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第一章 8

「どうだかな」


 呆れたように言うレンを無視して、璃兵衛は人形に目を向ける。


「エジプトのミイラは遺体から臓器を取り出して処理をする。それはミイラがこの世に蘇った時のために、身体を保存しておく必要があるからだ」

「そうだ。取り出された臓器は処理をされた後、それぞれ壺に入れられてミイラと共に大切に埋葬される」


 臓器をおさめる壺はカノプス壺と呼ばれ、4つのカノプス壺に胃・腸・肺・肝臓がおさめられ、ミイラと共に埋葬される。


「しかし、それはそうした考えが浸透しているエジプトでの話だ。日本では死体が蘇ることはまずない。死体が蘇ることがあれば、それは故人とは別の何かと考えられる」


 かつて日本には死者のよみがえりを防ぐための埋葬法があった他、人間の死体に別の何者かの霊がとりつく死人憑き(しびとつき)という妖怪・怪異もある。


 それは生者が死者のよみがえりを恐れていたことや、よみがえった死体は生前の者とは別のなにかであると考えていたことにつながる。


(歓迎されなかったという点については、俺と似ているか)


 そんなことを考えてながら璃兵衛が少し指先に力を入れると、作り物の臓器はカコンと音を立てて人形から外れた。


「信じているものが何だろうが、要するにそれをするのは理由があるからだ」

「理由……」

「対価や代償と同じだ。物事には大抵理由がある。理由があるから、それが起きる……店に持ち込まれた物も、それがある時におかしなことが起きたから”いわくつき”と言われる」


 本物よりも小さく作られた心臓は小さいながらも精密に作られていて、璃兵衛の掌の上をころりと転がったかと思うと、やがて真ん中あたりで止まった。


「そうすると、わざわざ死んだ人間の腹の中を空っぽにする理由は何なんだろうな」


 傷ひとつない璃兵衛の手の上にある心臓の模型は、白い皿に捧げられた神への供物のように見えた。

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