第11話 ボクと巫女達の異世界転移!?
こんにちわ。
さて、今回より異世界編が始まります。手探りで、異世界感を出しておりますので若干矛盾していることも多いかと思いますが、ご了承くださいね。
たくさんある名作の中から、たどり着いていただけたことに感謝。
それでは、いってらっしゃいませ。
ーーチリンッーー
小さな鈴の音が微かに聞こえ、暗闇から意識をゆっくりと引き寄せる。
…かと思いきや突如猛烈な異常事態が自分の身体を襲う。
頭が痛い…二日酔いの状態の頭をガクガクと揺さぶられたような痛みがある。
左眼が痛い…痛いというより焼かれたように熱い(焼かれた事はないけれど)。
身体がきしむ…全身運動を無理してやったあとの筋肉痛?痛みで力が入らないし、むしろ動かす気力すら無くなる。
そんな身体中の痛みがボクの意識を無理矢理に現実へとたぐり寄せた。
手は動くようで、痛む左眼にそっと当て、ゆっくり右眼を開ける。そこには雲ひとつ無く濃く深い青空が広がっていた。
あれ….?意識が遠のく前の最後の記憶は確か夜だったハズなのに…。外で一夜明かしてしまったのか?そもそもボクはどうして意識を失う事になったんだっけ?
思い出そうとすると頭痛が襲いかかる。身体は痛みと脱力で起こせないけれど首はゆっくりなら動かせた。自分でもびっくりするくらい冷静で、今の状況をとりあえず確認しようと首を横に動かす。
が、よく分からない。
真っ直ぐ長く伸びた草が顔の前で視界を遮る。
唯一動かせる手で草をかき分けても、その先には草が更に続いている。
いったん整理しよう。
めちゃくちゃ天気の良い昼間、何故か身体中に痛みを抱えたボクは草っ原なのか、植え込みなのかの中でひっくり返っているワケか…
……うん、よく分からん。
風がそよそよと顔を撫でる。
天気も良いし、身体動かないし、どうでもいい、このままもうひと眠りでも良いか…と既に謎の現況からの逃避をするべく再び眼を閉じた。
自分の顔に影がかかる。
薄くまぶたを開けるも影で相手が分からない。
しゃがみ込んでボクの顔を左側から覗き込んでいる事はなんとなく分かった。
「おぉ、そなたもおったかぁ」
そなた…?
「あぁ、アキラよぉ、起きれるかゃ?」
ゆったりとした、女性の声が聞こえる。
「ぅう……ム…リ…」
ノドの渇きで奥に刺す様な痛みがあり、やっとの思いで絞り出したかすれた声で伝える。
「んぅ〜…まいったのぅ…どれ、起きれる様に痛みを和らげてやるから、力を抜いてそのままにしておれょ」
ボクは全てを委ね眼を閉じる。
声の主はボクの額とみぞおちの辺りに手の平を乗せる。
冷んやりとして心地よい感触だった。
手の平が段々と暖かくなり、頭痛も左眼の痛みも身体の痛みも、じんわりと溶けていくように、感じられた。
時間でいうと、きっと2.3分程度の事だと思う。
スッと離した手を、首の後ろへと滑り込ませ、肩にまわし引き上げ体を起こす。
「どうじゃ?」
少し前かがみの状態まで体を起こしてくれたので、ゆっくりと眼を開け自分の手の平を見ようとするが、そこで違和感が起きる。
左眼の痛みは無くなったのに、視界がモヤがかっていてハッキリと見えない。右眼はハッキリと見える。それぞれ片目で交互に確かめていると隣から声がかけられる。
「すまぬ、ワチにはこれが限界だ…」
ハッとして声の主に顔ごと目をやると、そこには巫女服に身を包んだひとりの少女がいた。
肩まで伸び外跳ねした透き通るようなハチミツ色の髪、頭の上には大きな獣耳、真っ白な肌、そして何でも見通してしまうのではないかと思える、少し鋭い大きなルビーの様な紅の瞳
ボクはこの少女を知っている。
地図からも姿を消した廃村。
そんな土地を守っていた神社。
手入れをする村人を失い、荒れに荒れた廃神社。
欠けた鳥居に腰をかけ、寂しげで儚げな表情でただ1人、かつて村だった場所を見つめていた少女。
…少女?、いや、人ではない存在。
…見える人には見える存在…感じる人には感じる存在。
あぁ、狐鈴ちゃんか…。
そんな彼女の存在感が大きすぎて、すっかりと忘れていた現況確認、右を見ても左を見ても青々と伸びた草が遥か彼方まで広がっている。
「和穂、ほれ」
ボクの傍らに落ちていた刃をひょいと拾い上げ、もう1人の巫女へと差し渡す。
ボブカットの少女は受け取ると腰もとの鞘へと収める。
和穂と呼ばれた少女はボクより少し背が高いくらいかな、出るところは出るスラリとした少女だった。
こちらも、狐鈴ちゃんと同じように、整った顔立ちに透き通る様な白い肌。
そして、黒い瞳。
肩にスリットの入った巫女服を纏っている。
でもこんな美少女に見覚えがない。
むしろ、こんな美少女なら忘れるわけがないハズだ。
「!?」
「あぁ、アキラは紹介もせずに対面していたわけだったな」
ボクはコクコク頷く。
「こやつは、ワチと同じくあの村の土地神…あの村を離れてしまったから、もう土地神ではないのぅ…"黒狐"で"妖狐"の和穂じゃ。
ワチが"阿"で、和穂が"吽"にあたる存在じゃな、和穂は無口だけど、悪い奴ではない」
和穂さんはペコリと頭を下げて、白い塊を手にボクを挟んで狐鈴ちゃんの反対側へと腰を降ろし、そっとボクの手を握る。
「美味しかった……」
透き通った声で一言、ボクの眼をジッと見つめ頬を染める。
尻尾を、パタパタと振っている。
「稲荷寿司のことじゃの」
あぁー…納得。
白い塊がバタバタと暴れる。よくよく見るとそれは白い鴉だった。
「なんじゃ?和穂、そいつを食うのか?」
「「!?」」
「ーーッ!!」
更にバタバタともがく。
「名前を…」
鴉を指差しこちらに呟く。
ボクはこの鴉の事を知らないけれど、脳裏に浮んだ言葉が口から出た。
「ク…ラ…マ…。」
暴れていた白い鴉が大人しくなった。
「和穂よ、ここはどこじゃ?ワチにはぜんぜんわからぬ」
和穂さんもしばらく周りを眺め、瞳を閉じ首を振る。
「カラスよ…いゃ、クラマよソナタは知っておるんじゃろ?はよぅ元の場所に戻さんか」
白い鴉は首を左右に傾げ甲高い声で言う。
「ムゥリ、妖力が足りない」
どうやら、白い鴉は鴉天狗の成れの果ての様だ。
ボク達は鴉天狗であった、この白い鴉の力でここへと飛ばされて来たようだ。
に、してもここはどこなんだろう…
ガサガサッとすぐ近くの草の音に驚き、隣にいる狐鈴ちゃんに思わず抱きつく。
ウサギ…??
いや、違う…でも角と翼を生やした水色のウサギ?がこちらに向かってくる…。
いやぁ、かわいいなぁ…。
…
ん……
…………
マテマテマテ…思っていたより遠くにいたよ。
ドスンッ ドスンッ ドスンッ
うゎ、でかい、でかい、でかいってーっ!
その1mくらいあるウサギ?はボク等を飛び超えそのまま飛んでいった…
ケラケラと狐鈴ちゃんが笑う
「ありゃなんじゃ?ビックリしたのぉ」
本当にここどこー。
ボク達は「最後の日」と「始まりの日」を迎えたのだった…。
お帰りなさいませ。お疲れ様でした。
転移されたのは、巫女達2人になんと、ついさっきまで敵対していた鴉天狗。
次回は現状況の整理の回とさせて頂きたく思います。
最後になりますが、誤字脱字をしてくださる方に改めて感謝します。
まだまだ、始まったばかりの物語ではございますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
それでは、また次回お会いしましょう。




