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婚約者が恋をしたので別れようと思います  作者: もも


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7/12

7 穏やかな日常

読んでくださりありがとうございます

  ライアン兄様はチケットがなかなか取れない恋愛劇を観に連れて行ってくださった。


貴公子がメイドの賢さに惹かれ、徐々に自分の気持ちに気づき伝えようとするのだがすれ違ってしまう。諦め切れず気持ちを打ち明け続けてやっと結ばれるという王道のラブストーリーだが、途中で貴公子の気持ちがなかなか伝わらず、刺客に襲われそうになったり、メイドが妬まれ虐められたりとハラハラが止まらず、見終わった時は二人の幸せにハンカチで涙を拭いていた。



「楽しめたようで良かった」


「とても感動しました。お芝居で涙が出たのは初めてです」


「誘った甲斐があるよ。さあこれから食事に行こう。たまにはローザを独占させて欲しい」


「ソフィア達に恨まれそうです」


「そんな心の狭い弟妹ではないよ。ローザが喜んだと言えば一番に喜んでくれるさ」


「それもそうですわね、では宜しくお願いします」


案内されたところは侯爵家御用達の個室のある高級レストランだった。花やグリーンがゆったりと飾られていた。


前菜のサラダからスープ、メインの柔らかなステーキや海鮮のリゾット、デザートの苺のムースまでシェフの腕がどれだけ素晴らしいか良くわかる料理だった。


「美味しかったですわ。お肉は口の中で溶けてしまいましたし、独特で飽きのこない味ですわね。いくらでも頂けそうな気がしてしまうほどですわ」


「良かった、また連れて来てあげよう」


「今度はソフィア達も一緒でお願いします」


「駄目だよ、あの子達はいつもローザといられるじゃないか。僕もローザと一緒の時間が欲しいんだよ」

年上なのに可愛らしく言われると断れないではないか。こんなにライアン兄様ってあざとかっただろうか。モテるだろうなと思った。


「ライアンお兄様ありがとうございます。こちらに来て皆に甘やかされ、段々癒されて来ました。長く一緒にいた時間を蔑ろにされて、何だったのかしらと思ったこともありましたけどもう大丈夫です」


「そうか、でもローザを甘やかすのは楽しいから気にしないでくれ。ソフィアは姉が出来たと甘えているだろう。皆ローザが来てくれて嬉しいんだ」


「本当にこちらに来て良かったです」


「そう言って貰えると嬉しいよ。屋敷にはローザの味方しかいないんだからね。もう一軒だけ付き合って貰いたいところがあるんだ。それから帰ろう」


「はい、ライアン兄様」


レストランの帰りに寄った所は高級宝飾店だった。自領で見慣れているので価値は正確に解る。

家は金持ちだがローザが自由に出来る金額は今のところ少なかった。気に入った物を大切に使うというのが両親からの教えだった。


「ローザとソフィアにお揃いの髪飾りを贈りたいんだ。どんな物が良いか考えて」


「ソフィアは可愛らしいので私があげたのとは違うデザインの赤いルビーの物を、私は青いアクアマリンでお願いします」


「値段は気にしなくて良いんだよ。といっても気にするよね、ごめん、今度から勝手に買うことにする。でも趣味もあるしね、難しいね」


「お兄様が気にされることはありませんわ。プレゼントされるのが嬉しいのですから」


「じゃあ今日は僕の趣味で選ぶよ。ソフィアにはお勧めのルビーで、君には地味かもしれないがブラックダイヤモンドで良いかな。初めてのプレゼントだから記念に残るような物にしたいんだ。花のような形で頼むよ」


「若いお嬢様ですとこういった感じでいかがでしょうか?」

店長が最高級の宝石を奥から出してきて花の形に並べ始めた。


ブラックダイヤが花芯で透明なダイヤを花びらのように組み合わせ、花型にしたものが三つ横に並んでいるデザイン画が横に添えられていた。ソフィアのルビーも同じ形だ。


「とても素敵です。嬉しいですわ。出来上がるのが楽しみです。それでは私からも細い金のブレスレットを二本と少しだけ太い金のブレスレットを二本其々箱に入れてプレゼント用にしていただけるかしら。グレース支払いをお願いね」

気配を消して側にいた侍女が支払いを済ませた。


「畏まりました。少しだけお待ちいただけますでしょうか?直ぐに用意いたしますので」

と店長が顔をほころばせて言った。髪飾りは出来上がり次第侯爵家に届けて貰うことになった。


「悪いね、気を遣わせたようだ」


「お兄様のプレゼントとは比べ物になりませんわ。ブレスレットは四人でお揃いですわ。同じ物を四人で着けるなんて素敵だと思いますの」


「こんなに可愛いのに余所見をするなんて考えられないな。消そうか」


「もう処分は受けていますので消さないでください。お兄様の手が汚れますわ。どうでも良くなってきましたし」


「そうか、消したくなった時には言って欲しい。ところでローザの苺だが本格的に作っても良いだろうか?糖度が半端なく高いよね」


「勿論ですわ。こちらでも作れたらと思いましたが、土地や気候が違いますでしょう。きっと同じ物は出来ないと思っておりましたの。領地経営のお役に立てればこれ以上のことはございませんわ。それに病気の研究も力を合わせて出来ますし」


「ありがとう。感謝する。あれが特産品になれば領地がもっと繁栄するだろう」


「道路整備も進めなくてはなりませんわね。苺はとても傷みやすいのですもの。振動で傷がついたら売り物になりません」


「麦わらで寝床を作ろう」


「そうですわね。楽しくなって来ましたわ」


この時ライアンはローザに昔から仄かな気持ちを抱いていたことを再度自覚した。しかし自分が婿に入って侯爵家の後継がミランに務まるのかどうか確証も無かった。

ライアンの悩みは暫く続くことになった。


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