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第130話 ハルの想い。(ハル視点)

 ハルは時々ちょっとだけ記憶をなくす前のことを思い出すんだ……。


 ハルが寝ている時も起きている時も、関係なくハルに向かって獣が集まって来る。

 

 

 ……でも、決して遊んでくれるために集まってきているんじゃなかった。


 集まった獣達によって、ハルは骨を噛み砕かれ、お腹を食い破られ内臓を食われる……

 

 痛い痛い痛いっ……


 誰か助けてダレカ……


 痛みと恐怖で頭がいっぱいになる。死んじゃう……。


  ……しかし、神様はハルを殺しはしない。

 こんな怖いこと、痛いこと、苦しいことがずっと続くならいっそのこと死んでしまいたい。


 でも、ハルはどんなにブチブチになっても、メチャメチャになって体の中身が出ても直ぐに戻るんだ……獣達はそんなハルの体を食べにどんどんと集まってくる。


 痛くて怖くて恐くて……体が寒くなると真っ暗になって……


 それからしばらくすると、痛みがなくなって明かりが戻って来る。

 周りを見ると、血溜まりがあちこちにできていて、集まって来ていた獣達だったものが、ぐちゃぐちゃの塊になってあちこちに飛び散っている。


 ハルは手に、さっきまでハルの内臓を貪っていた獣の首を持っていて佇んでいる事に気がつく。


【ハルがコレをやったの??】


 突然の光景が目の前に広がり怖くなって手に持っている首を投げて、自分の肩を抱き寄せる。すると足の力が抜けて、その場にストンッとお尻を落とす。


 そんな出来事が、繰り返される。

 何十回も何百回も……痛い感覚はいつだってハッキリしている。痛さと怖さがずっとずっと続く。

 

 ハルは獣を集める……餌なのかもしれない。

 そういうものだと思う様になる頃にはハルはもう色々諦めていたんだと思う。

 

 そうか、神様は弱いものが狩られ尽くされない様に、ハルを食べさせ……そして減らして行く事を望んでいるのですね……。



 ああーんっ!?

 痛い怖い思いをしたくないならば……喰われる側から……刈る側になれば良いんだ。

 幸い勝手に向こうから寄って来るんだから返り討ちにすればいい。


 そうだ、ハルは死なない、あんな痛い思いはもうしたくないんだ。

 チカラが欲しい、チカラが欲しい。

 ハルを食べに集まったんなら、死んだ後はハルに従わせればいいんだ。


 黒いモヤモヤがハルの躰に巻きついて中へと入って来る。




 目が覚めると狐鈴お姉ちゃんが焚き火に照らさられ薪をを突っついている。ハルが身体を起こした事に気がつくと、微笑みかけてくる。


「なんじゃ、ハルもう起きたのかや? 

 大丈夫じゃ、何も怖くない。ワチがソナタを守ってやるからの。

 ゆっくり眠っているが良い。


 ソナタもリシェーラ達の元に帰るでなく、ワチらを選んだ。なら家族も同然じゃ。

 アキラは何を言うても無茶ばかりするからの、ソナタもアキラを支えてやるが良い。

 ワチは不器用じゃから、ワチの代わりに任せるのじゃ。

 その代わりソナタが体を休める事ができる環境をワチが作ってやるからの」


 狐鈴お姉ちゃんはハルに約束をしてくれたんだ。


 それからぐっすりと眠れている。

 たまに死ぬかと思うほど狐鈴お姉ちゃんにチカラいっぱい抱きつかれて目が覚めるけれど、ひとりで痛い思い、怖い思いをして来た事が嘘の様に、とても暖かい。



 ハルは今ひとりじゃない、皆んなに守られている。


 うん、今だって……。


 いや、違う、このお姉ちゃん達の行動は偽りだ。


 同じところ……同じ神様から生まれているという、本当の兄弟姉妹ではあるんだと思う……。

 それは以前と違って、ゆとりのある状態で言葉を交わしてみて分かった。


 だけど、ハルのために戦ってくれているわけではないのが分かる。


 アキラお姉ちゃん達がハルのために戦ってくれているから、きっと自分達の立場のためだ。


 あの日狐鈴お姉ちゃんに助けを求めていなかったら、ハルはきっと適当な記憶を植え付けられ、何処かに捨てられていたかもと思う。


 そして、ハルがどんな状態であっても、またあの時みたいにひとり、痛さと恐怖に耐えてを繰り返す事になっていたかもしれない。


 危険な魔物を引き寄せて数を減らす……ソレがハルの生まれて来た理由で、神様から与えられた使命だから。

 



 今は今のやるべき事を果たさなきゃ


 自分の頬をピシャピシャと叩く、よくアキラお姉ちゃんがやっている仕草だ。

 頬に、痛みがあるけど、何だかモヤモヤが飛んでいって視界が広がる。


 目の前には双頭の怪鳥が5羽いる。

 大きさ的には、以前倒したサンドウィップの半分くらいの大きさかな?

 ソレでも大きくて見上げる様な位置に頭があるんだけど……



 バッシャンッ!!

 ギャンギャン!!




 木々の枝や葉が邪魔して、下の様子は全く見えないが、小さく音が聞こえる。


 どうやら下でも戦闘が始まったようだ。


 お姉ちゃん、無事でいてね……。


 ハルと狐鈴お姉ちゃんに挑んだアルクリットさんは先程同様に雷を纏って、トライデントを構える。


 リシェーラお姉ちゃんは頭の上に浮かんでいる光の板を1枚引き抜いて、手のひらに乗せるとたくさんの薄い光の板になって、アキラお姉ちゃんの鉄扇の様に広げる。


 ゼルファさんの武器はアルクリットさんの様な武器に見えたけれど、よくよく見ると刃の部分が柄の両側についた矛を手にとっている。


 怪鳥はハル達を中心に取り囲んだ状態で浮上する様に飛んでいる。


 ハルも光の剣を召喚し、5本の剣を浮かし1本を右手で握り、胸の前で立てる様に構える。


 怪鳥達は威嚇する様に双頭の首を前後に動かして「グケエエェェ」と鳴き声をあげる。



「それじゃ、片付けを始めようかっ!」


 ゼルファさんは矛を構えて1羽に突進していき、矛をグルグルと回し切りつける。


 アルクリットさんもゼルファさんの邪魔にならない様に別の個体に向けて飛び出していく。


 リシェーラお姉ちゃんは先ほど光の板を広げた状態のままの手を肩の高さで横薙ぎすると、板が射出され、離れた怪鳥へと撃ち込まれる。


 アキラお姉ちゃんのように切りつける攻撃というよりは、ハルの剣を飛ばして撃ち込む様なものみたい。

 怪鳥の懐まで近づくと光の弓に持ち替えて光の矢を同時に5本射出させ、怪鳥の頭のひとつを貫通させた。

 同じ飛び道具ならこっちの方が威力あるんじゃないかな??

 

 貫通させた頭は力無く項垂れ、もう片方の頭は叫び声を上げる。


 ハルはみんなより少し上の位置から様子を見ながら剣を放っていたのだが、やはりハルを目掛けて集まっていたので注意を惹かれていない2羽がハルの相手となった。実質4羽だよね。


 2羽の間を行き来しながら、互いの首に邪魔をさせつつ剣を振う。

 ハルが攻撃を仕掛けると頭を引っ込めて、もう片方の首が攻撃を仕掛けて来る。

 1羽の攻撃を避けるため距離をとろうとすると、もう1羽が攻撃を仕掛けてくる。

 厄介だ。本当に厄介……。


 こんな時、狐鈴お姉ちゃんならどう戦うだろうか……。

 2羽の動きを警戒しつつ、少し距離を置いて考える。


「まったくハルはダメじゃの、目先の事しか見えておらんではないか」


 あう……。

 記憶の中でもハルは狐鈴お姉ちゃんに注意されている。


「良いか、攻撃をして来るところばかり見ていると、体力と時間だけが消耗するぞ、全体を見るのじゃ、常に動いている部位は放っておいて、止まっている場所こそが重要じゃよ、ハクフウを相手に見せるから、しかとみておくと良いぞ」


 狐鈴お姉ちゃんとハクフウお兄ちゃんが向かい合う。


「ハクフウ参るぞっ」


「今日こそ、一太刀いれるっすよ。ウオォォォーーーーーッ! セイッ! ォラッ!!」

 ハクフウお兄ちゃんは突いたり、薙いだり回転させたりと、縦横無尽に薙刀を振り回す。

 手数も繋げる技も多くて、付け入る隙というものがハルには分からなかった……。


 全体を見る……

 止まっている所がポイント……


 狐鈴お姉ちゃんは、テッテッテッと素早く接近すると、横薙ぎする矛を刀の峰で軽く弾いて軌道を変えてから、滑りこんで躱し間を詰めて、脚を蹴り払う。

 

「うわぁっ!」


 ちょうど体重が乗っていたのだろう、ハクフウお兄ちゃんは簡単にひっくり返る。



「おおーっ」

 目の前であまりに見事にひっくり返る様を見たので思わず拍手した。




 目の前の魔物……。

 止まっているところ……か……。

 攻防の動きの中心になる首は放置、翼、鉤爪……。

 あれ……ひょっとして首の付け根……胴体って止まっている??


 光の剣を召喚し、胴体へと攻撃をする。


「グケエェエッ!!!」


 怪鳥は飛び回っているでもなく、ハルを挟む様にただ浮上した状態で、位置取って、飛び回るハルを首だけで追いかけていたので、突然の攻撃を避けることも出来ずにまともにくらう。


 それは斬撃も同様で、首の素早い動きに対して、体は置いていかれているのがよく分かる。

 なるほど、いつもだと、ついつい動いているものに翻弄させられるけど、狐鈴お姉ちゃんのいう様に全体を見ていると落ち着いて対処ができる。


「りゃーっ!」 

 胴体部分を斬りつけ、斬り上げる。


「グワワヮワーー!!!」


 手傷を負わせた1羽がハルの攻撃に旋回して逃げ出そうとする。

「そうはさせないっ」

 怪鳥が背中を見せたところでハルは手に握る剣を大きくして、振り下ろして首の付け根から左右対象に両断する。


「グギゃーーっ!!」

 両断された怪鳥はそのまま下へと落ちていく。


「お姉ちゃん、胴体が弱点だよっ!!」


 リシェーラお姉ちゃんは難なく、自分の相手していた怪鳥を討伐して、アルクリットさんの加勢に入っていた。


 ハルはもう1羽を同様に斬りつけ相手する。

 

 この鳥、食べられるのかな……。

 持って帰ったら、アキラお姉ちゃん、喜んでくれるかな。


 バクンッ


「うわっとっ!!」

 危うくハルが食べられるところだった。

 怪鳥の攻撃の動きが気持ち早くなった!?


 先程まで怪鳥同士がハルを挟んで向かい合っていたから、互いに邪魔しない様に動いていたのかもしれない。


 それでも、やる事は同じ。胴体を目掛けて攻撃をする。


 クチバシの攻撃が交互にやって来る。

 上から振り下ろされたクチバシを弾き返すため、斬り上げる。


 ガッ!!


 思っていた以上に重くて硬い。

 

「いてて……」


 狐鈴お姉ちゃんだったらもっと上手く弾いていたんだろうな。


【詰めが甘いっ!残心がなってないっ!】


 う、うん、分かってるよお姉ちゃん、すぐに追撃だよね。


 弾いて露わになった首を横に一閃ー。


 怪鳥の首を切り落とす。


 お姉ちゃんからの声は目の前にいるのかと思うくらい、はっきり聞こえた……様に感じる……いや、実際は幻聴なんだけれどね。


 いつもお姉ちゃんから注意されているから、絶対このタイミングで言うんだろうなって身についちゃっている……、とてもよろしくない。

 

 実際……うん、お姉ちゃんの言ってる事は正しかった。ハルは普段から詰めが甘いんだ。


 いつものハルだったら……クチバシを逸らしたところで距離をとっていたかも……。


「グケエェエーーーッ!!!」


 目の前には首が切り離され、血飛沫を浴び、撒き散らしながら叫ぶ怪鳥が、滅茶苦茶に羽ばたいている。


 そして、今も。

 お姉ちゃんだったら、ハルみたいに、首をひとつ落として状況を確認なんてせず、確実にとどめを刺していただろう。


「やあぁぁーっ!」


 タイミングがひとつ遅れて、空中でのたうちまわる怪鳥の残りの首を斬りつける。


 暴れているせいで、チカラが入り筋が堅くなっていて首を斬り落とすには届かない。遅れていなければ、ほぼ同時に首を落とすこともできていたのかもしれない。


「わっぷ……」

 吹き出した怪鳥の血がハルの頭の上から降り注ぐ。


「ハルッ!? 大丈夫!?」


 リシェーラお姉ちゃんがこちらに飛んでくる。

 ハルは血みどろの顔をリシェーラお姉ちゃんに向ける。


「うんっ!」


「っ……ハル……何でそんなに笑顔なの!?」


「え……」


 ハルは笑っていた?

 どうして?

 お姉ちゃんが心配してこっちに来てくれたから?

 戦いが一区切りしたから?

 血に濡れて……とは思いたくない。


 ……ハルはゼルファさんによって大天使のチカラを封じられている。

 だけど、怪鳥2羽を相手にしているハルのところには誰も中々駆けつけてくれなかった……。


 ハルは死なないから?

 何でハルは死なないって知っているの?

 

 ハルはため息をひとつついてお姉ちゃんに言う。


「ううん、大丈夫、ホッとしたからかな? アキラお姉ちゃんにこの子達を美味しく料理してもらえる事を想像したら嬉しくなっちゃった」


「ハル……、みんなの元に戻りましょ」

 リシェーラお姉ちゃんは苦笑いしてハルに言う。

 

 ゼルファお兄さん、アルクリットさんもこちらへと飛んでくる。


「大事ないか?」

 特に表情を変えずにこちらへ来たゼルファお兄さんはハルに言い、ハルは頷く。



 さすがと言うべきか、ハル達が地に足を着く頃には森は静寂さを取り戻し、辺りには煙が上がっていた。


「ハルッ!? だ、大丈夫!? 怪我してるの!?」


 ハル達がアキラお姉ちゃん達の元へと戻って来るなり、駆け寄ってきたアキラお姉ちゃんはハルの両方の肩を鷲掴みにして、視界がおかしくなるくらいガクガクとゆする。


「だ、だだだ、大丈夫、ハルのじゃ……ないから……」



 バッシャーンッ

「「うわぁあーっ」」


 大量の水が頭上からかけられる。

 ハルにまとわりついた血は洗い流され、ハルの髪の毛は顔に張り付く。

 アキラお姉ちゃんは顔に張り付いたハルの前髪を上にかき上げ目が合うと口元を緩める。


「アキラネェさん……ゴメンよぉ……洗い流してあげたくて……」

 ルークさんに謝られる。


「んー、大丈夫だよ、それより、ね……」


 アキラお姉ちゃんは自分もビショビショになっている事を気に求めず、ハルの服の袖を捲ったり、しゃがんで裾を持ち上げたりする。


「アキラお姉ちゃん??」

 ハルの呼びかけに「ふぅー」とひと息ついてアキラお姉ちゃんは膝に手を当て「よっこいせっ」と言いながら立ち上がる。


 向き合い、ハルの肩に手を回したかと思うとグッと引き寄せる。


「お姉ちゃん?」

 アキラお姉ちゃんはハルの背中を、バンバンと軽く叩くと体を引き離し笑う。


「本当に怪我なく戻って来て良かったよ」


 アキラお姉ちゃんの言葉に、ハルは胸が熱くなって、気がついたら涙が出ていた。


「え!? ハル背中痛かったの!? ご、ゴメンねっ」

 アキラお姉ちゃんは驚いた表情で謝ってくる。

 

 ハルはアキラお姉ちゃんの胸に顔を埋めて首を横に振り言う。


「た、ただいま」


「ん。おかえり」

 アキラお姉ちゃんはそっとハルの頭に手を乗せて言う。


 ハルの居場所がずっとここだったら良いのにな……。

お帰りなさいませお疲れ様でした。

ハル視点のお話しでした。

ハルの生まれて来た理由、他の大天使からの扱い。

そして、アキラ達にとってのハル、色んな角度からお届けしました。

それではまた次のお話でお会いしましょう♪

いつも誤字報告ありがとうございます。


 前回お知らせした作品はイラスト活動でのネーム「3と4」でメルカリで出るのかな、日曜まで売れなかったら少し値段を見直しして変更します。

 見るだけでも嬉しいので、よろしくお願いします。

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