第二章 13
「お春の旦那さんが亡くなったと聞き、居ても立ってもいられず……こちらでお世話になると聞き、こうして馳せ参じた次第で」
「あなた、お春の旦那と知り合いで……?」
意外そうに言う安楽に、璃兵衛はさめざめと答えた。
「俺は色々と噂もあり、表立って仲良くすることはできなかったものの、数少ない友人で……しかし話を聞いて驚きました。まさか菩薩のような人が本当にいるとは」
「私が菩薩やなど……私は己が信じた道を歩んでいるにすぎません」
控えめに言うと安楽は目を伏せた。
「しかし寺にはあなた以外の姿はないようで。よければ、ぜひ手伝いをさせていただきたい。レンも旦那には世話になって……なぁ?」
「……あぁ、色々と話をさせてもらい、世話になった」
「ふたりの気持ちはようわかりますが、お春もひどく参ってます。旦那を亡くし、その上金まで盗まれては無理もない……私は夫婦ふたりだけで別れさせてやりたいんです」
「それなら手伝いだけでも」
「いえ、結構です」
安楽はやけにきっぱりとレンの申し出を断った。
「手伝いなら信頼できるものに頼んでます。それにふたりのその気持ちだけで、お春の旦那も浮かばれるはずです……これから色々と準備があるもので。これ以上は」
「お忙しいところ失礼しました。なら、俺達もこれで」
安楽に背を向けて歩き出した璃兵衛だったが、ある一角に目を向けると足を止めた。




