第一章 過去の悪夢
どうして…どうしてこうなったのか。
一体僕が何をしたというのか。
山菜を取りに行っていた少年の目に飛び込んできたのは真っ赤な炎で焼かれている村の光景だった。
バチバチと音を立てながら燃えている家屋と共にそこで生活をしていたであろう人々の絶叫にも似た悲鳴がこの世の地獄ともおもわれる空間を埋め尽くしていた。
「あ……あぁ……」
絶望の表情を浮かべ、声にならない悲鳴が漏れる。
手に持っていた山菜の入った籠が力なく手からこぼれ落ち、ドサッと音を立てながら地面に激突し取れたての数種類の山菜が無残に地面に散らばる。
「……お父さん…お母さん…お姉ちゃん…」
力なく発せられた家族を求める声。
それと同時に少年は絶望から何とか踏みとどまっていた両足を家族のいる自宅に向けてゆっくりと歩みを進める。
自宅までの道のりの途中、炎に焼かれた死体がいくつも存在していた。
その中にはよく見知った人も少年の目に飛び込んできた。
幾つもの瓦礫を越えながら自宅を目指すこと数分、ようやく自宅前にたどり着く。
だが、そこには炎に焼かれ、家の原型をとどめていない瓦礫と化した残骸しか残っていなかった。
少年は力なくその場に崩れ落ちる。
これは夢なのか、現実なのか
それすらも区別がつかない
いま目の前に広がる光景は一体なんなのか
理解が追い付かない
処理できない情報が頭の中を埋め尽くす
しかしそんな時、信じたくはないものが容赦なく眼前に飛び込んできた。
「……ああ…ぁぁ……」
それは瓦礫の隙間から姿を現した両親とお姉ちゃんの無残な姿だった。
「…ああああああああああぁぁぁぁーーーーー!!!!」
少年の慟哭が響き渡る。
誰がこんなことをしたのか
何のために僕の家族を奪い、村を火の海に変えたのか
その瞬間、少年の胸の中でドクンと音を立て憎悪という名の憎しみが生まれた。