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第二章 19

***


 レンを見送り、璃兵衛はため息をついた。

 殴られた頬は痛みを伝えてくる。


「頭が固いというのも考えものだ……いや、違うな」


(あれは感情を持っている、十数年間生きてきた俺以上に)


 事実、璃兵衛が他人の墓を暴こうとしていることに変わりはない。

 レンのことを思えば、あの怒りは間違いなく正しいものだ。


 璃兵衛は近くの墓に立っていた塔婆を引き抜くと、その先を地面に突き立てた。思っていたとおり土はそう固くなく、塔婆を受け入れた。

 塔婆を使い、璃兵衛は穴を掘っていく。


(あの世という場所が本当にあるのなら、俺は地獄に堕ちるだろう)


 幼い頃からひとりで何度も生死を彷徨った。

 璃兵衛という名前は父親が邪気を退けるとされているラピスラズリという石の和名・瑠璃からつけたものだ。


 身体が弱い璃兵衛を思っての名前だったそうだが、その父親は仕入れに行くと出て行ったきり帰ってこなかった。


 病弱なわが子を抱え、ひとり残された母親に追い打ちをかけたのは璃兵衛の目の色だった。

 日の光に照らされて青く見える瞳は、父親と母親どちらにもない色。

 おそらく隔世遺伝によるものだが、その青が母親を壊してしまった。


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