表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーフォレスト  作者: しんた☆
13/34

第5章 王宮に潜む者 3

外は日が暮れ始めている。王宮ではトンプソンを囲んで糾弾が続いていた。


「陛下、私がこの国から出て行ったら、王妃様はどうなるのですか? なんとかしてお助けしたいと手を尽くして調べていると言うのに…」

「ではあくまでも他国と繋がっていないと言うのか?」


 トンプソンは、情けないと言わんばかりに肩を落とした。


「どうして私が他国などと手を組むのです。私はレイクランドの首相ですよ」


 ジェームスはベルを鳴らして護衛を呼んだ。


「失礼いたします」


 謁見の間に連れてこられたのは、一人の兵士だった。鎧を外されひょろりとした細い兵士は不安げな様子だ。


「トンプソン様、助けてください!」

「はぁ?お前は誰だ? 陛下、私はマウンティの者に知り合いなどいないと言っているでしょう」


 連れてきたのはレオだった。レオは国王の前に一歩踏み出すと、一礼して答えた。


「陛下の指示に従い、どこの国の人間か分からないように鎧を外させたのですが、どうしてマウンティの兵士だと分かったのでしょう」

「うぐぐ」


 トンプソンは歯ぎしりして悔しがった。その時、護衛から声がかかった。


「騎士団長がお見えです。」


 扉が開いて、入ってきたマックスの姿に、その場にいた一同が息を飲んだ。その脇腹は赤く染まり、手には意識を失ったルナを抱えている。その姿を見て目を見開いたトンプソンがいた。


「トンプソン首相。ルナに掛けた魔術を解いていただきたい。」

「ふん、小娘め。失敗したのか。私がこやつの術を解くいわれはないな。私の術を消したいなら、この命を奪うしかない。しかし、そうすると王妃の病も治らない。さて、どうするかな」


 開き直って笑い声さえ上げているトンプソンに、その場の空気が張り詰めた。その時、マックスの腕の中にいたルナが突然飛び出した。すばやく護衛の帯剣を抜き取り、マックスとの間合いを詰める。


「ルナ! しっかりしろ。俺だ、マックスだ。」

「うう、ま、マックス…。ぶはははは。バカめ。自分から国王の近くに運んでくるとは、とんだ大バカ者だな」


 ルナの声は途中から男のそれになり、その瞳もまた茶色に濁っている。そのまま剣を振りかざして国王に迫るルナをマックスが体当たりで吹き飛ばす。


「ルナ!目を覚ませ!そんな悪党になど、自分の体を明け渡すな!」

「ふふ、無駄だよ。さあ、お前の実力を見せてやれ」


 マックスが叫ぶさまを楽し気に見ながら、トンプソンはルナの背後に回った。その時突然、ルナが頭を抱えて苦しみだした。そして、ふらふらとよろけていた足がぴたっと止まる。苦し気に肩で息をしながら足を踏ん張りさっと向きを変えると、手に持っていたナイフをすぐ後ろに控えていたトンプソンの胸に突き立てた。


「クッソー!ふざけやがって! 中のおっさんもお前もまとめて地獄に落ちろ!」

「ルイか…」


その場にいて状況が分かったのは、マックスだけだ。返り血を浴びたフリルのブラウスが生々しい。


「な、何をする。私を殺すことは、王妃を殺すことになるのだ、ぞ…」


 そのまま力を失い、トンプソンは床に転がった。その途端、ふらついていたルイの足取りはしっかりしたものになった。


「ふう。ごめん。こうするしかなかったんだ。ああ、陛下!御前にありながら、申し訳ございません」


 肩で息をしながらマックスに言うと、国王がいることに気が付いて慌てて膝をつき、謝った。国王は驚いてはいたが、咎める様子はない。ルイに頷いて見せると、近くの護衛達に亡骸を片付けさせた。


「大丈夫だ。お前がやらなかったら俺がやっていた。ルイ、今、お前の中にあの男はいるか?」

「いや、トンプソンと一緒に死んだみたいだ」

「団長、今、止血を! あの、申し上げにくいのですが、トンプソンがいなくなった今、王妃のご病気を治せる者がいなくなってしまったのでは?」


 レオが心苦しい様子で声を掛けた。


「そのことなんだけど、まだ手があると思うんだ。ねえ、マックス」

「ああ、俺もそれを考えていた。それに、もともとトンプソンには王妃のご病気を治す気などなかった。しばらく探っていたが、マウンティ以外の国には連絡を取っている様子もなかった。それなら、少しでも可能性のあることをやるべきだろう」


 子守歌に掛けてみる。ルイの考えは、マックスにも届いていた。その時、セオが割って入った。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。まず、ルナのこの状態は何なんだ? いつもの可愛いルナとはずいぶん印象が違うじゃないか」

「ああ、おやっさん、ごめんな。実はオレ、夜になると男になる体質なんだ。ルナの記憶はあるけど、人格は別物みたいだ。もうだいぶ前からなんだけどね。まあ朝には元に戻ってるから気にしないで。それと、これは別の話なんだけど、マックスの故郷のブルーフォレストに伝わる子守歌があってね…」


 ゴホン、と咳払いが聞こえ、辺りは静かになった。


「お前たち、私を置いてきぼりにしないでくれ。ルイとやら、もう一度、説明を」


 ルイはマックスと自分に係る子守歌の話を明かした。


「普通の医者に直せない病気なら、逆に効果があるんじゃないかと思うんです」

「しかし、夜には男になってしまうのだろう?」


 戸惑いながらも考え込んでいたジェームスが言うと、それにはマックスが答えた。


「いや、大丈夫です。あの子守歌では男か女かで区別していません。次のブルームーンは3日後ですし、陛下がお許しくださるなら、やってみる価値はあるでしょう」

「そうか、ではぜひ試してくれ。トンプソンがしたことで王妃の状態がよくなったことなどないんだ。なんでも試したい」


 ジェームスの一声で、3日後の実行が決まった。


読んでくださってありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ