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ゴキブリだっていいじゃない

天井からの白い光をぼやけた意識が認識する。


(起きなければ、、、)


うつ伏せの状態で男はそう思った。ただ起きなければ遅刻するという曖昧な思気持ちが彼の中にはうっすらとあったのだ。


(しかし、今起きたとして俺はどこにいけばいいのだろうか?)


男はまだ半分は寝ている状態なのかイマイチ思考が働かない状態であった。


(そういえば、なぜ俺は床の上でうつ伏せになりながら寝ているのだろうか、、、昨日の事が全く思い出せない、、、)


男はそんなことを思いながら起き上がるために手に力を入れて上体を起こそうとする。



 カサッ 


(!!!!!??????)


起きあがろうとした瞬間にどこかで聞いたような音に男は反射的にビクついた。それと同時に強烈な不快感と背筋が凍るほどの寒気に襲われ驚いて目を見開いた。


(うっ!?視界がぶれて気持ち悪い、、、)


しばらく、男はぼやけて揺れる視野によって強烈な吐き気に襲われたが、それも2〜3分ほどのものであった。


落ち着きを取り戻してきたのも束の間、目を開けた男に映し出された光景は今まで見てきた世界とは似て非なるものであった。



それは、床に転がる空のペットボトルであったり、食べかけのビスケット、脱ぎ捨てられたスーツであったりと一見、普通の光景かと思われる日常の一片、、、


しかし、ここで大きく異なることがあった。文字通り、全てのものが大きいのである。見るもの全てが巨大であり天井から壁、床といった場所はもちろんのこと電灯、机、家電製品といった全てのものが巨大化していた。


あまりの現実離れした光景に男は脳裏でこれは夢なのではないかと疑う。そして、考えをそのまま口で呟こうとした。



「ギギギギィィギィ、、、?(翻訳:これは夢か、、、?)」


 !?


(な、なにー!? 声が出ん!いや、一応出ているんだけど『ギィ』しか喋れてない!)


(いや、いったん落ち着けー俺、、、今のは寝ぼけて出た寝言のようなものであり決して不思議なことではない!もう一度、声を出してみるとしよう、、、)


「ギィギギィギィ(翻訳:おはよう)」


!!??


(おいおい、これは一体全体何の冗談だ?話せん!やはり夢?夢なのか? ちょっと、ベタではあるが夢の中ならば快感を感じないと聞いたことがある。自分の乳首を摘んで感じなければこれは夢だ!)


男はそうして自分の乳首を摘もうと自身の手を伸ばそうとした時だった。男の目に黒く光沢のある逞しい前脚が現れた。


「ギィーーーーーーーー(翻訳:ギャーーーーーーーー)」


「ギィギ ギィギィギィ、、、(翻訳:俺の腕が、、、)



(きめーー!てか、怖いわ!もうこれ夢確定だわ!

 なんこれ!俺の手もう虫の脚じゃん!)


(あと、今更だけど、どう考えても視界がおかしいわ!前見てるのに左右も見えるし、、、)




(この感じだと俺は夢の中で違う生物になってしまったようだ。しかし、俺は一体どのような生物になったのだろうか?)


至極当然の疑問を持った男は自信の体を観察してみることにした。まずうつ伏せ状態から自分の腹部を見てみることした。

なんとなく自分が何かの虫になっていることは分かっていたが説明出来ない謎の恐怖心から恐る恐る首を下に傾けて覗き見る。


!!?


「ギィ(翻訳:あっ)」


男は自身の腹部を見た瞬間、体が宙に浮くような感覚とともに意識が途切れその場で気絶してしまう。


男が見たのは茶黒く光沢のある無数の毛が生えた足6本とヒクヒクと動くキュートな虫の腹、、、それは人ならば人生のうちで一度は見たことがあるゴキブリの裏側そのものであった。



—————————


それから数分後に男は目を覚まし気づくこととなるが、これは夢ではなく現実の出来事であり男は世界中の嫌われ者であるゴキブリへと転生したのである。


これは、そんな男が最強のスキルを獲得しつつ人としての尊厳を失いながらオワコン気味の日本を救う物語である。


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