第4話 ボクが遭遇した謎の巫女。
今日は勢いで2話投稿させてもらいます。
修正の必要なものは後々直していけたらと思っています。
それでは、いってらっしゃいませー。
倒壊した鳥居が何とも痛々しい。
足下の鳥居の前で、1つ礼をして横から階段へとまわる。
階段には手すりも無く、苔むした石段が上へ上へと続いている。
近くで山鳥の鳴き声が聞こえてくる。
一段一段踏み締める自分の足音と自分の口から漏れる荒い呼吸が辺りに響く。
自分の体力の無さが、嫌でも自覚させられる。
時々見える階段の両側にある石燈籠も所々崩れている。
風化なのか、地震なのか……。
まだまだ、先は長い。
「良い子の皆んな、寝不足の時にはこんな激しい運動は決してやってはいけないよ!お姉さんとの約束だよ!」
と、くだらない言葉を口にしながら更に登る。
踊り場でウィンドブレーカーを脱ぎ、袖を腰巻にして大きく深呼吸、悔しいけど空気は美味いんだよなぁ……
そして、更に登る。
ふと、懐かしい思い出の遊びが頭をよぎる。
陸と遊んでいた幼少期の思い出…。
「ジャンケン ポイッ!」
「チ」
「ヨ」
「コ」
「レ」
「イ」
「ト」
勝った者が一段づつ、言葉を口にしながら階段を上がる遊びだ。
確か……
「パー」は「パイナツプル」
「グー」は「グ●コ」と某お菓子メーカーの名前だった事を記憶する。
なぜ? 会社名が……などと考え苦笑いをしながら階段を登っているうちに神社の境内が見えてくる。
「うはぁっ!やっと着いたぁぞぉぉぉ!」
階段の上には大きな鳥居がある。
拳を握り両腕を大きく上に伸ばし伸びをする。
境内に入る前に後ろを振り返ると、廃村の全貌が視界に広がる。
拠点の車の位置までは木々が邪魔をしていて確認できないけれど、草木に飲み込まれた村、更に広がる森……あそこに居るのは陸達かな?
下からは一切確認できなかった神社だが、上からは村の様子がよく見えた。
間違いなく、絶景だ。
最後の一段に腰を降ろし吹き付ける風を感じる。
ソョソョソョ……サワサワサワ……
汗ばんだ体に嬉しい涼しさ、夏であることさえ忘れてしまう。
ここは標高が少し高いのかな?
目を閉じて撫でる風と鳥の鳴き声を楽しんでいると……。
『…チリーーンッ!…』
南部鉄器の風鈴のような鈴の音がひとつ響く。
ゆっくり目を開き鈴の音が聞こえた後方に振り返り境内に目をやるも変わった事は何もなかった……境内には。
「……!?」
ボクの上に影が落ちる。
何と鳥居の上に人影があったのだ……。
人影は鳥居に腰を降ろし、足をぷらぷらさせている。
突然の出来事にボクの頭は軽く混乱する。
影になってしまい全貌がよく分からないため、階段を何段か降り場所を変える。
「巫女!?」
そう、朱色の袴を履き白い上衣を纏った巫女がそこに座っていた。
肩まで伸びた透き通る様なハチミツ色の髪の毛は外側へと跳ね、表情は寂しげで視線は村の方に向いている。
ツッコミたい所が色々渋滞しているが、無意識に発した言葉に対して後にボク自身がツッコミを入れる事になる。
「コルァーーッ!! 神に仕える者がそんな罰当たりでどぅするんだーーーっ!!!」
大声で怒鳴っていた。
そして心の中で自分自身にツッコミを入れた。
ソコ?? と。
「ッ!?!?」
少女はビクッと身体を震わせ視線をゆっくりとこちらへ落とす。
不意打ちだったから相当ビックリした様子だ。
こわばった表情が柔らかくなりこちらに言葉を投げ掛ける。
「ウヒッ!ソナタ、ワチが見えるのかや? 面白いのぉー! 嬉しいのぉー!」
少女は鳥居からこちらへと飛び降りた。
ボクは反射的にそちらへ手を伸ばしていた。
「あっぶなーぃ!!!」
少女はフワリッと重力を感じさせず、音も無く階段の上へと舞い降りた。
そんな眼を奪われるような幻想的な一瞬だったが……
「ボクがぁぁぁぁぁーーー!!」
苔むした階段に足を滑らせ大きくバランスを崩す。
『グッバイボクの人生……』
走馬灯って、思ったよりゆっくりと流れるんだな…と感じた時、時間が止まった。
正確には片足立ちの少女が右手を伸ばしボクを引き戻していた。
「し、死ぬかと思った……」
腰が抜ける。
少女はニコニコしている。
近くで見る少女はより幻想的な容姿をしていた。
肌は日焼けをした事すらない様な青白さ。
眼はルビーの様に燃える赤色。
髪の毛はサラサラで、ハチミツ色。
背丈はボクより10cmくらい低いかな……。
ピコピコ動く頭の上の獣耳……?
フサフサ動く尻尾……?
少女! なペッタンコな胸!
「ソナタ、最後は失礼だの」
ムッとしている。
「え、口に出してた!?」
はははと笑い視線を離す。
「まぁ、良いわ、今は気分が良いんでの。ワチが見える人間も久しぶりじゃ。」
『ぐきゅるるう〜〜』
「!?」
何の音かと思っていると、目の前の少女は徐に雑草をぶちぶちと引きちぎり自らの口へと頬張り始めた。
「は、ハラが減ったのぉ……っ」
突然の行為で処理しきれていないが、幻想的な少女が半泣きで雑草を頬張る姿は珍妙な光景でついついキョトンとしてしまった。
「マテマテマテ……」
少女の行為を静止させ、とりあえず境内の方へとお邪魔することにした。
ザックからタッパを取り出し稲荷寿司を少女へ差し出す。
少女は眼をキラキラさせヨダレを滴らせながら話を始める。
「ワチはコレを知っているのだ。昔村の者がコレを届けてくれての、大好物なのじゃ」
ひと口噛み締めるなり、ビクンッと身体を大きく硬直させる。
「な、な、な、な、な、なんじゃこりゃーーー!!!!」
飛び上がった勢いで狛狐に頭をぶつける。
「おおう、ワチが死んでしまうかと思った」
頭を抑えてかがみ込む。
「え!?、ごめんなさい口に合わなかった?」
突然の出来事にビックリする。
「いやいやいや、逆じゃ、こんなに美味いものじゃったかの? 久しぶりすぎて記憶が薄れてしまったかの? 稲荷寿司ちゅうのはこの様な味じゃったかの?」
涙、鼻水……折角の顔が台無しである。
「あー、コレは黒糖稲荷寿司だよ」
「こくとういなりずし…」
「砂糖の種類が普通のと違うんだ」
「最高じゃ、最高じゃ」
そう言いながら、一回一回噛み締めるように咀嚼する。
「コレはコレで味が違うんだよ」
隣の稲荷寿司を指差すと「どうれ」とつまみ上げひと口噛み締める。
バフッと何かが抜ける音がして動きが止まる。
「コレはワサビ稲荷寿司だね」
ギギギギとゆっくり首が動く……。
「こ、こ、これは、コレで美味いのだがワチには刺激が強すぎるようじゃ……」
笑顔だけれど涙目。
他にはガリ生姜と生姜をみじん切りにしたものを酢飯に混ぜた物、ノーマルと、少女はオーバーなほどのリアクションをとりながら楽しんでくれた。
ここまで喜ばれると嬉しいものだ。
御供え用の稲荷寿司の包みをザックから取り出し少女にたずねる。
「ねぇ、やっぱり食べ物の御供えは遠慮した方が良いのかな」
用意してはきたけれど、夏に食べ物の組み合わせって最悪なのでは…と、ふと思ってしまった。
「そんな事はないのぅ、喜んで尻尾を振るんじゃないかの」
そういうと、ボクから包みを受け取った少女はそれを大事そうに小脇に抱えて立ち上がる。
「さて、色々順番が違っているようじゃが、ワチというものをソナタに知って貰いたく思うぞ。
ワチは"金狐"で"善狐"名は『狐鈴』と申す。
稲荷神様に仕えて下の村の土地神じゃ、人間で言う阿吽の『阿』になるのかの。
ソナタは名を何と申す? ワチはソナタを気に入った」
「ボクの名前は山霧 旭」
空になったタッパをザックへとしまい込みながら伝えて、ふと手を止める。
「ほう、ソナタはアキラというのかゃ、面白いのぅ、娘っ子なのに、自分の事をボクと呼ぶのかゃ。
それにワチを見る事ができるという事は、普通の娘っ子ではないようじゃの、本当に面白いのぅ」
賽銭箱に腰をかけ、ニマニマ狐鈴は微笑む。
「えぇ!? ……土地神様!?」
「さようじゃ、よし、今日の礼にコイツをやろぅ」
金の小物をこちらへと放る。
それをボクは、両手で受け止める。
手の中には金の鈴が納まっていた。
鈴には金と黒で編まれたヒモが着いているが、中身は入っていない。
「ちょっと、土地神様なら、下の村について聞きたいことがあるんです……」
手元から視線を上げたときには狐鈴と名乗った巫女服の少女の姿はなくなっていた。
まさに狐につままれたような出来事だった。
神社から下山し、寄合場へと向かう。
そこには既に陸達がいた。
暗くなりそうだったので、拠点へと戻ることになった。
「そういえば」と武田さんが口を開いた。
「ふと思い出したんだけどさ、物音と、神隠しのウワサがあったのってさ、確かさっきの寄合場付近の出来事らしいよね」
しれっと話す。皆んな顔を合わせて、無言で拠点へと足を進める。
おっかえり、なさいませー。
巫女服の謎の少女は…まさかの土地神様本人?
ここで神社を出した事でひょっとして…と薄々感じていた方もいたのではないでしょうか、色々立つフラグの数々、回収できる自信ありません!
抜けてしまっていたら、『はと。』だし仕方ないと思っていただけると胸を撫で下ろせます。
さて、またお会いできることを楽しみにしています。