第二章 17
「そもそも死者というのは、何をもって死者と言うんだ。死体とはどう違う? 生前の姿を保ったまま残っていることか? 自分のために泣いて名前を呼んでくれる者がいることか?」
「……めろ」
「しかし、そう定義すれば、俺は死んでも死者とやらにはなれそうにない。俺には泣いて名前を呼んでくれる者はいないからな」
「やめろや!」
瑠璃兵衛が倒れ込んだのは、左の頬に衝撃が走った直後のことだ。
レンの足元に倒れ込んだ璃兵衛を、肩で息をするレンが見下ろしていた。
(痛い……)
こんなふうに倒れ込むのはいつぶりのことだろう。
(ひさしぶりのせいで上手く受け身を取ることができなかったか)
殴られた左頬に痛みを感じながら、璃兵衛は起き上がった。
璃兵衛とレンの視線が真正面からぶつかり合う。
「その国の言葉や方言を覚えるのは、どれだけそこに馴染んで、親しい人がいるかに関係しているらしい……」
「それがどうした?」
「お前の方が、俺よりも余程この世に馴染んでいるように見える」
「それは……」
璃兵衛はレンがなにかを言うよりも先に背を向けると、先程掘り返そうとしていた墓に向き合った。
「先に帰っていろ。俺はこの墓を掘り返す」
「お前は……まだそんなことを言ってるのか!」
殴ってしまった後悔や心配もあってか。
心配そうに璃兵衛を見ていたレンだったが、璃兵衛のやることを聞いた途端に顔色を変えた。
「いい加減にしろ! お前がやってることは」




