第7話 ボクの撤退と今後の動き。
いつもありがとうございます。
アキラの能力の反動が発生しました。
アキラは村人達の残した思いに対しどう動くのか…
それでは行ってらっしゃいませー。
「ーッゼーッゼーッ、カハッ…」
荒い呼吸、苦しい胸の痛み…。胸を抑え込み痛みの和らぐタイミングを待つ。
「山霧さん、背負って行こうか?」
「アキねぇ…」
2人はボクのすぐ近くでしゃがみ込んで心配そうに様子を確認してくれている。
「も…ぅ……ちょ…だげ…」
涙は止まった、撫でる様に流れる風に身を委ね呼吸を、ゆっくり整える。
「…ッ!………!!」
遠くから声が聞こえる…
「誰かこっち来たっ!」
陸が身体を起こし村の入り口を向く。
篠原さんと陸の間にできた隙間から小さな光がこちらへ向けられていることがわかる。
「こっちーっ!!」
陸が声を上げる。
「アキラさん!?」
「アキさん!」
ようやく顔を起こす力が戻ってきた。
こちらに駆けつけてきたのは、瀬田さんと稲葉さんだった。
「アキさん、飲めますか!?」
冷えた水のペットボトルが、キャップを外された状態で目の前へと差し出される。
震える右手で受け取り、ひと口流し込む。
ひどく乾いた口の中に冷たさが流れ込んでくるのが良くわかる。もうひと口…。
その様子を横に、篠原さんが瀬田さんに状況を説明している。
「いったん拠点に戻ろう…」
瀬田さんがひと声かけてくる。
ボクは篠原さんに背負われ、稲葉さんに背中を撫でられ拠点へと向かった。
だいぶ呼吸が落ち着き
「ゴメン…」
と声をかけると、稲葉さんは無言で首を横にふり、篠原さんは「気にするな」と返事する。
拠点に戻ったボク達に白井さんと武田さんも駆け寄って来る。
ボクはいったん背もたれの深い折りたたみイスへと腰をかけさせられる。
そして、少し休んだ後自分の見えた光景と、体の中を通り抜けた村人達の感情について周りに伝えた。
あんなに高揚して盛り上がっていた皆の表情が真剣なものへと変わった。
「でも、ボクは真実を見たいと思う…いや、彼ら彼女らを送ったボクは見なきゃならない気がするんだ…」
心配そうな白井さんと稲葉さんの表情。
身体的疲労(忘れていたけど夜勤明けなんだよね)と、精神的ダメージを受けたボクは1時間程休ませてもらう事にした。
………
……
…
目を覚まし、車から出ると陸がボクを呼ぶ。
焚き火台でゆっくり時間をかけて作っていた料理ができたとの事。
『豚の塩釜焼き』だそうだ。
そういえば稲葉さん達が豚汁作っていた時、何だかセッセとやっていたなーと思い出す。
あぁー、アレかぁー…。
ん…と、物凄く嫌な予感がする…。
「アキねぇ、いっぱい塩持って来ていたから張り切って作ってみたんだ」
わーっ!身近にポンコツがいたわーっ!!
そんな純粋な笑顔をこっちに見せるな!
そして全員目を逸らすな!
軽くめまいを、感じながらボクはつまんでひと言、「旨いっ、コレが最後の食事にならない事を祈るよ…」と。
お帰りなさいませ。お疲れ様です。
最大の敵は無知と天然だという今回の話。
次回は廃村となった原因と地に縛られてしまった村人の関係について触れたいと思います。
コレに懲りずに読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それではまたお会い致しましょうー。