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第35話 ボクの為の勉強会。

 探索を切り上げて、家に帰る途中"アカウイダケ"と"ツミダケ"を見つける。


 ちゃんと2人に確認したから大丈夫、もどきではなく、本物だった。

 むしろ大丈夫じゃなかったのは、その後だった。


 アカウイダケは結構大きいから、手ではいくらも運べないし、エコバッグなんて勿論無い、『誰も見ていないし』ということでスカートの裾をもち上げ、ポケット代わりにキノコを山積みにする。


「よし、大収穫!」

立ち上がって顔をあげると、目の前に見回り中のダンダルさんがいた。

時間が止まる…。


「わゎゎゎわゎわ…!」

思わずつまみ上げていたスカートの裾を離し、晒していた生足を隠し、手で抑える。


 まだしゃがんで、収穫中のキルトさんは、スカートの中を晒す事ない。

 立ち上がって、顔を赤くして、キノコをひっくり返しているボクを不思議そうに見つめる…。

 そもそも彼が見えてるのはボクだけだから…恥ずかしいのはボクだけなのだけど…。


「だ、ダンダルさん、粗末なモノを見せて、ほ、ホンットに申し訳ない…」


 ダンダルさんは顔を赤くして視線を逸らし、ほっぺたをかく。

「スマン、2人しゃがみ込んでいたから何かあったのかと思って…」

そう言うと、そそくさと森の中へと姿を消していった。


「な、何?大丈夫?」

ルークがこちらに声をかける。

「だ、だいじょばない!」

うぅ…中々顔の熱は冷めない…。

に、してもダンダルさんには悪いことをしてしまった気分だ。


 2人に今の出来事を話す。2人とも頭の上には汗が飛んでいる様に見える。 

「ど、どんまい…」

ルークに慰められる。


 ボク等は落としてしまったキノコを拾い集め、早足で家へと戻る。

 

 この悲しさと、恥ずかしさを誰に、どうぶつければ良いのやら…。



 家に帰ってきてからは、言葉の勉強に付き合って貰う。


キルトさん、ルークとの言葉の勉強の仕方は、ボクが気になる言葉をルークを挟みキルトさんが変換してくれるという形だったり、

 キルトさんが言いながら書いた文字をルークが教えてくれる、そんな言葉のやりとりを

聞いて、書いて覚えていくような手段だった。


 3人ともお互いを良く知っていないので、基本は自己紹介の様な雑談で、おうむ返しをしながら、言葉を聞いてメモしていく感じで進めた。


 勉強ノートというよりは、3人の個人情報ノートみたいな感じになっていった。


 その中で、キルトさんとルークを少し知る事ができた。




〈キルトさん情報 1〉 

 キルトさんは現在28歳、カヌイ家の次女で、生まれも育ちも、セラカという街である。

 実家は両親と共に宿屋をやっていたが、19歳の時、4つ年上の姉が結婚して、姉夫婦が両親より宿屋を引き継いだ事で、実家を出た。

 シルの家で同居人になり、5年ほど共同生活をしていたが、シルのお客さんの出入りが多いので、迷惑をかけない様にと家を出たとの事。



〈ルーク情報 1〉

 水竜として今のテリトリーよりもう少し上流の滝の裏で生まれた。精霊はエネルギーの集合体なので、滝のマイナスイオンが具現化したのがルークというわけだ。

人見知りなので、基本姿を消して過ごしているらしい。




 今日の勉強はここまで、ノートでいうと10ページほどだ。興味があっても、こんだけビッチリ書いていたら、誰も読む気も起きないだろう。


 新たな学びとしては、チャコの書いてくれた文字の羅列の次に、キルトが書いてくれた数字の書き方。

 セラカという街があるという事。

 精霊は親が産み落とすわけではなく、その場所に発生する、湧き水みたいな存在だということ。



 家族がもともといないって、どんな気持ちなんだろう…


 ルークが人見知りで、誰とも関わりを持ちたくないと、思ってしまった原因はなんだったんだろう…



 シルのお客さんとは…

魔女の薬や魔道具を求めてやって来るのかな?


 ボク達も自立する様になったら家を出る事を考えた方が良いのかな。でも、以前耳にした、シルの近くにいる事で、何かから護られているという話もすごく気になる。


 ともあれ、ボク達の生活している場所で、キルトさんとシルが共同生活していたのか…と思うとなんだか、ほのぼのする。



 晩御飯はキルトさんが作ったキノコソテーと卵スープ、サラダ、パンだった。

 ルークは少し興味はあったみたいで、ボクにひと口ずつ、せがんできたので分けるが、結局スープだけで済ませてしまう。


 個性のある味付けで、ボクは好きだったんだけどな…。




 昼間お風呂に入ったので、夜は寝室で桶にお湯を張り、手拭いで体を拭くだけの簡単な湯浴みだった…。

 満足できなーい!…なんて言える筈もない。足を伸ばして身体全体を温めるお風呂のありがたさを改めて感じる。

早く落ち着かないかな…。


 体を拭き終えてリビングに戻ると、晩酌をしていたキルトさんが、果実酒をボクにすすめる…。

ボクあんまりお酒得意じゃないんだけどな…。


 まぁ、たまには良いか…。

そんな、こんなで気がつくと果実酒の入っていた瓶はテーブルの上に、5本ほど空になって置かれていた。


『アキラちゃんれぇ〜、あるぇ?3人も見れるわ〜、りといるらい、わらりらもらっれも、いいれりょう』


 思っていた以上に、キルトさんはお酒に弱い…少なくとも、ボクよりは弱いようだ…。


 何を言っているのか分からないけれど、自分の名前が出ている事は分かったので、面倒くさくなる前にお開きにしようと思う。


 キルトさんの腕をボクの首元に絡ませて寝室に運ぶ。部屋に向かう途中振り返り、ソファーで丸くなっているルークに声をかける。


「ねぇっルーク、一緒に寝な…」

「い、や、だっ!」

言い切る前に即答された…ひど…。


 掛け布団をまくり、キルトさんをベッドに腰掛けさせる。ボクはベッドへ上がり、キルトさんの後ろから脇の下に手を通し、ズルズル引き上げる。


これで寝癖も悪かったら…困るな…。


 久しぶりのお酒ということもあり、明かりを落としてベッドに潜り込むなり、ボクは引き込まれるように眠りに落ちていった。




みんな、おやすみ…。


おかえりなさいませ。お疲れ様でした。

少しペースが遅くなってしまって申し訳ないです。


少々リアルの方がバタバタしていてご迷惑をおかけしています。


それでは、また次回のお話しでお会いしましょうー♪


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