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第158話 アタイ、タマと手合わせする。(チヌル視点)

 和穂は大きく深呼吸をして左足を前に前傾姿勢をとる。

 右足を大きく前に踏み込むと、そのまま獲物を捕らえる鳥が低空飛行をするように、前へ前へと地を蹴り、加速して一気にタマとの距離を詰める。

 召喚された式神たちは、和穂の勢いに遅れをとり、線よりこちら側に取り残されている。

 さすがと言うべきか、後を追う様にスゥが青光りする身体の光を残し、和穂の方へと向かっていく。


 対するタマは、張り詰めた空気の中、右半身を前に出した状態で棒の先端をピタリと和穂の位置に合わせて、重心を落とす事もなく背中をピンッと伸ばしている。

 縦でも横でもなく前後で水平に持っている棒は身体に隠れてしまい、本来の長さがわからなくなっている。


 構えているのか、いないのか、隙だらけの様で、だからと言っても、どこから切り掛かったとしても、あの握っている棒によって弾かれてしまいそうな感覚……。



 和穂の逆手に握る刃の右からの横薙ぎは、腕の内側より、棒の先端でぐいっと下へと下げられ、追撃として左から顔にむかって伸ばされた左手の刃も辿り着く前に引き戻す。


 和穂は慌てて身体を後方に反らせると、身体をなぞる様に、グルリと回した棒の逆側の先端が下より振り上げられる。


 迫った時の勢いと、体勢が崩されたためか、右側へとひっくり返る。

 いや……タマが地面に着いた和穂の足を払ったのか?


 タマは上げていた右足を地につくと、そのまま上がった棒を正面に振り降ろす。


「ギャフッ!」


 和穂を死角に後を追いかけてきたスゥの頭に当たり、地面へとベシャリッと叩き下ろされる。


 和穂が刃を持ったままの手で地面を押し出して、ピョンッと、後方に飛び体勢を整える。

 先程のタマの攻撃で顎を掠ったのか、左手の甲で顎を擦る。


 タマはすぐ様攻撃するではなく、先程同様ピタリッと棒の先端を和穂に合わせる。


「それじゃ、今度はこちらからいくよ」


 タマは右足を踏み込みながら、棒の先端を和穂へと向けて突く。

 和穂は後方に下がりながら左横へと棒を流す。

 タマは棒を右手で引き寄せながら左足を前へと踏み込み、左半身が前になる様に右回りに棒を横薙ぎさせる。

 その動きに合わせる様に和穂が間合いを詰めて、右手の刃で右側より迫る棒の横薙ぎを受け、軌道を変える。


 とはいえ、両手で握られている棒に対して片手の刃で受けたので、和穂もわずかながら体勢を崩す。

 

 和穂はしゃがんだ状態で、棒が頭上に抜ける様に躱し、左膝を地につけ、軸にして右足を蹴り上げる。

 

 和穂の足は空を切る。

 タマは両足を抱え込む様に曲げて跳躍して和穂の蹴りを躱し、先程の右回りの延長で、右肩、背中からグルリと体を回すと右手側の棒の柄の部分を和穂の無防備になった右肩に打撃を与える。


 バシンッ!!

 辺りに打撃音を響かせる。


 炎を纏った式神が爪を立て飛びかかっていくと、両足をついて着地したタマは、棒を両手でグルリと縦に回して和穂に打撃を与えた反対側を下から上へと持ち上げ、式神に引っ掛けて棒を担ぐ様に振り上げて、自分の背後の大樹へと放り投げる。


 バフッ

 式神は木にぶつかると煙を離散させたように消えて木の麓でまた形成させる。


 なるほど、式神の攻撃する時は実体化するものなんだねぇ……もっとも実体化しないと触れる事もできないだろうしねぇ。 タマも特性を理解しているわけだね。


 タマはそこから棒を引き戻し、後ろになっている棒の先端でそのまま後方に突く。


「ぐっ……」

肩に打撃を受けて前のめりになっていた和穂が身体を起こしたタイミングで、タマの突き出した棒の先端が再度和穂の右肩を突く。


「なっ……!?」

 まるで後にも目があったかの様に戦いの流れを制している。

 アタイは思わず声を上げる。


 つよ……タマの強さが良くわかる。


 アタイだったらどうしていたか……なんて、頭の回転が追いつかない状態の2人の攻防。


「和穂ちゃん、まだまだだねー」

 タマは棒で自分の肩をポンポンと叩きながら、右肩を抑えている和穂を見下ろしている。


 タマはアキラの顔の時は表情豊かだったけれど、本来の自分のものと言っていた顔になると、感情が全く分からないねぇ。

 和穂以上に表情が変わらない。 

 それは、綺麗な顔立ちに柔らかな口調だけど表情の変わらない様子は冷たく、不気味にすら感じる。


 ゆっくりと立ち上がった和穂は、一度刃を鞘に収めると、大きく息を吐いて手をプラプラと振り、その場で軽く上下に跳躍する。

 それから、準備運動の様に、体の動きを確かめるように、肩を回したり首を回したりする。

 空を見上げながら大きく深呼吸をして、両手で顔をピシャリッと叩き、改めて刃を引き抜く。


「うん、落ち着いたかな?」

 タマは棒を立て地面をトントンと突きながら言う。


「いつでもいいよ」

 タマは先程の様に改めて棒を構える。



 和穂は滑る様に間合いに入ると同時に、下から切り上げ、左から薙ぎ、上から斬り下ろし、肘を曲げるとそのまま打撃に、くるりと体を回して足技も入れ、間の空くことなく流れる様に斬りかかる。


 カッ! カッ! カカカッ!

 ガッ! ダンッ! ガッ! カカッ!!


 よくアキラが和穂の戦い方は、舞うようで目が奪われる様な戦い方をするって言っていたけれど、今はそんな先読みのされる様な刃の振り方はしていない。


 川の激流が立ち塞がる岩を飲み込む様に、動きの読めない破茶滅茶な軌道、だからといって闇雲に斬りかかっているのではなく、隙あらば一刀入れてやろうといわんばかりの、集中して僅かに生まれる隙間を連続して斬りかかり、そこに加えてタマの重心を変えようと蹴り技も加えている……。


 足下を払う様に地面を滑らす蹴りから、袴の裾を巻き上げた回し蹴り、逆手の刃を突く様な動作。


 ことごとく、タマの両手で操る棒で軌道を変えられ、躱され、時々大振りの棒を和穂が体を逸らして躱している様子が見える。

 先程の攻防も目で追うので精一杯だったのだけれど、和穂は、タマの圧に押されていたのか、余分な力が入っていた様だねぇ。


 とはいえ、和穂の攻撃をことごとく抑えて、その隙間を狙ってスゥの突進、後方からの式神からの攻撃にも対処しているタマのチカラは異常すぎる。


 アタイならどうするべきか……、放電なんてしようものなら周りも巻き込む形になりかねない。

 やっぱり剣に纏わせて斬り込む事がベストだろうか……。

 いや……そもそも切れ味をあげても当たらなければ意味ない。


 和穂の双刀による斬撃は一刀ごとはそれほど威力がないのかね、斬撃速度は速いけれど、タマは受けている時に力を入れている様に感じられないんだよねぇ。

 流れに身を委ねているというか、チカラでぶつかるのではなくて、手元を返して軌道を変えているというか……。

 ふむ、タイプの違う者が同時に斬りかかった場合はどう対処するのかねぇ……。


 アタイは鞘から剣を取り出すと、鞘が邪魔にならない様に足元に降ろす。

 アタイが斬り込む時は和穂の動きの邪魔にならない方が良いだろう。

 激しい攻防が続く中、飛び込むタイミングをジッと待つ。


 タマが和穂の動きを翻して避ける。和穂の立ち位置が手前から奥に変わる。


 ーー今っ!ーー


 アタイはタマに向かって駆け出し、間合いに入ると両手で右側から斬りかかる。

 

 ギャンッ!!

 

 タマは和穂を蹴り飛ばし、アタイの軌道に合わせて棒を立てると、両手で握りアタイの横薙ぎを止める。


 くぅ……アタイの様子を見てもいなかったのに、絶妙なタイミングで止められるなんてねぇ。

 

 いや、アタイの斬撃を止めたのは、アタイの技量を知るため、わざと受け止めたのだろう。


 わざわざ受け止める必要は無いのだから……和穂を蹴り飛ばしてできた空間を使えば、アタイの剣を避ける事くらいなら可能なはず。


「チヌルちゃん、いらっしゃい」

 タマはアタイに声をかけてくる。

 そのために、わざわざ受け止めたのかぃ。


 近くでタマの表情を見ると、先ほどの和穂の様子が分からないでもなく感じる。

 ジッ……と見つめてくるその目に吸い込まれそうだ。


 それに、遠目から見ていた以上にどんな斬撃も止められてしまうのではないかとさえ思える。


 とはいえ、さすがに和穂の斬撃を防いで見せていたように棒を回して軌道をずらしたりできるほど、両手剣の一刀は簡単には受け流す事はできない様だ。


 いや、そうであって欲しいとアタイは思う。


 和穂の斬撃は切り替えしが早いので、タマも無駄なく最小限の動きで躱していたのだろうけれど……。


 アタイは止められ、弾かれた剣を肩に担ぐ様に大きく上に振りかぶり、身体を前傾に曲げる様に正面に斬りかかる。


 タマは棒を横にして、今度は額の辺りの位置で追撃を受け止める。


 押し返すと、左手側の棒の柄を腋に挟む様に抑えて、アタイの剣の柄の先端を的確に突いてくる。


 アタイは地に足をついていない状態だったので後方にバランスを崩す。

 いつの間にか、タマは右足を軸に後ろ足になっていた左足で後ろ回し蹴りを繰り出していてアタイのコメカミに踵がぶつかる。


「ぐぅっ……!」


 アタイは地面に身体を叩きつけられる前に、ブレて見えた光景に驚いた。


 タマはアタイに対処してきただけではなく、後方から奇襲をかけてきていた和穂の斬撃にも反応していたのだ。


 アタイに踵を当てながら、今アタイの剣の柄を弾いていた棒をグルリと横に回して、和穂からの斬撃を弾き、身体を浮かせた状態で右足の爪先を和穂へと向けていた。


 和穂はタマの足技を躱すと、タマはそのまま左脚を曲げて着地して、右の爪先を地面に擦り付ける様にグルリと回り、身体を止める。


 左足を伸ばして地面から立ち上がると、そのまま右足を前に出して右手で棒の柄を引き寄せ、後方から右に横薙ぎする。

 柄の握る位置を変えたのか、広めの間合いを取っていたはずの和穂へと横薙ぎが届く。


 右手の刃と腕で右側面を守りながら棒を止めた和穂も、驚きの表情を見せる。

 それはそう、剣と違って持ち位置によって長さが変わるわけだから、慣れないと厄介な武器だろう。

 

 アタイは跳ね上がる様に飛んで立ち上がるけれど、頭がクラクラ揺すられたようになる。

 頭をブンブンと横に振って何とか元に戻して剣の柄を握る。


 和穂は左手に握る刃に、近くを漂っていた紫色の炎を纏わせて刀身を伸ばす様にして斬りかかる。


 アタイは踏み込み、和穂の反対側からタマを挟む様に袈裟斬りする。


 これならどうだいっ? どちらかの刃が届くだろう。


 しかし、タマはそんなに優しくない。

 棒を抱え込み、両手の人差し指を伸ばした状態で胸の前で腕を交差させる。


 パァァアァァーンッ!!!

 乾いた音が響いて、気か付けばアタイも和穂もそれぞれ反対側に飛ばされていた。


 「な……なな?(何がおこったんだぃ?」

 アタイは手を杖に上体を起こし確認する。ちょうど反対側で和穂も上体を起こして、こちらに視線を向けている。

 和穂の手元の刃の炎も消えている。


 アタイも和穂も見たことがある、これはアキラが実験で試していた圧縮させた精霊魔法だ。

 それをタマは無詠唱で瞬時に、しかも2種類同時に発動させた。 

 恐らくアタイに放った魔法は風、和穂に放った魔法は水だろうねぇ。


「残念ながら、アキラちゃんの精霊魔法は契約した部位でしか出せないみたいなんだよね」

 タマは棒を握ったまま腕組をして、ウンウンと頷きながら説明する。


「それにしたって、無詠唱って……」

 アタイが言うとキョトンとした表情で(とは言っても殆ど表情は変わってないのだけど)こちらを見る。


「無詠唱……ってなに? アキラちゃんの記憶の中で、確かシルちゃん……? ナティルちゃん? が言っていたかな……? 詠唱って、術者が魔法のイメージに集中できるように唱えるんだっけ? あと言葉を口にすることで力を増すんだったけ? アキラちゃんは使い分けるために契約者の名前を唱えているようだけど、ボクはどうしたいってイメージのモノをすぐに出したいのだけど?」


 タマは当たり前のように言っているけど、普通じゃまずありえないことだ……戦いに集中している中、魔法のイメージに集中を切り替えて、魔法の放出するイメージする、それを瞬時に行ったって事だろぉ?


 アタイだって自分の電撃魔法を出すときには、詠唱は必要ないとしても、放出するイメージは必要だから、戦いながらだと魔法を出したりできない。


 アキラは水魔法でも圧縮させれば、破裂させる事ができると言っていた。

 タマは流石に、和穂が炎を纏っていた刃だったから、水魔法をぶつけていたのだと思うけれど、もしアタイが電撃魔法を纏っていたとしたら、選択次第でタマは感電していたのだろうか?


 いや、それさえもアキラの記憶を共有して、対策していたのかもしれない。


 まったく隙を作る方法が思い浮かばないねぇ……アキラの記憶を共有しているならば、この強さの他に、さらに投げ技も持っているって事だろ??


 和穂が言っていた、和穂よりも狐鈴よりも強者ということは間違いじゃなかったようだねぇ。

 狐鈴の斬撃も目にも止まらぬ速さではあるけれど、初動作から動きを読めば防ぐことは不可能ではない。

 しかし、このタマの動きときたら、自由自在というべきだろうか、攻撃の間際であっても軌道を変えてくる。


 しかもこちらからは自分の武器の特性を理解して、和穂の武器の特性も理解して悪し部分を補える動きができないと、攻撃が一切通じる気がしない。

 例えばアタイとナティルとで組んでも、チカラでタマを押すことは出来ない、和穂と狐鈴の速さで押すとしても決定打を数与えないと意味がない……。


 武器がどうこうというわけではなく、それを扱っているタマが凄いのだろう。

 きっと、アキラの使っている鉄扇を使ったって、戦いに慣れていないアキラと比べて、扱いに長けていると思えるし。

 

 と、いう事は、今この修練で学ぶ事は自分の戦い方が通じるかのお試しじゃなくって、自分の武器の扱い方、共闘する者の特徴を知らないと、どんなに向かっていても、一刀が届かないだろう。


「ボクがなぜ和穂ちゃんやチヌルちゃんの攻撃に反応できているのか教えてあげるよ」

 アタイが考えているとタマは自分の首の後ろに棒をまたがせて、両手をかけた状態で和穂とアタイを交互に見ている。


「ほとんど戦闘って、自分の目だけを頼りにしている事が多いよね、ボクの場合は目だけを頼りにしているわけじゃないんだ。

 もちろん目も使うけれど、迫る相手の中心に武器の先端を合わせると、体の傾きや癖でズレて見えるから相手の隙がよく分かるんだ。

 他にも耳をすまして、地を蹴る音や衣の擦れる音、打撃の際に出る風の切る音なんかも聞いているんだよ。

 それに、精霊達だと魔力、和穂ちゃん達だと神力、生き物だと生命力の感覚を知る様に神経を研ぎ澄まして認識しているんだよ。

 だから位置を把握して、どんな動きをしてくるかにも合わせられるんだ」


 これは……全く歯が立たない、攻防全てにおいて、アタイの戦闘の考え方はタマに比べたら、まるでお遊戯のようなものにすら思える。


 アタイは手元にある自分の武器を見つめ、十分に能力を引き出せていない事に何だか申し訳なく感じる。


 和穂はゆっくりと立ち上がり、双刀を構える。


「うんうん、何度でもかかっておいで、ちゃんと最後まで相手してあげるよ」

 タマはそう言うと、棒を構える。


 今度は和穂からではなく、タマが正面を突くところから攻防が始まる。

 和穂は首を動かし、最小限の動きで躱すと間合いを詰めながらグルリと体を回して、タマの伸びた右腕に向かって左の刃で切りかかる。

 タマは棒を持ったまま右手を引き、左手を押し出すような形にすることで、自分の右腕のあった位置に棒の中央が来るように棒を回して刃を受け止める。

 更にそこから左手の位置を後ろに引いて腰の辺りに持っていくことで、右手を前に押し出すようにして棒を横回しする。

 和穂は棒の動きによって、左肩を押され前のめりに体が崩される。しかし、和穂は左脚を軸にコマの様に体を回し、タマの顔に向かって右脚の踵で蹴り入れる。

 この流れでは、棒で防ぐことができず、タマは右手を棒から離して右腕と肘で顔を守ろうとする。


 しかし、和穂の右踵はタマの腕を捕らえず、軸にしていた左脚と入れ替えて地に着かせて、さらに体を回して勢いをつけた左脚でタマの防御する右腕を蹴り飛ばす。


 ズパァーーーンッ!!

 

 防御の上からではあったけれど、初めてタマに攻撃らしい攻撃が入る。

 アタイの中で、やったと思える気持ちと、先を越された事の悔しい気持ちと、なんとも複雑な感情が絡み合う。


 結局そのまま和穂の脚はつかまれ、軸の脚を刈り払われてひっくり返ったわけなのだけど。


「いててて……驚いた、全然動きが読めなかったよ。

 うん、和穂ちゃんは自在に動けることが戦闘時最大の武器だから、今みたいに連続した動きの中で隙を探す事がいいと思うよ」


 タマは手を蹴りをまともに食らった右腕をブンブンと振りながら、ひっくり返った和穂に近づと顔を起こした和穂の頭に手を置き、子供の頭を撫でるように撫でる。

 タマはウンウンと頷くと和穂に手を貸してやり起こす。


「それから……チヌルちゃん、その武器は何か思い入れがあるのかな?」

 タマは今度はこちらに振り向いてアタイに声をかけてくる。


「君の持つ刃は、たぶん君の身体能力とのバランスが合っていないんだよ。

 どちらかというと、チヌルちゃんの能力は和穂ちゃんと近い巧みな機動力なんだと思う。

 何だかその武器に振り回されている様な気がしてね」


「いやー、そんな事はないけれど、扱い難い武器だからこそ、どうにか扱える様になったら、自分の腕も上がるし良いなーと思って……アタイの魔法……電撃を通して威力を上げる事もできるからねぇ」


 タマは和穂の頭をワシャワシャ撫でると、こちらにやってくる。


「どれ、その武器を貸してみて」

 タマはコチラに右手を差し出してくる。


 アタイがタマへと剣の柄をむけると、そのまま片手で受け取り、頭の上まで振り上げると地面まで振り下ろす。


 ドスンッ……!!


「んー、やっぱりそういう武器なんだねー」

 タマは左手に握っていた棒を足下に置くと、両手でアタイの剣を数回振り回す。


「そうだねぇー、ボク達の世界の猫又……君の様な容姿の妖精はね、自分身体にもともと持っている手足の爪だったり、刀……狐鈴ちゃんの剣のもう少し刀身が太い剣、それか和穂ちゃんの刃の様に脇差の様な短刀を両手で構えたり、鎖鎌を使うモノが多かったハズ。

 ボクがこの刃の一撃を受け止めた時に、チカラだけで振り回しているみたいだし、武器に振り回されている様だったから、チヌルちゃんとは合っていないんだろうなと思ったんだよ。

 ちなみに、この刃やマサカリ……ナティルちゃんの持っている様な武器は、ただチカラで振り回すように扱うようなものじゃないんだよ、重さで振り回されるから、そのチカラを利用するんだ、例えばこうね」


 タマは刀身が背中に付くくらい大きく振りかぶると、シュッ っと地面に向かって打ち下ろす。


 ダッゴオオオオォンッ!!


 土煙を上げて、剣は地面に亀裂を作りめり込む。


「別にこの刃が悪いわけでもないんだよ、上から振り下ろす時に、刃の重さに加えて、打ち下ろす勢い、そこに自分の体重を加えるように使えるならね。

 ただ……飛び込むように、宙に身体を浮かせている状態じゃ勢いも半減しちゃうし、そもそも体重を乗せることもできない。

 1番の問題は、地に足をつけていていたとしてもチヌルちゃんの体重が軽過ぎるんだよね」


 言っている事は的確で、初めて手にする者の武器の扱い方ではない。


「チヌルちゃんはどんな立ち位置で闘いたいのかな? 和穂ちゃんや、狐鈴ちゃんの様に前衛で接近して闘いたいのかな?」


 タマは剣を地面から引き抜くと、両手で丁寧にアタイに返してくる。


「うぐ、アタイはもっと強くなりたいんだ、仲間に背中を預けて突破口を作れるそんなチカラが欲しいんだっ」


 アタイは剣を受け取りながら、自分の思いを声に出す。


 タマは身体を屈めアタイの目をジッと覗き込む。


 1秒? 5秒? 時間が長く感じられる……。


 するとタマは初めて表情を柔らかくする。


「うんうん、チヌルちゃんは本当にアキラちゃんと向かい合っているように、真っ直ぐにものを伝えるんだね」


 タマはコロコロと笑うと、身体を起こし口を開く。


「そうねー、ボクとしては今のアキラちゃんを取り囲む戦力として、少々薄い、後衛を護れる槍や矛なんかをオススメしたいところなんだけどね……和穂ちゃん、ちょっとアキラちゃんのバックをとってもらってもいいかな?」


 和穂は頷き、バッグのかかっている木へと向かう。


 タマは右手を光らせ、両刃の剣の先端の様な物を作り出す。

 和穂からバッグを受け取るとバッグの中からリボンを取り出すと、アタイの右腕の手をとって、ジッと見る。


「うん、やっぱりこうかな、よし、できた、昔忍者がこんな武器を使っていたんだよね」

 タマは慣れた手つきで作り出した物をアタイの右手の甲、グローブの上からリボンで固定する。


「こういう武器があるなら、切り替えるといいかもしれないよ、ボクは使ったことないけど、両手に装備すれば、小手の代わりに自分の身を守れるし、和穂ちゃんの様に小回り効くし、何より手が自由に使えて便利じゃない?」


 なるほど、確かに。

 アタイは括られた刃を振ったり、手をグーパーと動かしてみる。

 即席で作ってくれたものなので、激しく振ると刃が重みでズレる感じがする。でも、使い勝手は良いかもしれない。現在使っていたバスターソードと呼ばれているこの剣は盾としても使っていたから、大ぶりの剣になっていたし、確かにタマの言っていたように、十分に使いこなせていなかったと思う。


「確かに、これならアタイの動きも十分に生かせることができるかもしれないねぇ」


 ふと顔を上げると、和穂が食い入るようにアタイの手元を見ている。


 ジーッ……


 近い、近い……アタイが和穂の視線に気が付いたと知ると、両手でアタイのグローブをがっちり握る。

 グローブとアタイの顔を何度も見る。


「え……和穂……何だい……??」


「和穂ちゃん……」

 タマはそんな状況にため息をついて声をかける。


「分かった、分かったから、和穂ちゃんにはこれをあげるよ」

 タマは足元の棒を拾い上げると和穂の方に向ける。

 和穂は尻尾を大きく振り、タマから棒を受け取ると、大事そうにペタペタと触っている。


「アキラちゃんが和穂ちゃんにもなにかあげてって……」


「ああ、うん……」

 どうやら和穂はタマがアタイだけにお試しって事で武器を作っていた行動が羨ましく思えたのだろう。


「まぁ今日は、和穂ちゃんもボクに攻撃を届かせることができたし、チヌルちゃんも自分に適した武器に気が付くことができたから良しとしてもいいね、それにこんなボクにも都合の良い練習場所も知ることができたし……良いかいアキラちゃん?」

 タマはアキラを含めた皆に確認をするかの様に声に出している。


「ねぇ、タマは薙刀って言っていたかい? どうしてそれを武器として選んだんだい?」


 アタイはタマを見上げて質問をしてみる。

 これだけ強ければ、先陣きって攻め込む武器を使っていたとしても、直ぐに鎮火できるものだと思う。

 さっきアタイには後衛を護る武器なんて言っていたからつい気になったんだ。


「ん?気になる?」

 タマは腕組みをして、聞いてきたのでアタイは頷く。


「そうだねー、もともとボクはそれほど好戦的ではないのもあるけれど、戦闘になったとき、一歩引いた位置からだと冷静に状況を見ることができるからね。

 戦闘に夢中になって、隊の崩壊なんて目も当てられないし。

 それに、対峙して分かると思うけれど、刀より、間合いに距離があると相手も警戒するし、相手の癖から生まれる隙を突く、そんなボクの戦術に適しているんだよ」


 なるほど、個人でも強いけど、全体を強くまとめるための武器の選択って事もあるんだねぇ。


「すると、ハクフウやリュートの使っている、あの剣にも槍にもなる武器って、使い分けができるから万能って事なのかねぇ」


「そうだねぇ、でもその武器の特性を理解して、それを十分に扱えるだけの技術もないと意味ないんだけどね」

 

 アタイも自分の武器の潜在能力を発揮させる事ができていなかったから何とも言えないけれど、タマからみたら、あの2人のオーガもまだまだということなんだろうねぇ。


 アタイは、新しい武器でまだまだ強くなれる、まだ伸び代があるって事だろうと、良いように現状を受け止める事にする。


 ここにきて新しい武器か、ドワーフの行商人ブレロに相談してみようかね……。

お帰りなさいませ、お疲れ様でした。

投稿遅くなりまして申し訳ございませんでした。

戦闘の状況を文にする事が本当に難しく思います。

どんな体制で攻撃をして、受け止めて……と考えては直して、あり得ない体制だったり矛盾がありましたらこっそりと教えて下さい。

こっそり修正します。


それでは、また次のお話でお会いできたら嬉しいです♪

いつも、誤字報告ありがとうございます。

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