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第一章 6

「ふっ、そうか、鬼か……俺が噂をつくるまでもなく、そう言われてるのか、お前は。ふふ……」


 着物の袖で口元を隠しながら笑う璃兵衛を少女は不思議そうな顔で見ていた。その顔は年頃の子どもらしい幼さと愛らしさがあった。


「笑いたいなら笑えばどうだ」

「いや、やめておこう。苦しくなっても困る。それに今はお前の噂を笑っている時ではないだろう」


 レンににらまれて璃兵衛は改めて少女に問いかけた。


「……それで、お嬢さんはどんな用でここへ?」


 そうたずねる璃兵衛の顔に先程までの笑いはない。

 そこにあるのは祝久屋蓬莱堂の店主の顔だった。


「この店がどんなものを扱っているか知った上で、ここに来たのか?」

「うん……ちゃんと知ってる。そやから、これ持ってきてん」


 レンの問いかけにうなずいた少女は胸元から赤い櫛を取り出すと、璃兵衛と差し出した。


 璃兵衛が手に取った櫛は高価なものではなく、庶民の間によく出回っているつげでできたもので、赤い花模様がいびつに咲いている。


「どうして蓬莱堂に?」

「……うちは、茜。ここに来たんは、からっぽになったお母ちゃんを、ちゃんとあの世に送ってもらいたいから」

「からっぽというのはどういうことだ?」

「お母ちゃんは、ひと月前に病で死んだ……お父ちゃんは最初からおらんかった……」


 茜は小さな手をぎゅっと胸元で握ると、言葉を続けた。


「せやから悲しかったけど、うちがお母ちゃんを送ったげなって。ほんで、親切な坊さんに供養してもらえるようになって……けどな、うち、見たんや」

「お前は何を見たんだ?」

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