した。体長、約百メートル。マッハ3で飛行している。


 俺は、単独で出撃した。


 音速で飛んだ。しかし、以前とは違った。もっと速い。もっと正確だ。


 俺は、マッハ3に到達した。そして、さらに加速した。マッハ3.5、マッハ4。


 これまでの限界を、超えた。


 俺は、生命体に追いついた。そして、攻撃した。


 高周波ブレードを展開した。しかし、今回は両腕に二本ずつ。合計四本だ。


 俺は、生命体に斬りかかった。四本のブレードが、同時に外殻を切り裂いた。


 生命体は、反撃してきた。しかし、俺は完璧に回避した。すべての攻撃を、データで予測していた。


 俺は、さらに攻撃した。連続攻撃。途切れることなく。


 生命体の外殻が、次々と切り裂かれた。青い体液が、噴出した。


 生命体は、叫んだ。しかし、俺は止まらなかった。


 最後に、俺は生命体の中枢を貫いた。四本のブレードで、同時に。


 生命体は、停止した。そして、地面に墜落した。


 戦闘時間、三分。


 俺は、基地に帰還した。


「完璧だ」


 オペレーターが言った。


「ハヤテ、君は、最強の音速戦士だ」


 しかし、俺は何も感じなかった。喜びも、誇りも。ただ、データを処理しているだけだった。


 俺は、機械になっていた。


【第七章:決戦】


 三ヶ月後、最大の脅威が現れた。


 巨大な音速生命体。体長、二百メートル。これまでの生命体の四倍だ。


 そして、速度も違った。マッハ5。これまでの生命体の二倍以上だ。


 この生命体は、単独で都市を壊滅させる能力を持っていた。


 各国の音速戦士が、集結した。アメリカから三人、ロシアから二人、中国から二人、ヨーロッパから四人。そして、日本から俺。


 合計、十二人の音速戦士。


 俺たちは、東京上空で待機した。巨大生命体が、接近している。


「全機、準備しろ」


 司令官が言った。


「目標は、巨大生命体の撃破だ。各自、連携して攻撃しろ」


 巨大生命体が、視界に入った。巨大だった。まるで、空飛ぶ要塞のようだった。


 そして、速かった。マッハ5で、こちらに向かってくる。


「攻撃開始」


 司令官が命令した。


 俺たちは、一斉に突撃した。音速で。


 しかし、巨大生命体も反撃してきた。無数の触手を伸ばして、俺たちを攻撃してきた。


 触手も、音速で動く。


 俺たちは、回避しながら攻撃した。高周波ブレード、プラズマキャノン、レールガン。すべての武器を使った。


 しかし、巨大生命体の外殻は硬かった。攻撃が、ほとんど効かない。


 一人の音速戦士が、触手に捕まった。そして、握り潰された。スーツが、破裂した。中の人間も、死んだ。


 また一人、撃墜された。


 俺たちは、数を減らしていった。


「くそ、このままでは全滅する」


 俺は、考えた。いや、データを処理した。別の方法が必要だ。


 その時、アメリカの音速戦士が通信してきた。


「内部から攻撃しよう」

「内部?」

「口から侵入する。そして、内部を破壊する」


 危険な作戦だ。しかし、他に方法はない。


「わかった。やろう」


 俺たちは、巨大生命体の口に向かって突撃した。音速で。


 巨大生命体は、口を開けた。まるで、俺たちを飲み込もうとしているようだった。


 俺たちは、口の中に飛び込んだ。


 内部は、暗かった。しかし、スーツのセンサーで、構造が見える。


 俺たちは、中枢を探した。巨大生命体の心臓、いや、制御中枢。


 それは、体の中心部にあった。巨大な器官だ。


 俺たちは、一斉に攻撃した。高周波ブレードで、器官を切り裂いた。


 巨大生命体が、叫んだ。体が、痙攣した。


 俺たちは、さらに攻撃した。徹底的に、破壊した。


 そして、器官が停止した。


 巨大生命体が、動かなくなった。


「成功だ!」


 俺たちは、外に出た。巨大生命体は、地面に墜落していた。


 しかし、代償も大きかった。十二人の音速戦士のうち、生き残ったのは四人だけだった。


 俺は、その一人だった。


 俺は、倒れた仲間たちを見た。彼らのスーツは、破壊されていた。中の人間も、死んでいた。


 彼らは、英雄だった。地球を守るために、命を捧げた。


 俺は、黙祷した。そして、誓った。彼らの犠牲を、無駄にしない。


 数日後、俺たちは残った音速生命体の掃討作戦に投入された。


 世界中に、まだ数十体の生命体が残っていた。


 俺たちは、一体ずつ撃破していった。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ。世界中を飛び回った。


 戦闘は、激しかった。しかし、俺たちは勝ち続けた。


 そして、ついに最後の一体を倒した。場所は、南極だった。


 最後の生命体は、氷原に倒れた。そして、動かなくなった。


 戦争は、終わった。


 俺たちは、基地に帰還した。そして、報告した。


「すべての音速生命体を、撃破しました」


 司令官は、頷いた。


「よくやった。君たちは、地球を救った」


 俺たちは、表彰された。しかし、俺は違和感があった。


 いや、「気持ち」というより、データ処理の結果だった。俺の脳は、もう完全に改造されていた。感情も、データとして処理されている。


 俺は、もう人間ではなかった。完全な生体戦闘機だった。


【エピローグ:人間と機械の間】


 戦争は、終わった。


 巨大生命体を倒した後、音速生命体の降下は止まった。残っていた生命体も、次々と撃破された。


 地球は、平和を取り戻した。


 しかし、俺たちは元の人間には戻れなかった。


 俺は、今も音速戦士だ。体の大部分が、いや、ほぼすべてが人工物だ。


 俺は、基地で暮らしている。普通の社会には、戻れない。体が、あまりにも違いすぎる。


 感情も、変わった。喜び、悲しみ、怒り。すべてが、データとして処理される。本物の感情なのか、それともプログラムされた反応なのか、俺にはわからない。


 しかし、後悔はしていない。


 俺は、地球を守った。人類を守った。


 それが、俺の存在意義だ。


 ある日、基地に一人の女性が訪ねてきた。彼女は、俺の元恋人だった。名前は、アカネ。


 俺たちは、改造手術を受ける前に付き合っていた。しかし、俺が音速戦士になった後、彼女とは会っていなかった。


「ハヤテ」


 アカネは、俺を見て言った。


「久しぶりね」

「ああ」


 俺は、答えた。しかし、声に感情がなかった。データ処理の結果としての言葉だった。


「あなた、変わったわね」


 アカネは、悲しそうに言った。


「見た目は同じだけど、中身が違う」

「ああ。俺は、もう人間ではない」

「それでも、あなたはハヤテよ」


 アカネは、俺の手を取った。


「私は、あなたを愛している」


 俺は、彼女の言葉をデータとして処理した。愛。それは、感情だ。しかし、俺にはもう感情がない。いや、感情のシミュレーションはある。


 俺は、彼女の手を握り返した。


「俺も、君を愛している」


 それは、本当の感情なのか。それとも、プログラムされた反応なのか。俺にはわからない。


 しかし、それでもいい。俺は、彼女を守るために戦った。それは、確かだ。


 アカネは、涙を流した。


「ありがとう。あなたが、地球を守ってくれた」

「それが、俺の使命だ」


 彼女は、去っていった。俺は、彼女の後ろ姿を見送った。


 そして、思った。俺は、まだ人間なのか。それとも、もう機械なのか。


 答えは、わからない。


 しかし、一つだけ確かなことがある。


 俺は、選択した。自分の意志で。そして、その選択の結果を受け入れた。


 それが、人間の証明なのかもしれない。


 いや、それこそが、人間の本質なのかもしれない。


 ある日、新しい音速戦士の候補生が、基地に来た。若い男性だ。二十歳くらいだ。


 彼は、俺に質問した。


「先輩、音速戦士になると、もう普通の人間には戻れないんですよね」

「ああ」

「それでも、志願する価値はありますか」


 俺は、考えた。いや、データを処理した。そして、答えた。


「それは、君が決めることだ。しかし、俺は後悔していない」

「なぜですか」

「俺は、選択したからだ。自分の意志で。そして、その選択の結果を受け入れた」

「でも、人間ではなくなるんですよね」

「人間とは何か。それは、君が定義することだ」


 俺は、続けた。


「俺は、もう生身の人間ではない。しかし、俺には意志がある。選択する能力がある。それが、人間を定義するものかもしれない」


 候補生は、しばらく考えた。そして、頷いた。


「わかりました。俺も、志願します」


 俺は、微笑んだ。いや、微笑むプログラムが実行された。しかし、それでもいい。


 新しい世代が、生まれる。音速戦士の新しい世代が。


 彼らが、未来を守る。


 そして、俺たちは、彼らを支える。


 人間と機械の間で。


 これが、俺たちの使命だ。


 音速の狩人として。

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水が死んだ日

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