第一章 5
「……さすがに、こんな客が来るのは初めてのことだ」
「いいのか?」
「いいも何もうちの客に変わりはない。こんにちは、お嬢さん」
着物の赤に気を取られていたが、よく見れば少女の小さな手は土で汚れており、汚れた手で着物をつかみ、なにかに耐えるようにしながら、じっと璃兵衛の目を見ていた。
「青い目……玻璃の鏡に跳ね返されて閻魔さんに追い返されたんは、ほんまやったんや……」
「……玻璃の鏡?」
「地獄にある亡者の生前の罪を映すと言われている鏡のことだ。そうか、また新しい噂が生まれていたか」
なぜか楽しそうに呟く璃兵衛にレンが隣でため息をつくと、少女は小さく肩を揺らした。そんな少女に璃兵衛は話しかけた。
「俺のこの目にはもうひとつ秘密がある」
「秘密……?」
「ああ、実はそこにいるやつとの対価……指切りした証でもあるんだ」
「おい、あまり子供をからかうな」
横から会話に入ったレンを少女は驚いたように見上げた。
「じゃあ、このお兄ちゃんを見張ってる鬼さん?」
「鬼だと……?」
「うん、この世に戻ってきたお兄ちゃんがあかんことしんように、一緒についてきた鬼がずっとそばで見張ってるんやって」
「いや、俺は鬼では」




