田口にこがもう一度生き返るまで
初めまして。露梨たたらと言います。
生まれてから20年、初めて小説を書きました。こんなのあったら読みたいなを詰めたのでごちゃごちゃしています。
不慣れですが、いい感じに続けられたらいいなと思います。
私、田口にこは2週間前まで生きていた。
死んだ時のことはつい五分前のことのように思い出せる。あれは、真昼の往来のど真ん中での出来事だった。
田舎から都会に出て、専門学校に通いながらアルバイトを探して、忙しい中居酒屋の面接を何件か受けて全部落ちた。その理由が、「君の直後に来た子の方が可愛かったからさぁ」だそうだ。確かに私は可愛くはないし、化粧は濃いし田舎者だから言葉遣いも汚い。だからってあんまりじゃないか。そんな悩みをウインドウショッピングの最中に友達に相談したところ、「ごめんねぇ、私がにこちゃんの直後に行ったから落ちちゃったんだねぇ」と言われた。
……お前か、秋月沙綾。
こいつはいつだって私の邪魔ばかりする。
というか、言わなきゃいいのに余計なことを言って私の気分を害するのだ。
「でもにこちゃんみたいな子がぁ、お客さんと接してもぉ、怖がらせちゃうだけだからぁ、バイトなんかやめた方がいいよぉ」
ほら、こんなことを言うやつが可愛いわけないだろ。
顔は可愛くても頭と性格が悪い。
私が神様だったら、こんなやつに可愛い顔なんて与えなかった。神様って無能なんじゃなかろうかと思ったところで、耳を刺すような悲鳴が聞こえた。
こんなオシャレな街中でなんの事件かと悲鳴の聞こえた方角を見遣れば、なるほど、不審者が刃物を振り回していたのだった。わかりやすい事件だ。悲鳴はその不審者の足元にうずくまっている女性があげているようで、腕から血が流れているのが見える。うわ、痛そう。
なるべく関わらないように、建物の中に退避しようと沙綾に提案したところ、沙綾はとっくに私の隣なんかにはいなかった。
なんと、5メートルほどずかずか偉そうに歩いたかと思えば、その不審者に食ってかかっていったのだった。
「もうこんなこと、やめましょう!お姉さんは怪我をしています!人を痛い目にあわせて楽しいんですか!?」
なんてやつだ。あいつは馬鹿なのか。
案の定不審者が逆上したかと思えば、そのまま沙綾を追いかける。包丁をふりかぶる不審者に怯えた沙綾がこちらに駆け寄ってくるが、そういうのは本当にやめてほしい。また私のことを巻き込むつもりに違いないんだ。痛いだろうな、多分腕を切られるんだ。逃げよう。
本当に関わりたくないので建物側に避けようとしたが、沙綾にワンピースの腰に巻いたベルトを掴まれて、ものすごい力で歩道に引き戻された。
「え、」
いや、引き戻すとかいうレベルではない。華奢な見た目からは想像もつかないほどの怪力で引っ張られた私は、そのまま不審者の方に吹き飛ばされ、あっという間に包丁の餌食となったのだった。
話が違う。脇腹に深く食いこんだ包丁を見て、真っ先に出たのはそんな感想だった。
腕を切られる程度で済んでないじゃないか!
内臓の良くないところをやられたのだろう。うまく説明出来ないが、死んだなと思った。気持ち悪い痛みというのは生まれてから19年間感じたことがなく、呼吸が飛ぶ。
「にこちゃん!!」
にこちゃんじゃねぇよ。
それが、私の最期の言葉となった。
どこか遠くにサイレンが聞こえて、犯人らしき男が離せと叫んでいるのを考えると、犯人だけは捕まったらしい。
「にこちゃんは私の身代わりに……!お願いします!その人に罪を償わせてください!」
……是非あの女も逮捕してほしいところだ。