見ているだけの簡単なお仕事です

『見ているだけの簡単なお仕事です』

　そんな文句につられて、応募した自分を俺は呪っていた。

　仕事としては本当に簡単だ。何もせずに見ているだけ。

　求人広告には嘘偽り無い。

　前にやっていたキツいバイトを辞めて、少しでも楽なものをと探していただけだったんだ。だから、条件をよく確認することもしなかった。

　簡単、なんていう言葉につられてしまった。

　ああ、なんできちんと確認しなかったのか！　あのときの俺！

　今日も、俺は地上を見守る。

　ただ、見ているだけ。

　本当に簡単なお仕事。

　人が生まれても、人が死んでも、喜んでいる人がいても、苦しんでいる人がいても、悲しんでいる人がいても、助けたい人がいても、何も出来ない。

　神頼みなんて、意味が無い。

　それを今の俺はよく知っている。

　神様は本当に見ているだけ。

　だって、人間がいるところは遠すぎて手が届かないから。

　でも、大切だから見守るんだ。

　バイトに任せるのはどうかと思うけど。

　確かに長期バイトとは書いてあった気がするけど、こんなに長くなるなんて思いもしなかった。

　俺を知っている人は、もう地上にはいない。

　というか、このバイトを始めてから地上には一度も戻れていない。

　確かに、求人広告にも書いてあった。

　待遇がいいことに対しての冗談みたいなものだと思っていたんだけど。

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