8 ミランの想い
ミラン兄様が学園を卒業され私の留学も残すところ半年になった。もうすぐ国へ帰らなくてはいけない。兄様の卒業パーティーは私がパートナーになり、デビュタントのパートナーはライアンお兄様がなってくださった。
イケメンの二人がパートナーでやっかみが凄いのだろうと覚悟をしていたが、従兄妹だということでそれほどでもなかったのでほっとした。
そんなある日王宮で騎士になったミラン兄様が部屋を訪ねてきた。
「ローザ話したいことがあるんだけどサンルームに行かないか」
「ええ、かまいませんわ。お兄様騎士の勤務はとても大変そうですわね。お休みが貰えたのですか?」
「漸く貰えた。ローザが帰ってしまうまでに中々会えないのではないかと思うと辛かった」
「朝早く出られて帰りは夜中になることも良くありますものね」
「新人は何でもやらないといけないから厳しいよ」
「でも音を上げないで付いていかれているのですから素晴らしいですわ」
「そう言って貰えると頑張っている甲斐があるよ」
話をしているといつの間にかサンルームに来ていた。叔母様が丹精しておられる薔薇が色とりどりに咲き誇っていた。
その薔薇の前でミランは一緒にベンチに座りながら
「ローザ、君が屋敷に来てくれたから更に学園生活も楽しくなったし、騎士として頑張ることが出来ている。ありがとう」
「兄様、こちらこそありがとうございます。ここにずっといたいくらいですが、叶うことではありませんので、諦めて残り少ない学生生活を楽しみたいと思っていますの」
「俺も名残惜しいよ。ローザがくれた四人でお揃いのダイヤのピアスと金のブレスレットは宝物だ。心が折れそうになったときの支えにしている。これ俺からのプレゼント」
ピンクダイヤのピンキーリングを箱から出して渡した。
「中々会えなくなったからこれをあげたいと思って休みを取って帰って来た」
「ありがとうございます。とても可愛いですね。つまらないと思いますが、私の話を聞いてくださいますか?」
「ローザの話がつまらなかったことなんてない。俺で良ければ喜んで」
「何年も婚約していた相手にとても美しい想い人が出来て、突然見向きもされなくなりました。それもあっという間でした。恋はしていませんでしたが情はあったのです。だから恋というものは怖いものだと思い知りました。でも伯爵家を継ぐ者として早く前を向かなければなりませんでした。だから逃げるように留学して来たのです」
「ごめんね、知ってたよ。家族は全員。伯父様からくれぐれも頼むと連絡があったからね。ローザを見て信じられなかった。こんな可愛い子を蔑ろにする奴がいるんだって。うちでそいつを消そうかって話したくらいだった」
「兄様たちやソフィアが仲良くしてくれて傷は癒えました」
「嘘だ、まだ傷ついてるじゃないか。涙が溢れてるよ」
「えっ」
温かい水が頬を伝っていた。触った兄様の手が涙を拭ってくれた。ごつごつした剣だこのできた大きな手だった。
「案外傷が深かったようです。もう大丈夫だと思っていたのに」
「俺に話したから瘡蓋が剥がれたんだろう。泣いていいよ、胸を貸してあげるから」
ミラン兄様の胸で泣いたらシャツがぐしょぐしょになった。髪を撫でられてもっと安心したら涙がまた出てきた。
「ごめんなさい、すっかり濡れてしまいました」
「気にするな。直ぐ乾くよ」
「こちらにくる前もお母様に抱きついて泣いたのに、まだ泣くなんて思いませんでした」
「やっぱり消しに行こうかな。気に食わない。ローザをこんなに泣かせて」
「幼馴染だったんです。穏やかに過ごせると思って親も婚約を決めてくれたんです。まさか裏切られるなんて思ってなくて」
「うん、辛かったね」
「懸想した相手は私でも憧れる身分の高い綺麗な方でした。その方に恋をした令息が沢山婚約破棄をしました。だから余計恐いのです。国に帰り、前に進んで結婚してもまた相手の気持ちが移ったら今度こそ壊れてしまいそうで」
「俺ならそんなことはしないし悲しませない」
その時丁度サンルームの外で強風が吹き抜けて、雨が降り始めた。
「えっ、何か言われましたか?こんなに臆病だと自分でも思いませんでした」
「大丈夫だ、ローザは幸せになるよ。俺が保証する」
「兄様に言われると安心します」
「国に帰っても俺達のことを忘れないで欲しい」
「勿論ですわ。大好きなんですもの」
「違う意味になる日が来ると良いな。部屋まで送っていこう」
「ありがとうございます。お兄様」
偶然通りかかったライアンがその様子を見ていたことに二人とも気がついていなかった。
読んでいただきありがとうございます。
すみません、投稿する順番を間違えていました。
読みにくかったと思います。申し訳ありませんでした。
誤字報告ありがとうございます。




