9 休暇
読んでくださりありがとうございます
ライアン兄上と出かけた日ローザは嬉しそうな顔をして帰ってきた。
お芝居が面白かったとかレストランの食事が凄く美味しかったと言い、お土産に金のブレスレットを買って来てくれた。四人でお揃いらしい。
全く邪気がなくそれでいて気を遣うところが可愛いんだよな。
俺が街に連れて行きたかったがたまには兄上にローザを甘やかす役を譲ってあげた。今のところは婚約者ではないのだから。
俺は卒業したら王宮の騎士になるつもりだった。
ところが突然留学して来た従妹は清楚な美少女になっていて屋敷中を驚かせ、俺達を虜にしていることに全く気がついていない。
後一年少しの内に猛攻を仕掛けないと優しいお兄様で終わってしまう。頑張れ俺。
「早速着けてみて良いかな」
「素敵、とても綺麗ですわね、姉様とお揃いなんて嬉しいです。姉様着けてくださいませ」
「じゃあ俺も着けてほしいな」
「ミラン兄様は私が着けて差し上げます」
「仕方がない。ソフィアで我慢するよ」
「まあ、着けてなんかあげませんわ」
「皆で着け合えばいいじゃないか」
ライアンが年長の余裕で場を収めた。ローザは皆の腕にブレスレットが光っているのが嬉しくてにこにこしてしまった。
その半年後ローザのくれたダイヤのピアスが四人のお揃いに加わり、皆それぞれ嬉しく思うことになった。
※※※
ミステリーは三人とも読み終えて今はリンガル侯爵令息様の手に渡っていた。
特に話が盛り上がったのがミランだった。
「本ってあまり読まなかったんだけどグイグイ引き込まれていくよね。ミステリーって凄いよ。絶対犯人だと思っていた男が・・・ソフィアに悪いからこれ以上話すのは止めておくけどさ。冒険物も良いけど心理戦で行くとミステリーかなと思う。兄上が買ってくれたから家での読書が楽しみになったよ」
「そうですよね、読み出すと止められなくなって困りますわ。それに新しい本の匂いが好きなんです」
「なんかローザらしいよ。学院で嫌な思いはしてないか?
昼休憩だけだもんな一緒にいられるの」
「大丈夫です、皆様普通に接してくださいます。それが一番嬉しいのです」
「そうか、良かった。もうすぐ長期休暇が始まるけど避暑も兼ねて別荘に行こう。毎年家族で二週間行っていたんだけど、今年は父上と兄上も行きたいとごねるだろうな。去年までは仕事があるから二人は居残りだったんだ」
「それなら執務のお手伝いをしますわ。家では父の手伝いをしていましたので、計算や書類の整理も得意ですのよ」
「皆でやれば早く終わらせて一緒に行くことが出来るね。俺は書類仕事は少し苦手だけど頑張ってみるよ。ありがとうローザ」
ローザの執務の能力は正確で早かった。書類の整理をしながら過去の数字のミスも見つけた。侯爵とライアンがびっくりしていた。
別荘は王都から三日ほど馬車でかかるところで空気が徐々に綺麗になっていくのを感じた。
別荘は木に囲まれた白亜の建物だった。さすが侯爵家だ。森全体が敷地らしい。
「旦那様、奥様、お坊ちゃま方、お嬢様方お待ちしておりました」
家令始め使用人たちが全員で迎えてくれた。
「夏に来られて嬉しく思っている。暫くよろしく頼むよ」
「勿論でございます。旦那様、精一杯努めさせて頂きます」
別荘では皆でピクニックへ行ったり、馬に乗って遠出をしたり自然を満喫して過ごした。自然の中で食べる食事は特に美味しく感じられた。木漏れ日の中をソフィアやミラン兄様と散歩したり、ライアン兄様とベンチに座って青い空を見るのも好きになった。
休暇が終わる頃にはローザはすっかり心が健康になっているのを感じていた。
王都へ帰ると両親が一週間後に会いに来ると連絡があった。久しぶりに会えることになりローザはワクワクして待つことになった。
久しぶりに会う両親はローザを見て相好を崩した。
「ローザ会いたかったわ、顔色もよくなって母様嬉しいわ」
「ローザ父様も会いたかった」
「父様母様私も会いたかったです。でもこちらへ留学させていただいて昔みたいに戻れた気がしますの。ありがとうございます」
「ローザさえ元気なら良いんだ」
久しぶりに会う両親はすっかり元気になったローザを見て安心した。妹一家の温かい雰囲気が娘をここまで回復させてくれたのだと感謝したのだった。
この後皆で食事をしたり、女性だけで買い物に行ったり楽しく過ごした。
評判のカフェでケーキとお茶を飲みゆっくりお喋りを楽しんだ。
お土産のケーキは忘れてはいない。屋敷に残っている男性陣と使用人には焼き菓子を買って帰った。
夜は久しぶりにお母様と積もる話をした。元婚約者は領地で大人しくしているようだ。興味も無いので普通に暮らせば良いと思う。
第二王子殿下は半年後に臣籍降下されて公爵家に婿に入られるそうだ。エリザベート様は早めに学院を辞められるとのことだ。あれだけ殿方を虜にされる方なのだ。殿下が早く御自分の妻にしたいと望まれたのだろう。
結婚式はさぞかし華やかだろう。お祭り騒ぎの中にいなくて済んで良かったと心から思うローザだった。成婚祝の夜会など流石に出たくは無かった。
幸いデビュタントはこっちの国で行うことになった。当分あちらの社交界には近づきたくはない。お父様はエスコート出来ないと泣いておられたが、ドレスとアクセサリーは自分が作ると息巻いておられた。
きっとお母様がセンスの良い物を最高級の生地で作ってくださるだろう。
ローザは楽しみになった。




