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第21話 ボクと魚獲りと新たな精霊。

前回に引き続き、文字数が多くなっているかもしれません。休憩を挟みながら読んでいただけると、安心です。


それでは行ってらっしゃいませー♪

 小川の水流は穏やかで、和穂と2人でピクニックに来ているように感じる。こちらの視点ではの話だが…

第三者から見たら、見たことのない巫女服の少女と、怪しげな面を着けた2人組が楽しそうにバケツを持って川に沿って歩いている。そんな奇妙な光景である。

 いや、最初は眼鏡にしようと思っていたんだよ。でも思いの外、木陰はボクの視力に優しくなく、危険に感じたので安全第一として面の着用にした。


 実際の現地時間は何時くらいなんだろう。

陽の高さとかで考えるなら、目が覚めたのが6時半くらいだろうか、お風呂から戻って8時半くらい、朝食が9時くらいに終わって、洗濯が終わって10時半くらいかな…

思っていたより、昼食までの時間が短いかもしれない。


「片道20分から30分くらいで考えようか」

和穂に話しかけるとコクコク頷く。

 道のりも特に険しくなく、アップダウンはあるものの比較的平坦な道のりだった。

 丸木橋がいくつか掛けられていたが、建造物もなく、生き物との遭遇もなかった。


 人の足で30分っていうと結構遠出になるもので、風呂小屋側の岸を上に上に上がってきて、ちょうど30分は歩いたかな?と思えたところで森の開けている場所にたどり着いた。

 水面は野球グランドくらい広がっており、視界に収まっていない何処からか「ザーッ」と滝の音も聞こえてくる。


 野鳥の鳴き声が響き。水中には小魚が泳いでいる。


「なんというか、癒される場所だね…」

マイナスイオンで満たされているというか…


 小魚を見て、塩焼きかな、唐揚げかな…どうやって食べようか考えていると、ジャボジャボと水の中に足を進める和穂。

ふくらはぎくらいの水位なのに、ためらいなく入っていく。濡れた袴がいったん空気をふくみ風船の様に膨らんだ後、足にまとわりつく。

 いつの間にか取り出した朱色のタスキで袖をまとめ、左手を上げピタッと静止させている。ジャボンッと水中を薙ぐ。まさかの熊の魚獲りスタイルだった。


「えぇーっ!?」


水中から打ち上げられた魚が、こちらの岸でピチピチ跳ねる。


 魚達は袴の影が石の影と思えるのか、和穂の足下に近づいては打ち上げられていく。

 ボクは和穂のあまりに自然な動作に最初は呆気に取られていたが、我に帰り次々と打ち上げられる魚をバケツの中へ入れて行く。

30分で人数分獲れたら良いなと思っていたのに、10分程度でバケツ2つがいっぱいになってしまった。

 先程狐鈴の「魚獲りには和穂が居れば問題なかろう」という意味を目の前で実感した。


和穂がこちらへ戻ってくる。

岸に上がると、袴が乾く。どういう仕組みなんだろ…。


「和穂お疲れ様、あんな風に魚を獲るとは考えてなかったけど、大収穫だね」


和穂は微笑み両手をこちらに伸ばしピースサインをする。



 それにしても…だ、バケツに魚を入れている辺りからボクの周りを飛んでいるこの生き物って…なんだろう?和穂も不思議そうに見ている。


「君は誰だい?」

「!?」


ボクは両手でその生き物を捕まえる。

その生き物というのは長さ40〜50cmくらい、太さ5cmくらいの白いヘビのような姿で小さい角が頭部から3本生えており、先端がピンク色がかった水色の羽を4枚くっつけた様な奇妙な生き物だった。


「ネェさんすごいや、姿を消しているボクを見つけるどころか…捕まえるなんて常識離れしてるね」


「いや、普通に見えてるし…和穂にも見えてるハズだし」

和穂もコクコク頷く。


「ガーンッ!誰も見えてないと思って近くにいたボクがバカみたい…いや、そんな、そんな事ないハズだよ…ネェさん、いったん離しておくれ、姿を消してビックリさせてあげるから」

言われた通り捕まえていた手を離す。


「ふふふ、コレで見えていまい、捕まえることができるならやってみるといいよっ!」


目の前をフヨフヨ飛んでいる。本人はバッチリ姿を消しているつもりらしい。

「えいっ」

今と全く同じ場所、同じ捕まえ方で捕える。

「うわゎ!?」


なんだこのこ?すごく面白いぞ。

「お面のネェさん、すごいね、認める。ならそっちの不思議な格好の獣人のネェさんはどうなのさ」


ボクは再度離す。

「お面のネェさん、絶対に教えちゃダメだよ」


ボクは頷き、その場に腰をおろし膝を抱えて見守る。


今度は和穂の隣へと行き、その生き物は気を取り直して言う。


「さぁっ!どうぞっ!!」

和穂は右手の人差し指と親指でつまむ様に捕まえる。

「!!」

「………」

「ガァーン、完、全、敗、北…ガクッ…」

 

 さっきまでパタパタやっていた羽をピタリと止め、白いヘビの様な身体も、萎びたごぼうの様にふにゃふにゃになった。

「ーー!!」

 その様子に和穂もあゎあゎする。

言葉のリアクションが面白い、表情がないからリアクションを言葉に出しているのだろうか。


むくっと顔を上げ元に戻る。

「ネェさん達すごいなっ!ボク精霊の自信を無くすとこだったよ…」


「いや、ボクは普通の人間だょ…」

おそらく、これがシルの言っていた『見えるひとには見える』状態なんだろうな。


「和穂は稲荷神様の仕えだけど…」


「えっ…!」


精霊はビックリし、和穂を見上げる。

和穂は頭上に汗を飛ばす…。


 そんな楽しいやりとりをしていると、突然野鳥達が飛び立ち、辺りに静けさが訪れる。



「グルオォォオオッ!!」

木々をバキバキッと薙ぎ倒す音が聞こえてくる。


「な、なにっ?」

 ボクが立ち上がると、和穂が声の方向に向き直しボクの前に出る。和穂から解放された精霊はボクの隣に飛んでいる。

少し後ろには水面が広がっている。まさに背水の陣。


「たぶん、あの咆哮はボアフットだな。ネェさんは闘える人?」

ボクは強く首を横に振る。


「じゃあ、ネェさんはボクが守ってあげよう、もう少し水面の近くまで寄ってくれるとありがたいな」

先程までフニャフニャになっていたとは思えない力強い言葉を発し、ボクを和穂から少し離れた水面付近まで誘導する。


 和穂は印を組み、3体の紫色した火球を召喚し胸元で手の平を『パァンッ』と鳴らし6体に増やす。あの村での戦闘を思い出す。

 そして腰に収められている二刀の刃をスラリと逆手で引き抜く。


「へぇ〜、あのネェさん強いね…」

ボクの隣で戦闘準備をする和穂を見た精霊は呟き、3つのバスケットボール大程の水球を浮かび上がらせる。


「和穂、面は?」

ボクの声かけに和穂は正面を睨んだまま首を横に振る。


 木々の薙ぎ倒す音が段々近づいて来て地響きを起こす。3mはあろうかライオンの様な立髪を纏った巨大なボアフットと言う名の赤いクマが姿を現す。


「グルオォォオオッ!!」

 ボアフットは咆哮をあげ重心を低くしこちらに向け突進してくる。

 6体の狐火は次々と弧を描くように一斉にボアフットの体へと着弾し紫色の炎を纏わせる。


 勢いを殺すには至らない突進に和穂はタイミングを合わせ地面を叩き、足下から炎の柱を出現させカウンターを浴びせる。


 立髪に炎が移り、体勢が崩れる。和穂はその隙を逃さない。左手の刃が真一文字にボアフットの顔を切り付け右眼の視界を奪う。更にそのままの勢いでコマの様に横に回り、振り抜き様に右手の刃で首を目掛け突き上げる。


 ボアフットも反撃とばかりに左前足を和穂に向かって振り下ろす。


 すると、ボクのすぐ横からすごい勢いで精霊の飛ばした水球が飛んで行き、振り下ろされた左前足をはじいた。

 和穂の突き上げた右手の刃は燃える立髪に潜り込み、ボアフットの首の右側より血飛沫が上がる。精霊の攻撃でぐらつき、少し軸がズレたようだ。


 和穂は逆手の左右の刃をボクシングのラッシュのように次々と切り付けていく。元々が赤毛で、和穂によって表面を焼かれ黒くなったボアフットなので、切っているのか跡は分かりにくいが、宙に舞う出血の量は明らかに増えていく。


 ボアフットは右前足を横薙ぎさせ反撃に移る、和穂は更に体勢を低くし攻撃をすかし、間髪入れず地面を叩き、再度足下より炎の柱を出現させる。


 ボアフットは顎下から炎の柱によって焼かれ、和穂に覆い被さる様に前方に体をぐらつかせる。

 精霊が2つの水球を放つ。水球は螺旋状に飛んでいき、ボアフットの巨体に直撃する。ボアフットは後方に吹き飛ばされ、背後の木々に叩きつけられる。しばらく痙攣をした後、黒煙を出したまま動かなくなる。


「ネェさんすごいなぁ、こんなに早くボアフットを倒した人見た事ないよ、ボクが手を出さなくても直ぐ倒していただろうね」

 精霊の声にボクはそちらを向き。ギョッとした。空中に先程浮かせていた水球が更に5個浮いていた。


「き、君も強いんだね…」

あの攻撃力のある水球をバカスカ叩き込めるなんて、普通じゃないと思う。


「水辺はボクのテリトリーみたいなものだからね…ココだからコレだけ自由に攻撃できるんだ」

精霊は水球を水面へと落とす。音を立てて水飛沫が上がる。

「何もないところだったら?」

ボクの問いかけに「へへ…3球かな」と答える。


「さて、ネェさん達への挨拶が遅れたね、ボクは水の精霊、水竜さ」



お帰りなさいませ。お疲れ様でした。

ロディに続き、遭遇したのは水の精霊。

和穂の魚獲りスタイルと、どうしても戦闘を入れたいと思っていたら、まさかの熊かぶり…センスなくって申し訳ない。

それでは次回、またお会いできたら嬉しいです。

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