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雨上がりの朝、ツバメを見た

作者: 黒楓

 改札を出て、後ろから来る人並みを避けて通路の端に寄る。

 バッグから出した折り畳み傘のスナップボタンを外し“プリーツ”をふんわりさせると、奥の方には細かい水滴が残っている。


 雨はまだ降っているのだろうか?……


 ここからは外の様子は確認できないが、古い駅構内に淀む雨のにおいは埃っぽく僅かに黴臭い。


 このにおい、壁からかなあ……


 壁に目をやると鳥よけの“剣山”に土くれか泥の様な物が積もっている。


 この土くれ……

 天井から零れ落ちたのかなあ、ここから臭うのかな……


 げんなりして視線を外し、俯きかけた時、表からスパン!と黒い矢が飛んで来た。


「ツバメだ!!」


 私は大急ぎでスマホを立ち上げ、“土くれ”に向かってカメラを向けると“初ツバメ”はシャッターを切る間もなくパッ!と飛び去っていった。


 ああ!! 残念!! 

 でもこんなところにでも巣を作るんだ!!


 古い駅舎のこの壁はツバメの巣作りの定位置だった。

 けれど、今年になって鳥よけが設置されたのは、巣立ちの後の“空き家”の処理やフン害など、不都合も多かったからなのだろう……


 私は、ツバメのヒナたちをただ微笑ましく眺めているだけの“無責任な通行人”に過ぎない。


「ちゃんと巣作りできるのだろうか?」なんて考える権利も無い傍観者だ。


 それでもやはり気になって……会社帰りに“壁”を見上げると、まだ巣になっていない土くれまみれの剣山が生えているその場所に

 ツバメの()()()が身を寄せ合って眠っていた。


 私はそっと近づいて“ふたり”を写真を撮った。


 そして、恐らくは“永遠に独りぼっちであろう”(ねぐら)へと帰って行った。






あまり明るいお話ではなく申し訳ございません<m(__)m>




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― 新着の感想 ―
[一言]  面白いと思います。  赤の他人から見たら、「つがいのツバメの写真を撮り帰宅した」だけですが、本人は「つがいではない自分」に対する寂しさ、不安、やるせなさを再確認してしまったんだと思いまし…
[一言] 冷たく寂しい日常の中で思いがけず見つけた、見つけてしまった温もり……温もりの切なさ  (´・ω・`)
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