第二章 11
私財だけでは修理のすべてをまかなうことはできなかったのか。
修理が行き届かず、そのまま手つかずのお堂も見られる。
「しかし私財を投じてここまで建て直すとはすごいな」
レンは寺が珍しいのか、先を進みながらもあたりを見回している。
「時代や国に関係なく、人々のために金を出した者は地位や人々の尊敬を得られるものだ」
古代ローマなどでは道路や建物の設備に必要な費用を貴族が出し、費用を出した貴族が自らの名前を道路や建物につけることもあった。
「かつてこの国にいた平安貴族の中には散々なことをしておきながら地獄に堕ちるのは嫌だと寺に寄進をした者もいる。行く先が天国だろうが地獄だろうが金がいるのは事実だ」
たどり着いた本堂は新しい畳が敷かれ、入り口に広げられた煌びやかな屏風が寺を訪れる者を迎え入れる。
入り口まで漂ってくる香りは日々の勤めに使われている護摩だろうか。
「これは……」
「おまたせしました」
やがて奥からあらわれたのは、長屋で見たあの坊主だった。
「私がこの安生寺で住職をしとる安楽です」
「俺は蓬莱堂を営む祝久屋璃兵衛、隣にいるのはレンだ」
簡単に自己紹介を終えると、璃兵衛は屏風に視線を戻した。
「この屏風ですが、漆塗りに螺鈿で描かれた花と鳥、随分と高価なものとお見受けしますが」




