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第三章 4
「耳や目があるのは壁や障子だけではない。それと本堂の臭いだが、あれは阿片の臭いを隠すためのものだろう。始終護摩や線香を焚いていたとしても、坊主のお前なら不自然には思われない」
「護摩や線香を焚く者はなにも私だけでなく、大勢いると思いますが」
「あとはレンを見た時の反応だ。あの時のお前は動揺していた」
「あれは、まさか書物で読んだ国の者と実際に会えるとは思ってなく、感極まって」
「いいや、違う。お前はまずいと思ったはずだ。ミイラのことを知られてしまうのではとな」
エジプトでは死者をミイラにして肉体を保存することで、再びこの世に蘇ることができると考えられていた。
その一方で、ミイラは「木乃伊」などと表記され、薬の材料として輸入されることもこの時代には珍しくはなかった。
死者の蘇りを願ってつくられたものが薬の材料となることは何とも皮肉なようにも思えるが、これも考え方の違いというものになるのだろう。
「遺体の重さは死因によって変わるらしいが、遺体の重さを気にすることはまずないからな。いいところに目をつけたものだ」
「……何が言いたい?」




