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第131話 ボク、唐揚げが恋しい。

「ヘッチュンッ」


 さっきまで血みどろで、今はずぶ濡れになったハルがかわいいくしゃみをする。


「ちょっと離れているけど、お風呂入ってから戻ろうか…….」


 ハルの頭を狐鈴が手拭いで拭いてやり、ボクの頭を和穂が拭いてくれている。


 被った水も、ルークの水の操り次第で何とかなるものかと思いきや、繊維の最深部のものや、髪の毛に複雑に浸透した水に関しては、操るには複雑すぎる様で……。


 洗った食器とかの水分ならどうにかなるんだけどね。今後に期待だね。


 そんな事で、大まかな水分は搾り出すことができたものの、ボクとハルの頭はしっとり、衣類は脱水後の様な状態でいる。


 さすがに、ちょっと寒いよね。

 焚き火を焚いて服を乾かし体を温める。



「お姉ちゃん、これからはもっとちゃんと剣術の鍛錬するっ」


 腰を下ろしているハルに対し、後ろ髪を拭いてやっている狐鈴。


 ハルは今回の戦闘で何か思うことがあった様で、狐鈴へと思いを伝える。


 伸びしろがあるって事はまだまだ成長できるわけだし、それを自分で気がつけるって事は凄いなって、ボクは正直にそう思えた。


「なんじゃハル、何かあったのかや?」


「うん、いつもどのタイミングでお姉ちゃんが注意をしているのか、ハル何となく自分の欠点がわかった様な気がして……


 それに、お姉ちゃんの言っていた事を思い出しながら相手と向かい合ったら、どういう意味で言っていたのかよく分かったから……」


「ほう、ハルは今回色々よく考えて戦ったのじゃな、ワチは嬉しく思うよ。


 じゃが、ワチの言葉が全てじゃないからの、自分でよく考えて、納得できるものを自分の知識として保管する事が大事だからの。

 ひょっとしたら、ワチの思うことよりハルが何か新しく思う事の方が正しい事も、必ずあるからの」


 狐鈴はハルの頭をひとつ撫でてやり、諭す様に口にする。

 ハルは目をキラキラさせながら頷く。


 そんな光景を少し離れた位置からリシェーラさんとゼルファさんは見つめている。



「ねぇ、ルーク、今みたいに水の塊をぶちまけるんじゃなく、バケツから水をチョロチョロと少しづつ落とすこともできる様になったら、形やイメージも自在になるんじゃないかな?


 例えば刃のように扱う様にすれば、あまり魔力を使わずに鋭い攻撃を与える事ができるとか……ボクは水は放出はできても操ったりはできないから、うまく示してあげられないんだけど……」


「……ああ、なるほど。

 ……さすがアキラネェさん、ボク頑張ってみる」


 近くでパタパタと羽を動かし飛んでいたルークに声をかけると、うんうんと頷き納得する。




「ハル達の倒した鳥も回収にいかないと……」


 サンドウィップの肉もあるし、しばらく鶏肉には困らなそうだな。


 そう言えば……フライドチキンや唐揚げもしばらく食べていないから、すごく恋しく感じる。

 にんにくや生姜に代わるもの、早く見つからないかな……。


 ああ……唐揚げ……食べたい……。


 パーレンさん、ヤンマ姉妹あたりならこちらの世界の……この際、ボクの知っている唐揚げじゃなくても良い、カリッジュワーな鶏の揚げ料理を作ってもらえるだろうか。


 あー、チキン南蛮もいいな……チキンカツもいいかも……


「……アキラ……」


 ボクの頭をワシワシとしながら、和穂が声をかけてくる。


「ん? なーに?」


 ボクはされるがままの状態で返事をする。


「……ご機嫌……だね?」

 ボクの感情はボクの手首のブレスレットを通して和穂に流れる。和穂もボクのそんな感情が嬉しいのか、フリフリと尻尾が揺れている。

 

 うん? これがご機嫌な感情なのかというと微妙なのだけど……食べ物の事を考えていたから、気持ちがたかぶっている。


 ……と思う。


「鶏肉がだいぶ増えて来たと思ったら、しばらく食べていない料理が食べたくなったなーって思ってね」


 ピクッ…….和穂の動きが止まる。


「なになになーに?」

 ボクの言葉に誰よりも早く反応したのは、離れた位置にいたはずのリシェーラさんだった。


「あらあら、アキラどの、今度は何を作ろうとしているのですか?」


 スススッと吸い寄せられる様にこちらへと来た、リシェーラさんはニコニコした表情でボクに尋ねる。


「んー、今食べたいモノは代用の食材がそろってないんですよね。いずれ再現できたら嬉しいものです」


「……ワサビ稲荷より……?」


 和穂はボクの正面にまわり尋ねてくる。


「んー、そうだねー……ボクにとったら、和穂がワサビ稲荷を求めるくらい好きなモノのひとつかな」


 くぅーきゅるるる……

 

 和穂はお腹を鳴らせ返事をする。


「ひょっとしたら、パーレンさんとか、似た様な料理を知っているかもしれないから、戻ったら聞いてみようかなって思っていたところなんだ」


 コクコク。

 和穂は頷く。


「ともあれ、ハル達の倒した鳥を回収しないとですね、リシェーラさん、怪鳥はボク達が頂いても良いですか?」


 ボクがリシェーラさんの方に首を向け確認すると、リシェーラさんはピシャリッと自分のアゴの前で両手を合わせて言う。


「もちろんですよっ、アキラどのが食べたい料理が再現できるようになったら、私達にもご馳走してくれるんですよね??」


 目をキラキラさせている。


「ええ、それはもちろんです、期待していて下さい」


「とても羨ましいです。

 私もアキラさんの料理をいただいたら、すっかり虜になってしまいました。

 旅の中で渡り歩いた、どこの村にも町にもない料理でした」


 離れたところから話に加わるソーニャさん。


「いいよなー」

「そりゃ、ソーニャは味わえるんだから」

「俺はアキラさんの他の料理も気になるけどな」

「いずれ味を共有できる方法が見つかると良いんだけど」


 守護霊達もワイノワイノ話を盛り上げる。


「そう言えば、この世界には降霊術師みたいな能力を扱う人はいないんですか?」

 ボクは何気なく聞いてみた。


「降霊術師……とは??」

 ソーニャさんはこちらに歩いて寄って来ながら、首を傾げて聞いてくる。


「んと、死霊の魂や亡骸を操る、ネクロマンシーとかに近いのかな?

 自分の体に霊を憑依させる……ええっと……本人が器になって中身に別の人の魂を入れて知識や体験を共有する事を生業にしている人と言えばいいのかな?」


 ボクの言葉に狐鈴が頷く。


「そんなところじゃな。

 まぁ、感性の高い、波長の合う者ならば、特別な能力はなくても勝手に共存はできるじゃろう。


 補足するなら、降霊術師は転生前であれば、天界からも魂を呼び出してその者に体を貸す事もできるのじゃ……。

 呼び出し、戻せる者でないとならないの。

 頻繁に呼び出す事もできぬし、多少未練のある御霊を呼び出すとしたら、地堕ちしてしまわぬように、天界から付き人もくるじゃろう」


「天界からって、神様と交渉のできる様な人がいるって事ですか?」


 ポニーテールの守護霊が聞いてくる。


「そうじゃの……案外アキラは神にも気に入られて能力が開花するかもしれんよ」

 狐鈴は意地悪な笑いをボクに向ける。

 

 和穂も満足気に頷く。


「やめてよ……」


「ふむ、特殊職としての存在はどうかな、以前アキラ殿に話したこともあるが……。

 嘘が誠か定かではないが、死者に会いたいと言う者に見返りを求め、魔法や術式を用いて呼び寄せる事を生業としている者はいるようだ……あとは呪術……かな」

 ゼルファさんは腕組みをして、言いづらそうに口にする。


 最後言葉を濁したのはきっと、ハルがボクに使おうとした術がそれだったのだろう。


 あの時ボクがまともに受けていたとしても、きっとボクの中には既に珠緒お姉ちゃんがいたから入ることはできなかったと思うけど……。


 そうか、今思えば珠緒お姉ちゃんはボクを通して、食事も味わっているんだよね、今度好みを聞いて、食べようかな……。


「和穂ありがとう。

 それじゃ鳥の回収に行こうかね、ルーク血抜きお願いね」

 ボクは立ち上がり、水を使って形の維持の練習をしていたルークへと声をかける。


「任せて」

 ルークは、返事をして水を池へと戻し、ボク達の元へとよってくる。


 怪鳥の回収に全員は必要ないだろうと、ボクとハル、和穂とルークで向かう。


 残ったメンバーはボク達の倒した野獣達を1箇所に集めて、狐鈴の炎で燃やし尽くす予定だ。

 和穂の相手していた大型の野獣は比較的形が綺麗に残っていたため、ハルがネクロマンシーのチカラを取り戻した時の仲間として操れる様に、ハルが保管している。


 怪鳥は思っていたよりあちこちに散ってはいなかった。

 枝に引っかかっている怪鳥の体は、ハルによって地に降ろされる。

 中にはまっぷたつに斬られたモノもいたが、はみ出していた臓物は和穂に焼いてもらい処理をする。

 他のモノはレウルさんあたりが美味しく食べてくれるだろう。


 それにしても……だ、2トントラックの大きさほどある怪鳥5羽ともなると、血抜きをした後の血の量が普通ではない。


 そこら辺にばら撒いてしまうわけにも、池に流し込むわけにもならないので……。


 ボクが圧縮した風魔法で地面にクレーター状に穴を開けて、ルークが抜き取った怪鳥の血をとりあえず流し込む。


 サンドウィップの時どうしていたっけ……?

 ああ、そうか、荒野だったし、勝手に地面が吸い込んでいくから、放置したんだっけ……


 さてこの血溜まりはどうしたものか……辺りには鉄の匂いが放たれている。


 うう、ボクの好きなこの場所が、こんな形で汚れてしまう事がもの凄く申し訳ない。


 この量の血溜まりから血を吸って成長する樹木が心配だ……何か育つとしたら、呪われた樹木……木のモンスター、トレント辺りが生まれてきそう……。


 【桜の木の下には死体が埋まっている】


 とか、何かで聞いた事あるけれど、絶対迷信だ。


 むう……どうしたものか……コチラに水を入れて薄める?

 いや、量を増やしてどうするんだ。


 和穂は血抜きされた怪鳥を1羽、また1羽と片付けていく。


「アキラネェさん、さすがに長い時間ここにいたい気はしないよぉ……」

 ルークは言う。


「うん、ボクも同じ気持ちだよ、正直長居はしたくないんだけど……コレどうしよう……」


「う……」

 ボクの返事に言葉を失う。



「お姉ちゃん、ハルの思った通り、頭に魔石があったよー」

 怪鳥を地面に降ろした後、ハルの姿がないと思ったら、魔石の気配を追って、採りに行っていたようだ。


 もちろん、血抜きの時に刈った首もあったので目に入るところで開頭……。

 ボクは見ない様にしていた。


「ほらほらお姉ちゃん見てー」

 血塗れになった両手の平に収まる白い魔石……キラキラ光っているソレはとても綺麗に思えた。


【ルーク】

 ボクはハルの手元に水をかけようと思ったのだが、手元が狂ってハルの顔に水がかかる。


「わっぷっ……」


 トププンッ……


 驚いたハルの手の平から溢れ落ちた魔石が血溜まりの中に落っこちてしまう……。


「ま、魔石が……っ」


 さすがに、この中に飛び込んで探すわけにはいかなく、ハルはその場に座り込んでしまう。


「は、ハルッゴメンッ! 本当に申し訳ない……」

 ボクはハルに謝罪する。


「せっかくお姉ちゃんにあげようと思っていたのに……」

 悲しい表情でボクを見上げてくるハルに、ボクは罪悪感でいっぱいになる。


「アキラネェさん、ボクが持ち上げてみるよ、うまく魔石だけを分ける事ができるか分からないけど……」


 ボクのすぐ傍を飛んでいたルークの言葉がボクを救ってくれる。


「ルークありがとうっ!」


 ボクはルークの体に手を伸ばす。


「ネェさん、ネェさん……し、締まってる……」

 おっと、興奮のあまりチカラが入ってしまっていた……。

 白い体のルークの顔がすっかり青くなっていた。


「ご、ごごご、ごめん……」

 慌てて、手を離すとルークは大きく息を吸う。


「へぇ、へぇ……死ぬかと思ったよ……」

 舌を出した状態で呼吸を荒げている……。


「いや、本当にゴメン……」

「……アキラ……落ち着く……」


 和穂がボクの腕にしがみ付く。


「じゃあ、やるよ、よいしょっ!」


 ルークがクレーターの中の血溜まりをゆっくりと持ち上げる。

 水を操っていた時の様に球体ではないが水槽に入った血液を持ち上げている様にも見える……

 

 宙に浮かせた事で血液特有の鉄の匂いが強くなり、辺りに広がる。


「あれ? こんなもんだったけ?」


 何か思っていたより少なく感じる……いや、持ち上げている最中にも小さく……血の量が減っていっている??

 特に下へと溢れている様子はない。


「ななな、何が起こっているの!?」


「え、え、え、ボクも分からない……」

 クレーターの底からキラキラ光る魔石が見える。


「ハルあそこ、魔石が見えるよ」

「ちょ、ちょっと待ってお姉ちゃん、あの魔石も何か様子がおかしくない?」


「!?」


 確かに……。

 先程ハルが手に持っていた魔石は各個体から集めたものだからバラバラで、中には戦闘時の破損で2つに割れていたものもあったはずだ……。


 今ボク達が見ている魔石は、クレーターの底で散らばっていることもなく、1つだけ、まん丸の球体になっている。


「消えた……」

 ルークの声で視線をあげると

 ボク達の目の前で大量にあった血溜まりが消えていた……。


「何が起きているの……」

 ボク達はありえない出来事に、ただ唖然とすることしかできなかった。


 クレーターに残された球体の魔石……


「……??」

 ハルはクレーターの中へと滑り降り球体に近づく。


「ハル気をつけてっ!」

 ボクのかけた声に「うんっ」と返事して頷くハル。


 降りる際に手にした枝を伸ばして魔石に触れようとしたその時、魔石は直視できないほどの眩しい光を発する。


「うわわぁっ!!」

 ハルは驚き、尻もちをつく。

 発光した魔石を直視してしまった様で、顔を両手で覆い隠している。


 発光した魔石はゆっくり宙に浮かび、ボク達より少し高い位置まで浮上して小さな太陽のように辺りに光を撒き散らす。


 「……くっ!」

 和穂がボクの顔に袖が来る様にして、光から守ってくれる。


「ふぎゃっ!!」

 ほんの数十秒の出来事だったと思うが、ハルの声でボクは我に帰る。


 そっと和穂の腕を降ろして、先程の光の辺りに目をやると、発光していた球体はなくなっていた。


 声を発したハルを見ると仰向けになった状態で体の上には白い何かが乗っていた……。


 んん??


 メガネをかけて、ハルの上のモノをよく見る。

 白い何かは、想像外のものだった。

 普通ではない、小さな女の子が乗っかっていた。


 昔写真で見た【アルビノ】のような幻想的な真っ白な姿。

 和穂だってかなり白い肌なのだが、透き通っているのではないかと思ってしまうほど白い肌だった。


 一糸纏わぬその姿はリンネちゃんくらいの見た目(10歳くらい)髪の毛はハルの様に腰に届くほど長く、肩甲骨あたりには小さく折り畳まれた真っ白なコウモリの様な羽。


 力無くハルにのしかかっている。

 


 あの血はどこに行った??

 魔石はどうなった??

 この子は誰??

 

 ボクと和穂はクレーターを駆け降り、ハルの元へと行く。


 クレーター内部は先程血溜まりになっていた事自体が夢だったかの様に、血の痕跡も臭いも残っていなかった。

 目の前に残されているのは透き通る程白い少女、ただし天使ではない何か……。


 その少女は気を失っている……。

 ハルはというと、突然の事態にぐるぐる目を回している。


「ハル大丈夫!?」

「お、お姉ちゃん、ハルは大丈夫だけど、何がどうなっているの?」


「ゴメン、ボクにもよく分かっていないんだけど」


 和穂はその少女に取り出した千早をかけて包んでやりヒョイと持ち上げる、ボクはハルを起こしてやる。


「そ、その子はだれ?」

 ハルは和穂の抱えている少女を見て聞いてくる。


「よくわからないんだけれど、魔石の発光のあと、その子が現れて、ハルの上に乗っかっていたんだよ」


「と、とりあえず、問題だった血溜まりの事も何故か解決したし……。

 そろそろ戻ろうか……事態が飲み込めていないし、みんなといったん合流しよう。

 せっかく集めてくれた魔石は残念だけれど、なんだかとんでもないモノを今手にしている気がするんだ……」



 ボク達は狐鈴達の元に戻る前に、この少女に関わる手がかりになる様なものが、辺りに何かないか、目を凝らしながら探した。

 しかし、結局少女に繋がりそうなものは何も見つけることはできなかった。

 


「精霊だな……」

 戻って皆に少女を見せると、ゼルファさんは即答した。


「あの怪鳥達の血がみるみる間に消えていった、魔石が奇妙な反応をして、この子が現れたということは、何か血液に関係する精霊なのは確かなのだが……血を操るのか……血を啜る、吸血の類なのか……」


 狐鈴は横たわる白い少女のほっぺたをムニッと引っ張ると、鋭い犬歯が口から姿を見せる。


「コレは後者の様じゃの……」

 

 精霊の誕生は、特殊な条件が揃った時に発生するってシルから聞いた。

 ルークはマイナスイオンたっぷりの滝の裏で生まれたというし、チヌルは頻繁に落雷の起こる地で生まれた。

 この少女に関しては怪鳥5羽分の大量の血液と、頭部10個分の魔石、それと関係しているか分からないけれど、ハルのマナ……。


「んー……ハルはお母さんになったのかな?」


「「「「は、はあっ!?」」」」


 ボクの何気ない呟きにハル本人を含んだ何人かが驚きの声を上げる。


「あ、アキラどの、何だかすごい発言の様に聞こえたんですが……」


 リシェーラさんはアワアワとやり場のない手を動かしながらボクに言う。


「ハルのマナによって具現化したのなら、ハルの子って事じゃないかなって、勝手に解釈したんだけど……」


「なるほど、たしかに……」

 リシェーラさんは真顔で、自分の口元に寄せた握った右手の人差し指をカプリと咥え呟く。


「は、は、ハルが、お母さん??」

 ハルは訳のわからない事態を突然押しつけられた事に再び混乱をしている。


「なんじゃ、ハル、リンネとはあんなにも仲が良いのに、この者とは仲良くできそうにないのかや?」


「やや、この子の事は何も分からないし、お姉ちゃんになるのと、お母さんになるのとじゃ……違うと思う……」

 ハルは狐鈴の横から、白い少女を覗き込みながら言う。


「それにしても、真っ白できれいですねぇー」

 ウメちゃんは、サラリとした髪の毛をなで微笑む。

 髪の毛はもちろん、眉毛もまつ毛も真っ白な様は、どこか儚さも感じる。


「この子が吸血だけではなく、エナジードレインもできて生きれる子であれば、ウメちゃんの溢れる魔力問題も解決できそうだね」


 ボクが言うとウメちゃんはこちらに振り返り、目をキラキラさせる。


「そう言えば、そうですねぇ。

 コレまで魔力を消化する制作物が多かったり、アキラさんへ譲渡していた事で、すっかり解決したものと思っていましたよぉ」


 ウメちゃんは両手を広げて喜びを見せる。

 

 確かに、ゴーレムや魔石を作ったり、ボクの戦闘だったり、白夜達への供給だったりで、普段からほぼ空になるくらいの魔力を使っている。

 そのため、余った魔力からモンスターが勝手に作られたりしていない。


 これからは冷凍冷蔵室用に魔石を作る必要があるので、暫くは心配ないけれど、安心できる保険はいくらあっても良い。


「それに、流石に今回みたいな大量の血液を消化する必要はないだろうけれど、血抜きの後始末ができるのは助かるよね。

 実はさっきもどうするべきか悩んでいたタイミングで、この子が生まれたから……」


 ボクはルークと向き合い、ウンウンと頷き合う。


「へっちゅんっ!」

 ハルはくしゃみをする。


「ああ、何だか今日も少し長居してしまったようだね、どうもアキラ殿達と一緒にいると時間を忘れるよ。

 ソーニャ殿、これこらも仲間達と末長く、仲良く生活するようにな、困った事があったら、アキラ殿を頼ると良い」


 ゼルファさんはソーニャさん達に向き合い、ひと声かける。


「そうですよ、以前よりは過ごしやすくなるでしょうけれど、それでも不自由な事は変わりないですから……悩んだら、アキラ殿を頼るですよ」


 2人ともボクにアフターケアを託してくる。


「「「「「ありがとうございました」」」」」


 ソーニャさんも、守護霊達も何度も大きく頭を下げて感謝を伝える。


 アルクリットさんは、終始無言ではあったけれど、狐鈴に向かって小さく頭を下げていた。


「それじゃ、アキラ殿またー」


 リシェーラさん達は手を振り、光の粒子を振り撒き消えていく。


「さて、身体も冷えちゃったし、お風呂に入って帰ろうか」


 ボクが言うと、みんな頷く。

 白夜の背に白い少女を乗せると、白夜も白い体だから、一体化している様に見える。


 みんなでゾロゾロと歩いて向かう。

 ルアルの背にソーニャさんを載せようと誘導したら、丁重に断られた。

 久しぶりに自分の足で歩く事ができる嬉しさをしっかり感じたいと、地を踏み締めボク達と一緒する。


「お風呂楽しみですねぇー」

 ルアルの背中には笑顔のウメちゃんが乗っている。


 白夜に乗せた白い少女の長い髪の毛はボクの手で三つ編みにしていて、あどけない表情で眠っている。

 少女の姿だけれど、生まれたばかり、この子の未来が素敵なものになると良いな。


「ハル、ちゃんと面倒見てあげてね」

 ボクは振り返ってソーニャさんの後ろを狐鈴と歩くハルに声をかける。


「う、うん……」

 まだイマイチ現状を飲み込めていないハルは、頭の上に汗を飛ばしながら、ぎこちない返事をする。

お帰りなさいませお疲れ様でした。

 今回は精霊の誕生するお話になりました。

今後この少女はどの様に成長していくのか……

 それでは本日のお話はこの辺りで、また次回のお話でお会いしましょう♪


いつも誤字報告ありがとうございます。

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