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第97話 ボクとチャコのご両親。


 クラマがアースドラゴンの討伐の事後報告をしにコロモンのギルドへと向かった。

 


 その話を受けると、冒険者ギルドも、素材を必要とする商業者ギルドも動き、博学者達も検証で沢山の者がこの場に集まってくるらしい。 



 オーバーキルではあるけれど、皆でアースドラゴンの死体を切り付け、傷を増やした。まさか和穂による一撃の末に倒したなんて表に出せないし……。

 それにしても、何て硬い身体なんだろう、無抵抗な相手なのに、全く刃が通らない。


 防具の素材として重宝されているというのも頷ける。


 アースドラゴンには悪いけれど、ボクは精霊魔法に切り替え、魔法の加減をあれこれ試させてもらいながら傷を付けることにした。


「へえー、それが精霊魔法なのか……このアースドラゴンに傷を付けるどころか、翼を斬り落とすなんて、とんでもない魔法だね」


 シルは左手を腰に当て、数歩離れた位置から、ボクの様子を見ていた。




「……大地を吹き抜ける風の精霊達よ、我はシルローズ、我の名の下に力をしめせ……」


 シルが魔石の埋め込まれたロッドを掲げて目を閉じて詠唱すると、シルの体を包む様に光っていた魔力がロッドの先端に吸い込まれる様に流れて消えていく。


「疾風鎌の斬撃っ!!」


 振り下ろしたロッドの形をなぞる様に三日月型の光が放たれる。


 その魔法はアースドラゴンの残っている翼を切りつけ、大きな切り傷を残す。


「これが風の上級魔法、さっきのアキラの精霊魔法とどっこいか、少し劣る感じかな。

 超級魔法とまでいかなくても、十分すぎる威力だと思うよ。

 しかも、今見て気がついたのは、イメージひとつで威力を変化させる事ができるんだろ?」


 ボクは頷く。

 先程の戦闘時はアースドラゴンの翼を斬り落とす事をイメージして風の鳥を大きくしていた。

 そして今は、斬りつけるイメージで魔法を飛ばしている。


「うーん、これは契約する精霊次第で、アキラは化け物になっちまうかもしれないね」


「え……それは人間ではなくなってしまうという事?」


 シルの話を聞いてゾッとした、魔力の暴走とかで見た目も人間ではなくなってしまうという事だろうか……。


「いやいや、人間離れした能力って事だよ。

 今の風魔法ひとつだって、同じ系統のちょっと名のある魔法使いが見たら固まる威力だと思うよ」


 シルはやれやれといった表情をボクに見せ大きくため息をつく。


「これで、蓋を開けてみれば魔力は自分で作れません……なんだもんな、呆れるよ」


 シルの言葉に、ボクは苦笑いで返す。


 クラマの報告を受け、こちらに向かう使者が、ウメちゃんの用意したゴーレムの早馬で来たとしても、どんなに急いだ所で、今日中には到着しないだろう。


 この大きすぎるアースドラゴン、動かす事もできなければ、食す……ことはどうなんだろう、好き好んで食べようとは思わないけれど、食べられる物なのだろうか?


 狐鈴達の収納空間に入れられないだろうか? とたずねたら、可能ではあるが、逆に出す事で問題が色々起きるだろうと皆から言われた。

 そりゃ、こんなでかいものが死体であっても突然目の前に現れたら、普通ではないし、普通ではないと認識されている狐鈴達であっても、色々面倒な事が増えていく予感しかしない。


 死体の移動はせず現状放置、到着した者達に任せる、それが一番だろう。

 

 ただ、使者が到着するまでの時間を無駄に過ごす必要もない。

 そこで、チャコの両親の眠る墓場まで案内をしてもらう事になった。

 


 アースドラゴンの死体から移動に1時間くらいかかったのかな、遠くに見えていた、大きな岩山が続く麓に到着する。

 チヌルが拠点としている、手作り感満載の小屋があり、目の前の岩壁に横穴が掘られ、墓の場所は雨風にさらされない様に作られているようだ。


 横穴内部には光の魔石のカンテラがいくつもぶら下がっており、洞穴内部であっても明るく照らし出されていた。

 真新しい花が手向けられている。

 チヌルの手厚い管理がされている事が伺えた。


 チャコの両親は、突然大人数で外部の者が訪れた事に驚いて、一旦外へと出て行ってしまったようだ。


 無害だと分かればまた戻って来るだろうけれど……。


 流石にボク達全員でこの狭い場所に留まるには辛いので、外で会う事がよさそうだ。


 ボクはひと足先に外に出る。

 すると入り口のところには細身で長身の青年が立っていることに、気がつく……。


 顔は中性的で、耳は長く(そりゃそう)額には青い魔石の装飾を揺らしている。髪の毛はチャコと同じ銀髪で短くしツンツンと立てていた。


 服装のイメージとしてはエジプトの民族衣装(ガラべーヤだったっけ?)をイメージするシンプルな服装。首には肩が凝りそうなほど立派で大量の装飾品を下げている。


 ボクは足を止めてジッとそのその顔を見つめ、その青年もボクの事を見下ろしている。


「どうも、こんにちわ、ボクはアキラです。

 あなたは、チャコのお父さんですよね?」


 その人物は、ボクの声を聞くなり「え?」とした表情を見せる。


「ボクにはあなたが見えているんです。奥さんの姿は離れているのでしょうか、チャコに依頼されて、あなた達と話をさせてあげたく思い、足を運ばさせて貰いました」


 青年は後を向くとその先に、岩壁の隙間から様子を伺う女性が顔を出している事に気がつく。


 恐る恐る、女性がこちらに姿を現す。 

 こちらの女性も長身でナティルさんくらいの背丈はあるんじゃないかな? 

 顔は中性的で正に美男美女と言う言葉が相応しいだろう。

 髪の毛は短く天然パーマなのか、クリクリッとした銀髪の巻き髪で、まつ毛は長く、紅い切れ長の瞳をこちらに向けている。


 旅商人だからか、その人物の姿も青年同様、ダボダボの民族衣装に、和穂の巫女服の様な肩に小さなスリットが入った物を身にまとっている。 

 体型までは確認はできないけれど、ダボッとした服でも胸の膨らみなどが分かる辺り、出るとこは出ているのだろう。


 入り口の真正面を塞いでしまうわけにいかないので、少し離れて適当な岩に腰をかける。


「へぇー、あなた私達が見えているのね」

 女性が青年の腕に手を回してボクに声を掛けてくる。


「ボク個人が亡くなった人を見る事ができるのは随分前からなんです。

 他人に同じ様に見せてあげられる事ができる事を知ったのがつい最近だったので、チャコにお2人を会わせてあげられたらと思って、来ました」


 ちょうど、そこにレウルさんが出てくる。

レウルさんはボクの視線の先にチャコの両親がいる事を知らない。


 ボクの方へ少し歩みを進めたところで腰を降ろし、ボクの方に視線を向ける。


 シル達も洞穴から出て来たが、ボクが明後日の方向を向いている事で察したらしく、少し離れた場所へと行く。

 狐鈴達はボクに一任する事にした様で、シル達の元へと行く。


 少し時間を置いて、何度も墓石のある後ろを振り返りながら、チャコが出て来る。


「チャコ、こっち来てっ」


 ボクの言葉にチャコはハッとし、駆けてくる。

 途中で躓いて転んで、それでもおでこを擦りむいた顔を上げ、両親の姿の見えていないのに、こちらに目をやる。


「おとう? おかあ?」

 ポロポロと涙を落とし、こちらに声をかけて確認する。

 母親はチャコの元に駆けていくと、チャコの姿に覆い被さる様にして、何度も頷いていた。


「それじゃ、ボクの力を使いますね。

 ボクの触れている、チャコとレウルさん2人にだけ見える様に話せる様になります」


 ボク達と正面に向かい合う位置で皆に説明をして、それぞれ頷きが確認できたところで、チャコのご両親を見る事ができる様に能力を使用する。


 ここからはボクは口を挟まず、チャコ達の思う様に話しているところをただ見守る。


 レウルさんの謝罪から始まり、ご両親からレウルさんへのチャコを育ててくれていることへの感謝を……。

 ご両親はチャコの成長する姿が心配でこの地に残っていたそうだ。


 無邪気に話をするチャコは、見た目の年相応の子供の様に喜怒哀楽の表情を露わにしていた。




「あの野郎っ! ぶっ殺してやるっ!」

 チヌルは叫び、勢いよく立ち上がる。

 そこにメイルが抱きつき、首を大きく横に振る。


 どうやら、あちらはオンダさんの悲報が告げられた様子だ。


 最初は何事かと、あちらを見上げたボク達も、メイルに抱きつき、空に向かって声を上げ泣いているチヌルを見て、そっと視線を戻した。




「チャコ、今幸せかい?」

 先程からチャコの話を聞いていて、声を発していなかったチャコの父親が優しく微笑み、チャコに話しかける。


「うんっチャコは幸せっ、皆がチャコに幸せを分けてくれるから」

 チャコは微笑む。

 そんな様子を見ていた母親も微笑む。


「安心したよ、私達の唯一の心残りだったからね」


 チャコの父親はそう言うと、触ることのできない、チャコの頭を滑らせる様に撫で、ゆっくり言葉を続ける。


「本当にすまなかった、でも幸せに満ちているチャコを見ることができて、安心して旅立つ事ができそうだ。

 ひょっとしたら次に生まれ落ちた時には、チャコが我々の親になっているかもしれないね。

 チャコは皆に愛され、幸せをもらって今があるのだから、今度はチャコが皆に幸せを分けてあげるんだよ」


 ウンウンとチャコは涙をこぼしながら頷く。


「アキラさん、チヌルさんを呼んでもらえませんか?」

 チャコの母親がボクにお願いしてくる。


「チヌルさんっ」

 ボクが声をかけると、チヌルはメイルさんの両肩に手を置き、袖口で目元を擦るとこちらへとやってくる。


 半月型に目を細め、ボクの肩にガシッと手を回す……

 岩の上に座っているボクと、立っているチヌルがちょうど良い高さだ。


「カタイ……」

 そう言うと、引き寄せて、ボクのほっぺたをペロリと舐める。

 ザラザラの舌がちょっと痛かった。


 ボクはハッとする。

 和穂に見られていたら……

 そっと和穂の方に目をやると、目を細めてボクの方を見ていた……今は目を瞑るって……コト?


「アキラ、なんだい? アタイに何か用かい?」

「こちらのチャコのご両親が用みたいなんだ」


 回された手に触れて、チヌルにチャコの両親が見える様にする。


 チヌルはビクッと身体を硬直させる。


 チヌルにとって2人との対面は亡骸となって地に横たわっていたところを発見したところが最初で、埋葬したところが最後であった筈だ。


 そんな2人が揃って目の前にいるわけだから、それは驚いたと思う。


 チャコの両親は揃って深々と頭を下げる。


「チヌル殿、我々を弔ってくれたうえに、これまで墓を守ってくれて本当に感謝する。


 我々の為に涙を流しながら、謝罪を繰り返していたが、我々は一度だってあなたの事を恨んだ事はない」


 頭を下げたまま父親は話す。


「あなたのおかげで、風化してしまう前に、こうして愛娘と再び言葉を交わす事が叶いました。

 本当にありがとうございました」


 母親は一度顔を起こし、微笑んだ後、再度頭を下げる。


「心残りだった愛娘の幸せを確認した今、我々に思い残した事はありません。

 このまま天へと向かおうと思います。

 我々の為に涙してくれたあなたを決して忘れません。

 愛娘の幸せと共に、あなたの幸せも祈っています。


 今更になってはしまいましたが、これからはあなたは、あなたの為にこの地を離れ、幸せになって下さい」


 2人は顔を上げ、幸福に満たされた微笑みをこちらに向けてくる。

 チヌルは小刻みに震えてる。


「あ、ありがとう……アタイは……その言葉に救われたよ。

 でも、でもでも、同じ過ちが起こらない様、アタイがこれからも目を光らせる必要があるんだ……」



「ちょっとだけ、ごめんなさい」

 ボクは右の手の平をチャコの両親に向けその場に待ったをかける。


 そしてボクの首にまわされた手を両手でグイッと引くと、チヌルの身体がボクの正面に来る。


「うにゃっ!?」

 チヌルは何事かと驚きの声を上げる。

 驚いた表情に、涙を滲ませてボクと向かい合う。


「いつまで!?」

 両手でチヌルの両頬を挟み、ジッと瞳を見つめる。


「……ずっとだょ」

 チヌルは目を逸らす事なく、ボクの瞳を見つめ返す。

 チヌルに強い決心を感じる。


 ボクはチヌルのほっぺたをモニュモニュとする。


「や、やめれ……」

 チヌルの困っている表情に和まされ、手を止める。


「ダメだよ、ボクはチヌルを連れて帰るんだから」


「え? 何それ……」

 

 そりゃ、そうだよね、いきなり現れたボクに連れて帰るって言われても、意味がわからないよね。


 でも、あれこれ変わった事を伝えて、チヌルの肩の荷を降ろしてやる事は大事だと思う。

 このままだと、チャコの両親が昇天する事ができても、チヌルはこの地に留まる……この地に縛られる、地縛霊と何ら代わりはしない。


 精霊の寿命がどのくらいなのか、そんな事は知らないけれど、終わりの見えない永遠って地獄だ。


 そんな地獄から解放してやる事は必要だと思う。

 

 そりゃボクの仲間になってくれるなら本当に嬉しい事だけど、それ以上にボクはチヌルを自由にしてあげなきゃと思った。


「この地は、今後コロモンの衛兵達の訓練の場や、冒険者達がクエストの為に訪れる場にもなるから、チヌル1人が背負う必要は無くなるんだよ」


「え……」


 ボクの言葉にチヌルは目を白黒させて驚く。


「それに……ボク達も一緒に見回る様になれば、それこそ、ずっとここにいる必要は無くなると思うんだ。


 それとも、ボク達はチヌルの足を引っ張るような物足りなさを感じさせちゃったかな?」


 チヌルはフルフルと首を横に振る。


 ボクは何もやってはいないけれど、そこは触れなくてもいいよね……


 チヌルをぐるりと回れ右させて、改めて、チャコの両親と向かい合わせにする。


「ささ、続きをどうぞっ」


 ボクが改めて言うと、2人はケラケラと笑う。


「あは、あはは、ちょ、ちょっと待って、続けられないって……」

「キミもそんな顔するんだな……」


 呆気にとられたチヌルの表情を前に、2人はお腹を抱えて笑い続ける。



 目の前のチヌルの背丈があまりにちょうど良かったので、普段和穂がボクにやる様に、チヌルにもたれかかる。


「おも……」


「とても、今日初めて会ったばかりの2人とは思えないね」

 レウルさんはボク達を見て微笑む。

 隣のチャコもボク達に笑顔を見せる。


 ズシ……


 急遽ボクの背中に柔らかさと体重を感じる。これはよく知っている感覚だ。


 和穂が堪えきれず、ボクにのしかかって来た。


「な、な、な? おっもーっ?」


 突然重さが増え、ボクの前でチヌルは叫ぶ。


 結局、和穂は羊人族の親子の時の様に、周りにも見える様に術をかける。


 チャコの両親は、チャコを含めてシルと談話している。


 自由に身体を動かせる様になったボクは、前方のチヌルを引き寄せ、背中は和穂に体重をかけられ挟まれる。


 窮屈ではあるけれど、この重みが仲間の存在を実感できるなら、これも悪くはないって思えた。


「いつまでやっているのさ……」


「えー? 何だか、チヌルから漏れて来る電流が微妙に気持ち良いんだよ、もうちょっとだけ……」


 実際電気風呂の様にピリピリッとして何だか気持ちが良い、一緒にお風呂に入ったら電気風呂として、こっちの世界でも体験できるのかな?


 はぁ……とチヌルから小さなため息が聞こえ、体重が預けられる。



 チヌルはボクからだけではなく、今後のこの地の事情をシルからも同じ様に聞かされた。


 先程は、オンダさんの話をする事が最優先だった為、色んなアレコレの情報をすっ飛ばして、伝えていたし、何より全てを伝えるには、ボク達とチヌルの合流してからの時間が短すぎたんだ。






 それから、ボク達はチヌルやこの地を離れるチャコの両親と沢山の話をした。


 ボク達の事、ワーラパント男爵家への報復の事、スタンピードの事、今後のコロモンとの取り引きの事、送別の宴の事、そしてボクがチヌルを仲間として求めていると言う事……。


 本当に尽きない話ってあるんだな……って思うくらい、沢山の話をする事ができた。


 もっとも、こちらの世界に来て、短時間で尽きない話のタネを撒くことになった、ボク達の存在と出来事がそれだけ異常な事だと言う事が実感させられたわけで……。


「精霊使い……ですか、我々の里で昔耳にした事があったかもしれません、何分私が幼い時に聞いた話だったと思うので、どのくらい前だったかも覚えておりませんし、まだその話が継承されているのかも分かりませんが……」


 チャコの父親が話してくれた。

 ダークエルフの幼い時って……何百年前の話だろう……。


 ただ、自然と精霊と共に生きている、ダークエルフやエルフや精霊達にとって、存在していれば人間の中で、最も親しみのもてる職業だろうとチャコの母親も言っていた。


「新しい情報が得られるかもしれませんねぇ。

 でも警戒心が強い、彼らの里に行けるのかどうかも分かりませんが……」


 ウメちゃんが言う。確かに。


「ボクの能力がはっきりしてなくてモヤモヤしているのは事実だけど、分からなくて生活に支障が出ているわけじゃないから、別に気にしていないんだけどねぇ」


 ボクの呟きに狐鈴はニパッと笑い口を開く。


「まぁまぁ、ワチらも、時間はあるからの、知られていない己の能力を色々調べるのも良いのではないかゃ? 

 ワチも知らないこの世界を楽しんでいるワケじゃし」


 これが本当の自分探しの旅って事ね……。


「もちろん、あたしも連れて行ってくれるんだろ?」


 シルも笑いながら言う。


「それは前言ったね、シルと旅ができたら楽しいだろうって」


「へぇ〜、珍しいもんだねぇ、あのシルがねぇ……」


 ウンウンと頷くチヌル。


「チヌルはどうするんだい?」


「ここでのお役目は終わっちまったからねぇ、突然の事だから……なにも考えちゃあいないよ。

 でも、アキラがアタイの事を求めているなら、あんた達と旅に出るのも案外面白いかもしれないねぇ」


 チヌルは目を閉じてフフッと笑う。


「なんだ? 師匠旅に出るんッスか?」


 ハクフウさんは驚きながら言ってくる。


「そうだよ、詳しい文献も残されていないアキラの職業も、アキラそのものだって伝説になるだろうしね、あたしは最も近い位置でアキラの伝説の立ち合い人になりたいんだ」


 ボクが応えるより早く、シルは笑って話す。


「一騎……いや、一人当千の狐鈴さんに、和穂さん、伝説のシル=ローズさんに、幻獣のウメちゃん……国でも滅ぼしに行くんすか?

 それに、師匠もなんて……食事も最高じゃないッスか」


 確かに……。

 最小規模の最大戦力……。

 旅に……行く……旅行デスヨネ……。


「あ、でも、ちょっと……すまない、今簡単に言ってしまったんだが、あたしが今の家を長期離れるとなると、王宮に報告してからじゃないと出発できないんだ……。

 勿論、帰って来てからも報告に行かねばならないんだけれど」


 シルは苦笑いしながら、気不味そうに言う。


「えっ、やっぱりシル=ローズさんは良い所出って事っすか?」


「あ、ああ……そんなところだな」


 歯切れが悪そうにシルは言う。


 昔から共に過ごしていた、チヌルや、トルトンさん、チャコや、レウルさん、メイルさん、ルークはシルとラミュレット王家の繋がりを知っているのかは分からない。


 ワーラパント男爵家で啖呵を切っていた状況を見ていたのはこの場では、ボクと狐鈴と和穂だけだ。


 シルは自分の地位に関してはどうでもいいって言っていたし、狐鈴や和穂にとったら、王族を相手にしても他人の事だから、もっとどうでもいいって……思ってすらいないかも知れない。

 

 例えば元の世界で『徳川家の……』と名乗りがあっても、狐鈴からしてみたら『徳川家の者なんだな』くらいの関心はあるかもしれないけど、身分には興味を持たないから、一般人と横並びに感じるだろう。


 和穂は更に人に興味をもたないから、接点のある人や好きな人以外は『誰??』ってなるだろう。


 ボクはどう思うかと言われれば、その世界の王様と言えば、身近な感じはしないので、偉い人なんだな……とは思うけれど、敬う事はあっても現実味を帯びてないというか、何かボヤッとしているんだよね。


 シルが友達と言えば、ボクにとったらシルの方が身近だから、その人は王様であり、シルの友達なんだな……って思うくらいかな。


 突然現れて、我に従う様にと言われたら、かなりモヤモヤしながらも、シルに迷惑をかけない様に、従っている装いはすると思う。


 シルに自由に、気軽に振る舞っていいんだよ、なんて言われたら、失礼な態度があった場合、ひと言ふた言物申す事だってあるかもしれない……できれば、シルにはボクにそんな許可を出さないで貰いたい。


 さて、話は大きく脱線したのだが、つまりはシルは王国お抱えの身だから、行き先は知らせてから出かけなさいねって事だろう。


 まぁ、それに従っている辺りを見ると、地獄の門番ケルベロスに、与えた首輪は何だかんだで、しっかりと効力を発揮していると認めるべきなんだろうな。


 シルもバカではないから、王様達に対して無礼の無い様、最低限の事には従う様にしているんだろう。


「と、いう事は……?」

 ボクが尋ねると、シルはひとつ頷き、口を開く。


「チヌルを連れて戻ったら、次の目的地はラミュレット王国になるけど、良いかい?」

 

 シルはすまなそうにボクに言ってくる。


「シルの育った国か……うん、気になる。

 シルの若かりしき頃の話とか……」


「ちょっと、アキラ……あたしはまだ若いつもりであるのだけれど……」


 シルはボクにジト目を送ってくる。


「シルはまだ若い、うん、理解」

 ボクは頷き繰り返す。


「うー、な、なんだかあたしが、納得できない」

 シルは下唇を出しボクに非難の声をあげる。


 そのやりとりに、皆声をあげて笑う。

 お帰りなさいませお疲れ様でした。

 次の目的地ができました。

 まだ、もう少し先の話ではありますが、ラミュレット王国での話になります。


 番外編とかも考えてはいたのですが、リアルに少々時間が足りない状況が続いていまして……おちついたら、いつか、ほんわかする様な番外編をお届けしたいなと思います。


 それでは皆さん次の物語でお会いできたら嬉しいです♪


 いつも、誤字報告ありがとうございます。

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