表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/158

第41話 ボクのコロモン訪問と冒険者登録。

「ねぇ、シル何でこんなに高い壁が覆っているのかな?」


 壁の高さは4階建くらいの高さだろう…。

コンクリートとかではなく、切り出した石を積み上げて作られた圧迫感すら感じる壁。


「そうねぇ、野生の獣やモンスター、他の国からの不成者から守る為かな、街の人間は弱いから、壁と武装した者に守られて生活しているのさ」


ダジャルを操りながらシルは教えてくれる。


「ボクみたいな普通の人達か…」

ボクの呟きにシルは呆れる。


「アキラは、十分普通じゃないよ。

別に弱くもないし、それに守っているモノ達を壁に例えるなら、見上げても果ての見えない様な塔の壁みたいなものに守られてると思うけどな」


「そりゃ違いないね」

狐鈴や和穂やクラマ、ルークにトルトンさんに、それにシル…壁というより塔、要塞というべきかね。


「何ニヤニヤと…」

シルも笑いながら話す。


「さて、この辺りなら他人の目もないし、呼び出しても問題ないでしょ」


 壁よりせり出る、更に大きな石で積み上げられた柱の影でダジャルを止める。

ダジャルから降りて念話で皆んなに声をかける。


『皆んな準備いい?呼び出すよ』


「それじゃ、みんな、おいでませっ!」

数珠を巻いた手を地面につくと4本の柱が一斉に巻き上がる。


「こりゃ、便利だなー」

ルークが呟く。


「なんじゃ、ここは?でっかいのー」

ケタケタ笑いながら、狐鈴は上に伸びる壁を見上げる。


「遠路お疲れ様でした」

クラマはここまでの距離を知っているから出る言葉だよね。


そして、無言で駆け寄り抱きつく和穂。

すごく良い匂いがする…。


 何だろう、シルと一緒で心細さはなかったんだけど、皆んなに囲まれて、こんなに幸せな気持ちになるんだ。


「本当にやんなっちゃうねー、あたしとアキラのかけた時間が一瞬で埋まるって…

でもまぁ、手続きが終わったら、中のワチャワチャは皆んなに任せて、あたし達はゆっくり休もうね!」


「ワチャワチャ?!」

狐鈴が、大きな「?」を頭に乗せて聞いてくる。


 周囲の耳を気にしながら、先程シルと話していた内容を皆んなに打ち明ける。


「ほむ、そいつは面白いの、できれば逃げ帰って来た奴らが到着した時には、すでに帰るべき場所が無かった…とかだと、更に面白いだろうよ」

手を打ち鳴らし、狐鈴は話す。


「危険な状態だったら、すぐにこちらに呼び戻せば済む事たけど、今回は囚われている、人達の解放もできたら良いな」


 安全第一のボクの考えに狐鈴はピシャリッと伝える。


「やれる事は全部やるべきじゃとワチは思うぞ」

 さすが狐鈴、迷いがない。



 街に入るための検問待ちの列へと向かう。

石壁に沿って皆んなでゾロゾロと歩く、シルはダジャルの手綱を引き先頭を歩く。

 そこに続いてボクと背後からボクにおぶさる様に抱きつく和穂、隣にクラマを抱えた狐鈴、上にルーク。


 巫女服は目立つので注目される。

列を作るための衛兵が、ボク達の姿を見てこちらへとやってくる。


「おいっそこの、この街は初めてか?」

声をかけてきた衛兵に、前にいたシルが向きを変え対応する。


「あたしの客人なんだ、手続きをする為に来たんだけど…」


 シルに声をかけられた衛兵の動きが固まる。

「シル=ローズさん、貴方の関係者でしたか、どの様な手続きか、先に聞ける様でしたら手配しておきますよ」


「ギルド登録人数分と、身元引受人登録だね。あと、大隊長と面会できるかな」

シルは淡々と話を進めていく。


「分かりました。

ダジャルはこちらでお預かりします。

冒険者ギルドの手続きの時に全部申請できる様に手配しておきますね。

大隊長殿とはギルドで面会しますか?」


「急ぎの用事になるので、ギルドで話せると助かるのだけれど」

衛兵はダジャルの手綱を受け取り「承知しました」とダジャルと共に駆けていく。


「なんじゃ?シルの知り合いかや?」

皆んなが見つめる中、腕組みをしたシルは閉眼し「うーん…」と考え込む。


「分からないね」

自信満々に否定する。

流石にこれには、皆んなずっこける。


「いやね、あたしは良い意味でも悪い意味でも有名だからねー」

苦笑いして答える。



 ボク達が街に入る為に並んでいる列を横目に、街から冒険者が大荷物を持って出ていく。


 こちらを指さしたり、馴れ馴れしく声をかけたりしてくるが、皆相手にしていない。そもそもボクには言葉が通じないけどね。


「ねぇ、クラマ、あの冒険者達はボク達の事を何か言ってるの?」

狐鈴に抱えられているクラマがすぐ横にいたので、小さめの声で尋ねる。


「口説いているようですな」

「これから冒険に行くのに御盛んな事だねー」

ボクは呆れながらため息をつく。


 街に入る為の手続きはシルがやってくれている。

「アキラ覚えておきなよ。

ギルドライセンスを見せると通行税は免除になるからね。

大きな街ではこんな風に、ゲートでカードを見せる。

村だと、入り口の衛兵に見せると入れてもらえるからね。

登録されていないと、街や村によって金額が変わるけど、通行税を払うんだ」

シルは自分のカードと銀貨を数枚支払う。



そして、ボク達は街に入る。

ゲートを出ると露店が並び、活気付いている。朝早い時間なのにこの活気。

「朝市かな…?」

「んー、朝市だったり、これから冒険に出る人をターゲットにした軽食屋だったりだね。

 冒険者が出て行くまでバタバタしているから、落ち着いたら朝ごはんにしよう」


 行き交う人達の目線もこちらに注目が集まる。

 巫女服は目立つけど、そこに加えて、狐鈴も和穂も超美人だから。

 ボクにとっても自慢の2人だからね、コロモンの皆さん、もっと2人を見て!なんてね。


「良い表情だ。生き生きしてるね。

ここでもう1つアキラに伝えておく事は、街や村の入り口に1番近い大きな建物が、だいたい冒険者ギルドになるからね」


へぇー、それは助かる情報だ。


 コロモンの冒険者ギルドは3階建で、両開きの玄関が着いている。

なんでも、冒険者ギルドって人間以外の種族も出入りしているので、基本何でも大きな作りになっているそうだ。


 シルは片側の玄関を開き、中へと入って行く。ボク達も追う様に入る。


 冒険者ギルドに入ると右側に掲示板があり、クエストや依頼のメモが多量に貼ってある。

その掲示板を取り囲む様に、様々な職種、種族の冒険者が人集りを作っている。


たぶん、ランク別に貼り出しているんだろう?いくつかの掲示板に人が分散される様に見上げている。


 左側には小さな食堂?酒屋?があって臨時パーティの待機とか、作戦会議のできるスペースがある。


突き当たりに大きなカウンターがある。


 玄関からホールへと足を進めると、ここでも注目を受ける。

うん、きっとそういうモンなんだろう。


 しかし、ここで1番注目を受けていたのはシルだった。

結構な人が室内にいたのだが、シルの行く手を塞ぐ様な者はおらず、むしろ開けていった。




 カウンターに着くと、雰囲気だけで、ただ者ではない、女性が立っていた。


 長身で180cm以上はあるだろうか、そしてガッチリと引き締まった筋肉質な体型、左眼を眼帯で覆って、残る右眼は赤い三白眼、長い赤髪をライオンの立髪のようにし、眼帯側の髪の毛を刈り上げている、何とも個性的な人だった。


その女性に対してシルは、見上げる様な姿勢で眠たげな視線を送る。


一触即発!?な雰囲気に、周りの関係ない冒険者達ですら固唾を飲んで見守る。


 シルはニコリと、目を細め、こちらに振り返る。

「アキラ、この人がギルドマスターの"ナティル=フォルフィン"さんだ」


『アキラ=ヤマギリです。宜しくお願いします』

名乗り頭を下げるとナティルさんは『宜しくな』と笑いかけてくれた。


ナティルさんはシルに対して深々頭を下げて、ボク達を別室に案内してくれる。


ボク達がホールを出て行く時に、大きなざわめきを送られたということは言うまでもないだろう。


 カウンターの横にある重厚な扉を通り廊下を進んだ先に、大きな部屋があり、そこに通される。

 ギルドマスター自ら出向いて対応してくれたのも、衛兵さんの働きによるものだと思う。


 シルからナティルさんにどこまで話されているか分からないけれど、ボク達が異国から来た者で、ボクに至っては言葉の勉強中の為あまり話が出来ないことを伝えてくれている。



部屋の中央のテーブルに、寝かされた銀製のちょっと大きめのお盆の様な魔道具は【天職の鏡】というアイテムだそうで、手を着けると、自分の魔力がカード状に具現化され、鏡と手の平の間に現れ、役職などが刻まれる仕組みらしい。


「さて誰からやるかい?」

シルはそう言い笑顔で見守る。


「拙者から参ろう」

クラマが鏡の上に乗ると、鏡と足の間に四角い緑色の光が現れる。

鏡の隅をシルが触れる。

「アキラ、あんたも触って」

ボクも鏡に触れると、少しして金色の光へと変わる。


クラマが鏡から足を上げると、四角い光が消える。

「クラマカードをイメージしてごらん」

シルが言う様にイメージすると、クチバシに咥えられたカードが出現する。



【名前 クラマ】

【種族 鴉天狗】

【年齢 263】

【職業 式神 :風】

【ランク C】

【Lv46】

【契約主 アキラ=ヤマギリ】

【身元引受人 シル=ローズ=ラミュレット】

ーーーーーー



皆で、クラマのカードを覗き込むと、ナティルさんは驚いている。


「見たことのない、種族で、Cランクからスタートという事に驚いているね、普通新米の冒険者であるならFランクスタートなんだよ。

もともと、戦闘に長けているから高いとは思ったけど、正直想像以上だったな」

シルが教えてくれる。


 ボクが初めて見た時のクラマだったらAランクとかだったのかな?


「次はボクが、やってみよう」

ルークが名乗りを上げる。


鏡の上に乗ると、クラマと同じ様に光る

「アキラネェさん触れてもらえないだろうか?」

「えっ?それって…ううん、分かった」

金色の光が、包み込む


ルークが咥えたカード



【名前 ルーク】

【種族 水竜】

【年齢 72】

【職業 精霊 水】

【ランク C】

【Lv42】

【契約主 アキラ=ヤマギリ】

ーーーーーー



ナティルさんは顔を引き攣らせている。

「次はワチがやってみようかの、年齢が出るのはワチとしては恥ずかしいのじゃが…」


狐鈴が鏡に触れるとピンク色に光る。

シルとボクでクラマの時と同じ様に触れる。

ナティルさんは誰よりも先に確認すべく狐鈴のカードを覗き込んできた。



【名前 狐鈴】

【種族 天狐 金狐】

【年齢 761】

【職業 巫女 阿】

【ランク S】

【Lv 00】

【主神 稲荷大神】

【契約主 アキラ=ヤマギリ】

【身元引受人 シル=ローズ=ラミュレット】

ーーーーーー

【稲荷大神の加護】【炎神の加護】【土神の加護】【天候操作】



驚きの表情で2度、3度見してパニックに陥っている。


和穂も鏡に触れると、当たり前と言えば当たり前だが、狐鈴と同じ反応をする。

ナティルさんは狐鈴の時と同じ様に興味を示したが、和穂はナティルさんをかわし、ボクに微笑みながら見せてくる。


えと…ボクは反応に困ってしまう。

だって、和穂って狐鈴と対になっているんだから、ほぼ同じなわけじゃん…?

とりあえず、笑ってウンウンと、頷く。



【名前 和穂】

【種族 妖狐 黒狐】

【年齢 751】

【職業 巫女 吽】

【ランク S】

【Lv 00】

【主神 稲荷大神】

【契約主 アキラ=ヤマギリ】

【身元引受人 シル=ローズ=ラミュレット】

ーーーーーー

【稲荷大神の加護】【炎神の加護】【土神の加護】【天候操作】



ナティルさんは完全に頭を抱えてしまっている。


「ボクの場合は借り物の魔力になるんだけど、どうなのかな??」

ほっぺたを掻き、苦笑いしながらシルに質問する。


ナティルさんに確認してくれ、その事に対してもナティルさんは驚いていた。


どうやら指紋認証のようなもので、魔石のない方の手で登録して、カードを出す時魔力を借りると良いそうだ。なるほどね。


左手を鏡に置き、白い光が現れる。

シルが皆んなの時と同様に鏡に触れる。


皆んながボクのカードを覗きこむ。



【名前 アキラ=ヤマギリ】

【種族 人間】

【年齢 22】

【職業 精霊使いB 僧侶D】

【トータルランク C】

【Lv 41】

【身元引受人 シル=ローズ=ラミュレット】

ーーーーーー

【契約者 クラマ/ルーク/狐鈴/和穂】



 狐鈴と和穂という高ランクの2人がボクに仕えてくれているという事で、精霊使いのランクが底上げされたということね…ボク的には納得したのだが…


シルは複雑な表情で話しかける。

「アキラ、なんていうかさ…死霊使いじゃなくて残念なんだけれど…

アンタが普通じゃない事はよーく分かったよ…」


「いや、シル…死霊使いじゃなくてホッとしているのはボクなんだけれど…」


ナティルさんもポカーンとしている。


「えっと…?これは狐鈴と和穂がボクに仕えてくれているから、ランクが高いわけでしょ?」


 首を横にブンブンと振る。そしてカードを指差し応える。

「普通は天職の鏡が指し示す職業って1人1つなんだよ…ランクがどうこうじゃなく、2つある事が普通じゃないのさ…」



は、ははは…何やら知らないところで、運命の神様にいい様に悪戯されているようです…



 ナティルさんは、驚く事を諦めたというか、既に現実逃避をしているというか…何もボク達に問いかけてこなかった…。


 そりゃそうだよね、何十年に数人と呼ばれているらしいSランク、しかも複数の神の加護付きの(元々神様なんだから当たり前なんだろうけど)が登録申請初日に2人現れるわ、鴉天狗に水竜、それを使役する謎の副職持ちの娘…


それが1時間もしないうちに目の当たりにさせられるなんて、普通じゃない…。


 シルは自分が身元引受人という証明書を手続きし、そこにボク達も署名する。


 この証明書は冒険者ギルドの方から国の機関へと提出してくれるとのことだ。

提出される迄に横槍入れられようとも、ナティルが見届け人だ。


 ひと段落して胸を撫で下ろしていると、扉がノックされる。

そして、廊下からはゴツゴツした鎧を纏ったひとりの衛兵が入ってくる。


ヘルムを外した中からは眉間に大きな傷痕をつけたスキンヘッドの男が顔を出す。


『お久しぶりです。シル=ローズさん』

男は丁寧にシルに挨拶をする。

 シルもニッコリと挨拶をし『忙しいところ時間を作ってくれて感謝する』と詫びる。


 ホールの脇ににある応接スペースで腰を据え会合を始める。



 ここからは、シルがボクのために訳しながら話を進めるのは、流石に失礼だろうと、ルークが念話で訳してくれた。


 今まさに訪ねてきた方は、コロモン衛兵団大隊長"ロドグローリー"さんというらしい。


 シルは、自分達の周囲に起き始めている、ワーラパント男爵の息子が私欲のために同胞を攫おうとしている事、オンダさんが手にかけられ殺害された事。


 再度奇襲をかけられ、一部撃退させた事。その場にシルも当事者として対応し、族を捕らえている事を伝える。



ナティルさんも、ロドグローリーさんも、険しい顔で話に傾聴している。


 分かってはいるが、恐らく騒ぎを起こしている現行犯でなくては捕縛する事も難しいのだろう。

 それが下っ端であれば、深いところで根を生やしている親玉には届かない。


 そして、このミュルドという者の悪事はいつだって、親の力やコネでうまくもみ消されてしまい、この2人にとっても、どうにかしたくても出来ない、もどかしさがあるようだ。


 今回シルが2人に言った事は簡単な事だった。

 悪事を明るみに出して爵位を剥奪するために、こちらで引っ掻き回すので、衛兵団に依頼がきても、暫く時間を延ばして欲しという事だ。

 ただし、動くなとは言わない、悪事を掘り返したところで、自らが呼んだ衛兵にその悪事を暴露させようって事なのだろう。


 ナティルさんに話を通しておく事で、この悪事に関与している人間が、ギルドに属している冒険者の逸れ者だった場合、処罰を正しく与える事ができるし、もしギルドに属していない男爵家が集めた不成者などの人間であったら、ロドグローリーさんに話を通しているので正しい刑罰が執行されるであろう。


 中途半端な階級の人間に話を明かしたとしたら、何処で男爵家と繋がっているか分からないので、男爵家側にこの話を持っていかれたり、揉み消されたり、変な正義感で計画を台無しにされたりしてしまうだろう。


 万が一、ナティルさんかロドグローリーさんが男爵家と繋がっていたとしても、それぞれがこの場にいる事で、監視し合う状態になっている訳だ。


 上の人を動かせる、シルの力って凄いと思うし、この均衡を崩さず進めるあたり、切れ者なんだと改めて思った…。


 2人ともそれぞれ、腕のたつ者を貸し出そうかと提案はしてくれていたが、最悪こちらが悪と判断されてしまった場合、巻き込んでしまう危険性があるので、丁重にお断りしていた。


 実行するメンバーをシルが伝えた事で、ナティルさんは逆に納得してくれたようだ。


 その場に居合わせていなかったロドグローリーさんも、それぞれのライセンスカードを提示して、固まらせる事になったわけで…。



「ただ単に、亡き者にする、殲滅させるのであればシル=ローズさんが仲間と暴れれば方がつくのでしょうね…

爵位の剥奪まで追い込められれば、そこと繋がっていた者にも手が届くと」


 ナティルさんが大きなため息をつき、こちらの行動を把握する。


「して、どのタイミングで駆けつけるのがベストなのだろうか?

 争っている最中に駆けつける様であれば、それこそ、うまく証拠を揉み消されたり、乗り込んだあなた方が悪者扱いされ、満足いく結果もついてこないと思われるが…」


 ロドグローリーさんは眉間の傷痕を右の人差し指で掻きながら確認してくる。


「それは大丈夫、この子が使役しているメンバーと繋がっているからね」

シルがポンポンとボクの肩を叩く。


「ほぅ…この少女がこの方達の契約主、アキラ=ヤマギリ様なのですね…」

ロドグローリーさんがボクに目線を送る。


 ボクはライセンスカードを出現させ、ロドグローリーさんに見せる。

 いや、別にこの手品みたいな演出がやりたいがために、出したわけじゃないよ。


「に、二職持ち…」

あ、やっぱりそういう判断になるんですね。


「精霊使いは極稀に聞きますけど、僧侶とはあまり聞かない職業ですね」

ロドグローリーさんはナティルさんにたずねる。


「あぁ…言われてみれば…アタシも気にしていなかったよ。

 神官とか、聖職とかは目にするけど、僧侶は聞かないねぇ。

二職持ちも聞かなければ、希少な精霊使いと僧侶というハイブリッドな職業…アンタ何者だい?」

ナティルさんはボクにたずねる。


「この子は"アキラ"だ。

それ以上でもそれ以下でもない…歴史の中に新しく刻まれる名前かもしれない子に会えた事を自慢すると良いよ」


ふふん、とシルが胸をはる。




『ぐきゅるるぅぅ〜…』




静寂したこの場の空気に、間の抜けたボクのお腹の音が鳴る…


皆んな大爆笑である…。

和穂でさえも…。


ヒドイ…

あぁ、恥ずかしい、恥ずかしい!!

顔が熱い、もう勘弁してぇー!!


「あっははっ、すまない、昨日からここに向かうため、夜通し何も食べていないんだ。

いったん休憩を挟んで、続きを話す時間をいただいても構わぬだろうか?」

シルは涙を拭きながら笑い提案する。


「ハハハッわかった、こちらで準備させて貰おう、アタシは構わないが、アンタはどうだぃ?」

ナティルさんまで泣きながら笑っている。


「ふ…構わない、時間を作ろう。いったん抜けさせてもらいます」

ロドグローリーさんは微笑み、言葉をつける。


「あとひとつ、頼みがある。

出来たらで構わないのだが、どちらか手合わせを願えないだろうか」

ロドグローリーさんが狐鈴と和穂に向き直り頭を下げてお願いをする。


「ああ、それならアタシもやってみたいね、Sランクなんて、そうそう出会えないからね」

ナティルさんも腕を組み、ニヤリと表情を向ける。


狐鈴も「構わんよー」と言い、和穂も頷く。


まずは腹ごしらえ、誰にも文句は言わせないよー。

お帰りなさいませ、お疲れ様でした。

ようやく、身分証が発行されました。

死霊使いを期待していた方には、期待を裏切ってしまって申し訳ないです。

ルークが正式にアキラの仲間となりました。

これから楽しい冒険者…というわけに行かないけれど、まずは悪を蹴散らしましょう!

それでは、また次の物語でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ