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第44話 ボク模擬戦観覧(その1)。

今回はアキラ視点であったり、狐鈴視点であったり、ロドグローリー視点であったり、視点が色々変わります。分かりにくい状態でしたら申し訳です。

 どうやら、ロドグローリーさんは、自分の予定を変更しに詰所に戻ったついでに、指導している衛兵を連れてきた様だ。

 しかも、先程シルが話していた事態を受け止めていてくれた様で、衛兵の詰所へ持ち込まれた、獣人絡みの事件に対して調べてくれているそうだ。



 それはそれで、これから模擬戦に入る。

 この街の治安を護っている人達のトップとギルドを取り仕切っている人の戦闘能力に対して狐鈴、和穂がどう攻めていくのかボクとしては楽しみでならない。


 ギルドの裏手にテニスコート2面分ほどの修練場があり、魔法などを使用しても周りに被害の無い特殊な作りになっているそうだ。


 基本誰でも自由に使用して良い事になっているそうだが、今からギルドマスターと衛兵団の大隊長が手合わせを願い出たという情報が広がり、修練場の外周は見物客でごった返しになっている。


 修練場の中心にナティルとロドグローリーが隣合わせに立ち、対峙するように巫女服の美少女が2人立っている。


 周りの見物客は【ナティルvsロドグローリー】というカードだと思っていたらしい。


 改めてこの身長差…

ナティルは185cmほど、ロドグローリーは190cmほど、それに対して、狐鈴は145cm、和穂は163cm


 武器は木製の物を選ぶ、さすが冒険者ギルドの修練場ということもあり、模造の武器の種類は沢山そろっていた。


 ロドグローリーは両手剣を手にとり、丸い鍋蓋の様な盾を左手首にはめる。


 ナティルは戦斧と短剣を選ぶ。


 狐鈴ははじめ、レイピアをブンブン振り回していたが、最終的に木刀を手にする。


 和穂は双刀を振り回してもしっくりこないようで、短剣も試している。和穂の武器は結構重いんだよね…。


 戦闘形式は1対1で進める事になった、理由は簡単、自分の相手していない戦闘を集中して見たいという、ロドグローリーさんの提案だった。

 魔法なし、自分達の判断で終了という簡単なルール。


 最初の手合わせは、ロドグローリーさんと狐鈴によるものだった。


 2人は5メートル程の距離をとった位置に立つ。


 ロドグローリーさんは両手で剣を握り、正面に剣先を突き付ける様な、前のめりな構えをしている。表情は緊張している様で少し強張っていた。


 対する狐鈴は左足を前に、右後方に剣先を持っていき、刀身の長さや位置を自分の姿で隠すという、確か剣道でいう脇構えという構え方になって、リラックスしている様だ。ニッと笑っている。


 ナティルさんの「はじめっ!」という声に対して2人はどちらも、間合いを詰めず、微動だにしていない。


一見隙だらけの狐鈴の姿が、対峙している人にはまるで隙のない構えに見えるようだ。


張り詰めた空気、こんなに見物客が押し寄せているのに、誰も言葉を発せない緊迫感。



「ヌウォアーッ!!」


大きな声で威嚇しながら、最初に動いたのはロドグローリーだった。


右足を踏み込みながら体の大きさを感じさせない俊敏な動きで両手で剣を振り降ろす。


「ブレのない良い打突じゃの」


狐鈴は右足を踏み込みながら後方に下げていた刀身を横から前方へと振り上げ、途中でロドグローリーの剣と接触させる。


ガギンッ!!


ロドグローリーの剣は振り上げられた刀に、止められるのではなく、弾かれ軌道が変えられ、剣先は地面にズドンと落とされる。


「なっ!?」


ロドグローリーにとって驚かされたのは、軌道を変えられた事もそうだが、狐鈴の動作はそのものが、見えていなかった事だった。


危機感を覚え、後方へと飛ぶ。直後…


「そぇっ!」


「っ!!」


今まさに自分がいた場所に、身体全体で刀を振り下ろして、上体を前傾に丸めている狐鈴が見える。


「おや…?」


意外と言いたげな表情をロドグローリーへ向ける。

偶然だ…

ロドグローリーの頬に冷たい汗が伝う…。


そこから狐鈴の攻撃が始まる。


手首を返し、下から上へ、上げられた剣先が、弧を描く様に左上から右下へと袈裟斬り、そこからくるりと体を横に回転させ左からの横薙ぎ…そこから刀を引き寄せてからの突き。


「よっ!」「やっ!」「そぃっ!!」


 刀の動きは早すぎて、目で追うには一瞬なので、体の動きで剣の動きを想像し、剣でガードしつつ、身体を捻ったり後方、後方へと、距離をとって避ける。


 防戦一方になってしまう。

 この時ロドグローリーははじめて、両手剣を選んだ事を後悔する。

 剣が重く、防戦であっても体力が削られていく…

そして、この小さな体から想像もできない、当たりの強い斬撃が木剣を通して手を痺れさせる…。


 どの武器なら太刀打ちできただろう…どの武器でも、ひと太刀でも浴びせることは不可能に感じる。まったくイメージできないのだ。


「ぬぁあっ!」


 突きを繰り出しても、剣先を滑らせ軌道を逸らされてしまう。 


「ゼアァッ!」


苦し紛れではあるが、右から左へと大きく横薙ぎをし、少し余計に距離を開いて構える。


さて、どうしたものか…


 ロドグローリーは正面に突き付ける様に構えていた剣先を、後方に引き寄せ、右肩より、突進する。


 狐鈴は、低い体勢からロドグローリーに向かって刃先を向けたまま、右肩の高さで刀を寝かせた構え方に変え、ロドグローリーと距離を詰める。


「ゼアァァアッ!!」


ロドグローリーは肩で死角になっていた剣を右へと横薙ぎに振る。


狐鈴は剣先が目の前に、迫る瞬間右足を伸ばし、滑り込む体勢で剣の軌道を潜り抜け、刀をロドグローリーの手首につけた盾に向けて大振りで振り下ろす。


「リャアアーッ!」吼える狐鈴


"ガキーーーンッ"


「ヌァア!?」


ロドグローリーの大ぶりした遠心力に加え、狐鈴の与えた打撃で、右側へとぐらつき、踏みとどまる。


「ヲヲヲッ!!」


 ロドグローリーは身体を捻り、狐鈴のいる場所に向け右斜め上から左下に向けて剣を振り下ろす。


 狐鈴は跳躍して剣をかわしそのまま刀を振り下ろす。ロドグローリーは左手を剣から離し盾で頭をガードするべく構える、しかし盾に衝撃がこない。


 狐鈴の振り降ろす動作はフェイントでそのまま縦回転をし、実際はロドグローリーを飛び越えていた。

完全に体勢を崩されたロドグローリーに狐鈴は着地と同時に足首を返し、その反動で突進をする様に攻撃をしかける。


「ふっ!」


狐鈴は右下から左上に切り上げる。

 ロドグローリーは身体を後方に傾けその軌道から逃れるが、狐鈴は跳躍し、そのまま右足でロドグローリーの右脇腹から腹の辺りをスネで蹴り上げ、左足のカカトでロドグローリーの右膝裏を蹴り身体を左に捻る。


「リャーッ!!」


 横から両足でロドグローリーの身体を挟み込み背中より地面へとひっくり返すような姿勢に見える


ズズズーーンッ!!


 ロドグローリーは背を地にした状態でひっくり返る。


 狐鈴はそのまま身体を捻り右脚より着地し、剣先をひっくりかえったロドグローリーの喉元に突き付ける。

「どうじゃ?」


 ロドグローリーは両手を開いた状態で顔の横へともっていき、ため息と共に『参った』と呟く。


 観客は大いに盛り上がった。


 ツルツルな頭をペチペチやりながら、ロドグローリーさんは『いやぁー参った』と苦笑いしている。


 狐鈴はピョンピョンとこちらへと帰ってくる。


「スゴイね狐鈴、あんな身長差のある人投げちゃうなんて…」

「いやいや、あれはじゃのアヤツの体重を後ろに集中させて、こう膝をカクンとな!」


「…いや、それを戦いながら考える余裕」


 ナティルさんは腰に手を当てロドグローリーさんを苦笑いしながら見下ろしている。

手を差し出し、引き起こしてあげている。


お帰りなさいませお疲れ様でした。

狐鈴の戦闘シーンはクラマとの戦闘以来になります。


次回は和穂とナティルの戦闘となります。

それではまた次の物語でお会いしましょう〜♪

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