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第三章 19

***


 安楽が目を覚ませば、そこは暗闇だった。


(私は、一体何を……)


 少しずつ安楽は思い出していく。

 地下室での出来事、青く輝く瞳、自身を包み込む炎。

 そして美しさを孕んだ、あの恐ろしい言葉を。


(くそ、冗談ではない! 私はこんなところで終わるわけには)

 

 手を伸ばそうとするが、そこで安楽は身体が動かないことに気づく。

 拘束されているわけではないが、何かを身体中に巻き付けられているようだ。


(なんだ、なにがどうなっているんだ……!)


 口から出る声はくぐもった音にしかならない。

 ならばと必死に身体を揺らし、誰かに助けを求めようとするが、身体を揺らすたびに胡坐をかいた姿勢で固定された膝が板のようなものにあたって、痛みを伴う。


(これは……木箱か?)


 なぜこんなところに自分が入れられているのかはわからないが、音を出していれば、じきに誰かが安楽に気づくだろう。


「なあ、今、音せえへんかったか?」

「はぁ? 恐いこと言うなや。ただでさえ高僧の木乃伊なんて気色悪いもん運ばなあかんてのに。唐の金持ちが薬の材料にほしいて言い出したらしいけど、金持ちの考えはわからんな」


(木乃伊、薬の材料だと……この私が?)


 薬の材料にされるということは死を意味する。いや、この状態が続けばいずれ命を落とす。

 行き先が唐と言うことは、おそらく船に積み込まれたのだろう。


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