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皇女様の幼女騎士は、今日も銀河を盛り上げます! ~異世界転生に憧れたわたしの転生先は、『スペース』付きのファンタジー世界でした。~  作者: 前森コウセイ
冒険者になっちゃった

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第3話 2

「――ハイ! というワケでぇ、あたし達はいま、夢のファンタジーランドで冒険者してま~す!」


 ファンタジーキングダム王都の城門から伸びる街道。


 そこから少しだけ脇にそれた場所で。


 金髪のお姉さん――レイチェルさんが、目の前に浮かぶ手のひらサイズの金属球――メモリードローンに向かってそう語りかける。


 メモリードローンは前世で言うところの、カメラとドローンを合わせたようなものらしい。


 わたしが海賊と戦った光景をムービー化した時のような、グローバルスフィアから映像抽出するという手法は、国や軍の権限が必要なのだそうで、一般人は写真や動画は、個々人のローカルスフィアから抽出するのが一般的らしい。


 ただ、それだとどうしても主観視点になってしまうのだそうで。


 客観視点での映像や写真を残したい場合は、ああいうメモリードローンなんかの記録機器を使うんだって。


「周りはまさに大自然! これ、全部、なんの手入れもされてない自然の産物なんですよ!」


 と、レイチェルさんと肩を並べていた黒髪のお姉さん――マリエさんも、背後を振り返りながら、メモリードローンにそう語りかける。


 ふたりは旅行動画の配信者だそうで、グローバルスフィアのアーカイブにそれなりのファンを持っているんだとか。


 前世で病院暮らしだったわたしは、動画サイトでけっこう旅行モノ動画を見ていたから、それを作ってるお姉さんふたりを純粋にすごいって思ってしまう。


 ……でも、なんの手入れもされてない自然ってなんだろう。


 自然って、人の手が入ってないから自然って言うんじゃないの?


 興奮気味なふたりをよそに、わたしはぼんやりとそんな事を考えていた。


「――そうそう、今回の冒険ツアーの同行者を紹介するね!」


 と、彼女達はわたしの隣に立っていた少女の手を引っ張る。


「じゃ~ん、ティアちゃんです!」


「あ、あのっ! ティ、ティアです。十歳です。よろしくお願いします!」


 レイチェルさんに肩を抱かれて、ティアちゃんは戸惑いつつも、メモリードローンに向かってペコリと頭を下げる。


 太編みにされた長い紫髪が、まるで尻尾みたいに跳ね上がる。


「ティアちゃんはひとりでファンタジーランドに遊びに来てて、そのままひとりで冒険者しようとしてたから、ナンパしちゃったんだぜぃ!」


 マリエさんは横ピースしながら、そう解説する。


「せっかくの夢と幻想の星をひとりで楽しむのもなんだし!

 旅は道連れってね~!」


 レイチェルさんがティアちゃんに抱きつきながらそう言うと。


「は、はい! お世話になります!」


 くすぐったっそうにしながら、ティアちゃんが応える。


 みんな冒険者ギルドで勧められた装備セットを身に着けている。


 一見すると、ただの革鎧の上から革マントを羽織っているように見えるのだけど、実際はそう見せかけただけの現代装備だ。


 その素材は、先日わたしが着せられた戦闘服と同じもので。


 街の外には野生の獣や魔獣がいるからね。


 お客様に怪我をさせないための配慮というわけだ。


 基本的に冒険者活動時の怪我は自己責任ってことに同意してもらってるらしいけど、お客様に怪我をしてもらいたいわけじゃないからね。


 対応できるトコはちゃんと対応してるってワケ。


 レイチェルさんがハーフパンツで、マリエさんがロングスカート。


 ティアちゃんはふたりに勧められて、膝よりやや上のミニスカートにニーソックスを選んでいる。


「――そして最後に!

 みんな知ってるかな? ファンタジーランドのファンなら、もう知ってる人もいるよね?

 今回、わたし達を案内してくれる~」


 と、マリエさんが手招き。


 ……わたしにも混ざれ、と。


 うぅ……これもお仕事か……


 恥ずかしいのを堪えて、わたしは三人の元に向かう。


「――ス、ステラ・ノーツです。

 今回はみなさんのガイド役を務める事になりました」


 メモリードローンに視線を送りながら、ぺこりと会釈。


 まん丸いドローンの中央のカメラに反射して映ったわたしは、ギルド――という名の冒険者管理課に押し着せられた軽装鎧姿だ。


 竜の鱗を鍛えた――という設定の戦闘服。


 膝丈のスカートは竜のたてがみを編み込んだ――という設定。


 愛用のレイガン――<純白の旋風(ピュア・ゲイル)>も、当然、魔法の杖という設定だ。


 大銀河帝国の一般社会は銃規制がされているそうで、そうそう目にすることがないのだとか。


 まして<純白の旋風(ピュア・ゲイル)>なんかの<虹閃(ザ・レインボウ)>は、いわゆる古式銃(クラシックガン)に分類されるようで、現行の銃の知識がある人でも、知らない人の方が多いみたい。


 だからわたしは、手慣れたレイガンを使うのを許されたんだよね。


 他のガイド役のスタッフさんは、ファンタジーランドの雰囲気に合わせて、剣とか槍を使う人が多いんだって。


 カメラに反射した自分の姿を見ながら、そんな事を思い出してる間にも――


「そう! ステラちゃんよ!

 史上最年少で大銀河帝国の近衛騎士に任命された、あのステラちゃん!

 ファンタジーランドの最新人気キャラ!」


「ガイド役としてステラちゃんが現れた時は、どっきりイベントかと思ったわよね……騎士じゃなく、冒険者として現れるんだもの……」


 興奮気味に抱きついてくるレイチェルさんとは裏腹に、マリエさんは顔に手を当ててため息。


「あ、あはは。急に配属が決まったんですよ」


 わたしがそう言って笑えば、レイチェルさんとマリエさんは不意に真剣な顔になって、互いに顔を見合わせる。


「たぶんあたし達、運を使い切っちゃったわね」


「怪我しないよう、慎重に行かなきゃね」


 うなずき合うふたりに、わたしは苦笑。


「そうならないよう、わたしが同行するんですから、気楽になさってくださいね」


 せっかく来園してくれたのだから、わたし達の星を楽しんで欲しいと思う。


 そこらの獣や魔獣なら、故郷の森で慣れてるから安心して任せて欲しいわ。


「よ、よろしく、ね。ステラちゃん」


 わたしの言葉に、ティアちゃんがぺこりと頭を下げてきた。


 うん、可愛い。


 わたし、今は十歳だけど中身は十七歳の記憶があるからね。


 同い年のティアちゃんは妹みたいに思ってしまう。


 ん? エリス様やクラリッサ?


 あのふたりは見た目十歳、十一歳なだけで、中身はきっと成人したキャリアウーマンなんだよ。


 威厳とか言動が、同じ年頃とは思えないもん。


 精神年齢はわたしのが年上のはずなのに、なぜか年上と話してるような気持ちにさせられるんだよね。


 その点、ティアちゃんは実に子供らしくて、すごく安心できる。


「――というわけで、この四人で冒険の旅に出発しまーす!」


「目指すはファンタジーランド三大名所のひとつ、ローダイン浮遊湖よっ!」


 マリエさんがそう締めると、レイチェルさんはメモリードローンを停止させた。


「ふたりとも、協力してくれてありがとうね」


 撮影を終えたからか、ややテンションを落としたレイチェルさんが、ドローンを肩下げ鞄にしまいながら言ってくる。


「いえっ! こ、こういうのってはじめてで、むしろお邪魔になってなかったか、不安で……」


 ティアちゃんが恐縮して応える。


「いやいや、可愛かったよ。

 ホント、こんな可愛い子達と観光できるなんて、来てよかったわ~」


 レイチェルさんとは逆に、ややテンションを上げたマリエさんが、わたしとティアちゃんを抱き寄せた。


「と、とにかく出発しましょう!

 この街道をしばらく進むと、休憩所があるんです。

 そこでお昼を取って、今日はその先の宿場町まで進む予定です!」


 と、わたしはマリエさんの手から逃れて、街道を進み始める。


「やだ、照れちゃって、かわいい~」


 レイチェルさんとマリエさんの声。


 うぅ……だって、慣れてないんだよぅ。


 前世では入院生活が長かったし、幼馴染はふたりのようにべたべたしてくるタイプじゃなかった。


 今世では森暮らしだったし、バートリー家に預けられてクラリッサという親友ができたけど、彼女もやっぱり、あんな感じでべたべたしてくるタイプじゃない。


 だから、ふたりのようなテンション高めな人ってはじめてで、どう接したら良いのかわかんないんだよ。


 先行するわたしを追って、三人も歩き出した。


「ステラちゃん、待って~」


 という、ティアちゃんの声に振り返れば、彼女はわたしの隣に追いついてきて、手を握ってくる。


「えへ、仲良しのしるし」


 やや顔を赤くしながらそう言ってくるティアちゃんに、わたしは完全に射抜かれていた。


「じゃ、わたし達はお友達だね」


 わたしも笑みを返して、ふたりで並んで街道を歩く。


「……やだ、レイチェル。わたし、尊さで死にそう……」


「奇遇ね、あたしもよ……」


 後から聞こえてくる、そんな声を聞き流しながら。

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