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第三章 5
「好き好んでミイラの中身をわざわざ見ようと思う者はいない。仮にいたとしても、棺の中にあるのは布を巻かれた遺体。顔も身体も……それこそ腹の中に何を詰め込まれていようともわからない。死体を手に入れられるお前の立場といい、この場所といい……まさに隠れ蓑には最適だ」
璃兵衛の視線の先にある棚には小刀や布が置かれていた。
今、璃兵衛のいるこの場所で遺体は阿片の入れ物に、ミイラへと作り替えられていたのだ。
「……あなたが初めてですよ。他のやつらは気づくどころか、私を疑おうともしなかった」
提灯のあかりに照らされた安楽の顔に、菩薩と言われている面影はまったくなかった。
「今のお前が、本当のお前か……とんだ菩薩もいたものだ」
「本当も何も、私に嘘偽りはありません。この寺を建て直したいと願ったのも、皆の救いとなる者になりたいと願ったのもすべて本心です。ただ何事にも必要なものがある」
「金か……」
「呪いだなんだとおかしなものばかりを扱っているとは言え、さすがは商人の端くれですね」
安楽はにこやかに微笑んだ。




