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第四章 4
「あの、すみません……この品物を見てもらいたいんやけど……」
「客が来たぞ。早くしろ、璃兵衛」
レンが普段の中で璃兵衛の名前を呼ぶことはなかったため、一瞬璃兵衛は何を言われたのかわからなかった。
「お前、今名前を呼んだのか?」
「ああ、呼んだが」
しかし何も客が来たというところで、わざわざ名前を呼ぶことはないだろう。
そんな気持ちを込めて璃兵衛はレンに視線を向けた。
「……性格が悪いんじゃないのか、レン」
璃兵衛からの視線を受けたレンはにやりと笑うと、こう告げた。
「どこぞの青い目の店主いわく、言葉を覚えるのはそれだけそこに馴染んでいるから、らしい。なら、性格の悪い店主といれば、性格が似てもなにも不思議はないんじゃないのか」
「なるほど……それは一理ある」
「あの……」
「ああ、これは失礼」
璃兵衛は椅子から立ち上がり、姿勢を正すと客に向かって告げた。
「ようこそ、祝久屋蓬莱堂へ。さて、どんないわくをお持ちで?」




