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第9話 ボクの戦いと形勢逆転。

本日2本目の投稿です。

アキラの無双状態からの続きです。

それでは行ってらっしゃいませ。



次から次へと飛び交う生首、しかし学習能力もある様で、最初の様に猪突猛進に飛んで来なくなる。


「ぜぇっ、ぜぇっ…」

だいぶ数も減ってきた様に感じる。

汗で貼り付く乱れた髪が鬱陶しい。


あと少し、あと少しで村人達の霊魂を解放できる…もう少し動け!ボクの体!


一体不意打ちを狙って後ろの上空から奇襲をかけてくる。

身体を捻りどうにかかわし、通り過ぎる生首を睨む。



「アキラさんっ!!」

武田さんの叫ぶ声が聞こえる。


ふと、冷静になる…。

いったん体勢を整える事がボクには出来るんだった…。



距離からするとほんの20m先にセーフティーゾーンがある。

しかし、その20mが遠い…何体いるか分からない生首達に睨みを効かせながらジリジリと足を向ける。


すると、寄合場とボクの間に大きな影が落ちてきた…

風が止み、虫の声も消え静寂に包まれる。



月明かりに照らされた大きな影はすぐに全貌が確認できた。

2mは軽く越える大きな体型、折り畳まれた漆黒の翼、山伏の衣に身を包み、一本足の下駄を履き、鋭い嘴に、金に燃える光を両眼に宿し、手には金剛杖を携えている…。


ボクの行く手を、阻んだのは『鴉天狗』だった…。


更にボクに絶望感が襲い掛かってきた。

先程までボクの相棒だった両拳に巻いていた水晶の数珠が弾け飛んだ。


「ーー!!」


突然の現象に後退る…


鴉天狗の周囲、ボクを取り囲む様に浮かぶ生首…



直接脳裏に響く低い声

『ふん、面白い娘だな…命乞いしてみるが良い…次第によっては貴様をこちら側にしてやろう…』


おそらく鴉天狗の声だろう…


この状況に飲まれちゃダメだ…

臆してはダメだ…


ボクは強張った表情筋を無理くりに動かし笑ってみせる。


「はんっ、死んでもゴメンだねっ!

例えボクがそいつらの様に首ひとつになっても、村人と同じ霊体になっても、抗ってやるっ!」


手足が恐怖で震える。

後ろにも逃げ道はない。

セーフティーゾーンは鴉天狗に塞がれている。

やれる事もなし…。


本当の手詰まりだ。


「あい、分かった。貴様は村の亡霊にしておくのも危険だ。ワシが直々に食うてやろう!」

脳裏にではなく口に出しコチラを威嚇する。

鴉天狗は金剛杖を振り上げる。


…今日がボクの最後の日…

そんな思いが頭をよぎった。

「ボクにはここまでが限界だったよ、あとお願い」

咄嗟に両腕を交差させ頭を守る様に構える。







「リーーーンッ!リーーーンッ!」








ボクのウエストポーチに括っていた中身のない、鳴るハズのない金の鈴が鳴り響いた…。


ボクと鴉天狗の間に地面から2本の火柱が勢いよく巻きあがった。


ボクはよろけて尻もちをつく。

火柱の中から人影が浮きあがり撒き散らすように火が消える。


1人は天狐の面をつけた、ボブカットの黒髪、肩にスリットの入った巫女服を纏って重心を低くして佇んでいる。


もう1人を目にした時、恐怖が解け涙が溢れていた。朱色の狩衣を纏った金髪の巫女がそこにいた。


「やぁ、アキラ。昼間ぶりだの。ソナタの頑張りは見させてもらったぞ。」

ニッコリ微笑み、ボクの頭をポンポンとなでる。


「もっと早く…来てくれても…良いじゃん…」

泣きじゃくりながら抗議する。


「スマンよ、下の鳥居が崩されておるから境内から出られぬ身であってな。ソナタに渡した依代を通る事が必要だったのよ。

…にしても、ソナタは本当に強い、もっと早く神頼みをしても良かったのではないか…?」

ため息をつきながら、ボクの頭をわしゃっとする。

祈れば出てきてくれたって事かい…。



「さあて、ここからはワチ等に任せておけ、こう見えてワチ等は意外と強いのだよ、まさに神がかっているのだよ」

神じゃんっ!て言葉は置いておいて、きっと空気を変えるために言ってくれたんだろう。


スッと狐鈴は立ち上がり、鴉天狗と向き合い下から睨みつける。

「本当に長い年月ソナタには苦しめられてきたよ。最初は神社から出られないワチの前で村人をなぶり殺しにし…、魂を地に縛りつけ、何度も何度も何度も何度も、殺戮を見せつける。」


聞いているだけで胸糞悪い話だった。

口調は落ち着いているが怒りのこもった言葉。


「さて。」

いつの間にか、狐鈴の手に朱色の和傘が握られている。

鴉天狗はその場から離れようと翼を広げる。


「させんよっ」

和傘の先を地面にトンッとつくと村全体の地面が光り、村に結界が貼られる。

そして周囲の物陰に身を潜めていた霊魂達が一斉に消えてゆく。

「皆、本当にすまなかった。ワチがしっかりと仇をとるから成仏しとくれ」

凄いとしか言いようのない土地神様としての力。



「和穂、それではワチ等の力を見せてやろう」

狐鈴は和傘からスラリと細身の刀身を引き抜いた。


和穂と呼ばれたもう1人は両手を腰の辺りに回し、両手それぞれに牛刀のような刃物を引き抜いた。




お帰りなさいませ。お疲れ様でした。

楽しんでいただけたでしょうか?

廃村編も後半に差し掛かり、役者が揃いました。

温めていた話もだんだん減ってきました。

突然投稿のペースが変わると思いますが、楽しみにしていただける方がいらっしゃると嬉しいです。

それでゎ、またお会い致しましょう。

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