第1話 ボクというひと。
初めて物語りを書かせていただきます。
見切り発車の作品です。
誤字脱字や、改行の仕方、テンポや間の取り方、ニュアンスなど、ど素人で申し訳ないです。
色々ご意見などいただけると幸いに思います。
今回は転移する前のさわりの物語りとして書かせていただきました。楽しんでいただけると嬉しいです。
それではいってらっしゃいませ!
真夏も真夏、外はめまいがするほどの暑さとセミの賑やかな大合唱。
時刻は陽が最も高く昇った昼過ぎ。
外を歩く人影は少なく、表を元気に走り回っているのは、夏休みを楽しんでいる子供達くらいだろう。
「はい、それでは……250円のお釣りになります。 ありがとうございました」
ひとつ礼をして、レジを閉める。
「店内が涼しいから、外に出たくねぇなぁ……」
商品の入ったビニール袋を右手に、目の前にいた中年の男性が出入り口に向かう。
男性が開いたガラス扉の隙間から、真夏の熱気が店内に入り込んでくる。
うわ……あっついな……
客が外に出ると、ゆっくりとガラスの扉が閉まり、外の熱気と共に店内に流れ込んできたセミの鳴き声も遮られる。
「本当悪いねぇ、突然お願いする形になっちゃって。 佐藤さん夏風邪をひいて、急遽休みになっちゃってねぇ……子供が小さい人は夏休みの子供の相手をしないとならないって、休みの希望や、勤務時間の短縮を希望する人が多くてさ、頼める人が限られちゃうんだよ」
品出しをしていた、小柄で気の弱そうな白髪混じりの店長が、手を止めてこちらへと声をかけてくる。
「いえ、休みでも家にいるだけですから……それに、この時期は仕事に出てるくらいの方が気が紛れるんです……」
「確かに、今年の夏の暑さは異常だよねぇ」
店長は立ち上がり、窓ガラスから表の方を見ながら言って、ひとつ伸びをすると、再び品出し作業へと戻る。
んと……ボクが紛れると言ったのは、別に暑さというわけではないのだが、まぁいいか……。
そんな事を思っていると、店長と自分だけしかいないはずの店内に来客を知らせるチャイムが鳴る。
しかし、ガラス扉は開いてはいない……。
……が、ボクの目の前、手の届く位置にセーラー服を着た1人の少女が立っており、特に声をかけてくるでもなく、無表情で、ただジッとボクの方を見ている。
「あれ? アキラちゃん、今誰か入ってきた?」
立ち上がった店長は辺りをキョロキョロ見回す。
「いえ、セミでもセンサーを遮ったんじゃないですか?」
視線を店長へとむけ、曖昧な返事をする。
セミなんて店内に入ってきていないのでセンサーが反応するわけない。
「えーそうなの? 店内にセミが入ると、飛び回ってなかなか捕まえることできないし、出て行かないんだよねぇ、ちょっと見つけたら対処できるように、虫取り網とってくるね」
頭をかきながら、店長は虫取り網を取りに、バックヤードへと姿を消す。
ボクは目の前に立っている少女を知っている。
先週の木曜日の夕方、店の前で車に当てられた少女だ。
ボクは直接見てはいないけれど、店長がその時の様子を話していた。
……そう、ダメだったの……。
亡くなった魂は、一度原因の場所へ返ってくる。
なかには、自分がまだ生きていると、死んだことを認識しないまま、彷徨っていたり、どうして自分だったのかと未練を残して土地に縛られて、地縛霊となる場合もある。
この少女は、きっと気がついたのだろう、ボクが見える人間だということを……。
その現場に縛られる事なく、目の前立っている。 ボクならきっと何かできるのではないかと思って近くに来たのだろう。
ボクは、最近肌身離さず持ち歩いている水晶の数珠を、ポケットより取り出して少女の肩に触れて祈る。
『この娘が安らかに眠れますよう、そして新たな生へと巡り合いますように』 と……。
すると、無表情のままボクを見つめていた少女は、ボロボロと涙を流す。
無念でならないという少女の感情がボクの体の中に入って、本人は光を散らしスッと消えていく……。
「さよなら……」
「なんで、いつまでも暑いんだよ……」
店長に奢ってもらった、カキ氷の棒アイスをかじりながら、極力影の落ちている道を通り自宅のアパートへ向かう。
日向はバイトの時間以外引きこもりのボクにっとって、身を焼く……は大げさかもしれないけど、気の遠くなる程の暑さに感じる。
そんなボクへの助け舟……って事ではないのだろうけれど、足下に付き纏う3匹の白猫、体は透けていてほんのり涼しい。
「おーぃ、どこまでついてくるんだー?」
足を止めてしゃがみ、1匹の眉間の辺りを食べ終えたアイスの棒でペチペチする。
「なーぉ」
嫌がるでもなく、受け入れているような様子。
他の2匹もアイスの棒に興味を示し、顔を寄せ鼻先でフンフンしてくる。
「はぁ……」
ポケットから再び数珠を取り出し、そのまま頭を撫でてやると、光を散らし目の前からスーッと昇り消えてゆく。
「兄弟だったのかね……」
何でもない独り言を呟き、立ち上がって家の方向へと向くと、目の前に今度は黒いダウンジャケットに赤いマフラーといった、見てるだけで暑苦しく、汗がふき出てきそうな格好をした人物が立っていた。
肩まで伸ばしたロン毛金髪の青年が、生気を宿さない虚ろな目でボクを見つめている。
ボクとしては苦手なタイプ、できれば関わりあいたくないヤンチャそうなタイプの人間(?)だ。
少しの時間でも見ていたくない格好を目の前にしていたため、「うへぇ……」思わず言葉がもれる。
ボクは顔を引きつらせてゆっくり2歩後退する。
「いぇ、呼んでませんし間に合っていますので……」
青年はボクを指差し、「…………」ボソボソと何かを呟いている。
うぁ……相手にしたくない、本当に相手したくない。
『えっと……、何も見てない。 何も見えてないから』
そう自分に言い聞かせて、何事もなかったように歩き出し、隣りを通る。
「……ちょ……」
青年の伸ばした左手がボクの右胸の付近をかすめるようにすり抜ける。
胸のあたりにヒヤッと冷気が通る……この鬱陶しいくらいの暑さの中で急に体を通り抜ける冷気は正直びっくりさせられた。
「……っ!?」
あまりに突然の出来事だったので、振り返りざまに握った拳をダウンジャケットの溝落ち付近に叩き込んでいた。
「あ、……ごめ……」
握り締めたボクの手の中に先程ネコの頭を撫でてやった時使用していた数珠が収まっていた。
青年は溝落ちあたりに風穴を開け、そのまま風を当てられた煙のように消えていった。
「……はぁ……」
なんとも言えないため息をつき再び帰路へつく。
ボクの住んでいるアパートは、ボクよりいくつも大先輩で築40年。 部屋は鉄でできた、錆びた外階段を上がって2階、裏手の通路の突き当たり角部屋だ。
ん……?
勘違いしていません? これまでの出来事が特殊というか、日常茶飯事の出来事ではあるのだけれど、ボクの住んでいる部屋は、別に訳あり住宅ではないよ。 正規の家賃の部屋だから。
うん……。
過去には何もないですょ。過去には……。
今は時々透けている何かが来訪してくるケレド……。
階段を上がりきって、ふと気がつく。
ボクの部屋の玄関の前に誰かいる。 透けてはいない人間が….…。
今の季節に相応しい、涼しげな格好をした、ツンツン頭の爽やかな青年が、ボクの部屋の前で足を投げ出して玄関を背に座り込み、スマホをいじっている。
「リク……?」
ボクのかけた声に反応して、顔を上げたその青年は無邪気な子供の様に微笑み、すぐに反応する。
「アキねぇっ」
その青年はいじっていたスマホをズボンのポケットに放り込み、立ち上がる。
「おー、りく、また背が伸びたんでないかい?」
彼は【島田 陸】私の2こ下で現在大学1年のいとこだ。
「アキねぇ、3年も会ってないんだから、そりゃ成長もするでしょ、まだまだ伸びるからね」
青年はボクに笑いながら話しかける。
「あはは……そんなに経ったっけ……」
ボクは苦笑いで返事をする。
「そういや、全然実家に連絡よこさないって、皐月おばさんプリプリしてたよ」
リクの言う【皐月】とはボクの母だ。
「ボク、電磁波が苦手なんだょ……」
「……いゃ、ゴメン、アキねぇ……言ってることがよく解らないから……」
ちなみに、さっきから彼が言っている、アキねぇってボクの事。 昔から彼は変わらずボクの事をこう呼んでいる。
ボクの名前は【旭】名前は男っぽいけれど性別は女だ。
自分の事をボクって言っているのは、名前に対する反発というか、昔からそうなのでいつから使っていたかも覚えていないし、今更変える気もない。 改めたところで違和感でしかない。
身長156cm、O型。高校を卒業して家を出てフリーター兼自宅警備員をやっている。
引きこもりではあるけれど、ニートではないょ、仕事してるし。
ちょっと外の【刺激】が強くて、家にいる事が多いだけだ。
実は、ボクの実家の近くには霊道というものが通っているらしく、小さい頃からボクには人でない者の姿が、普通に見えていた。
知ってか、知らずか、その人ではない者は度々ボクにちょっかいを掛けてくるので本当に困っていたし、近所の人はそんなボクの事を『変な人』として見ていた。
近所の目から逃げる様に、いつの日からか外出を避ける様になっていた。
高校の卒業を機に家を出て、静かな地でボクなりに充実した生活している。そんな生活も3年目になった。
「そんなりくは、こんなところに何しに来たのさ?」
ボクの問いかけに思ってもいない返事が返ってきた。
お帰りなさいませ、お疲れ様です。
素人なりに書いては消してを繰り返して、皆さんに楽しんでもらえる作品として育ててあげられたらと思います。
読んで下さった皆様には、作品と共に、右も左も分からない自分も気長に育てて下さると嬉しく思います。
それでは、みなさんまたお会いしましょう。