第二章 8
そんなやりとりをしていると、お春の長屋に若い坊主がやってきた。
お春の部屋の前に立ち、中に向かって話しかけると、やがてお春であろう女性が涙で濡れた顔をのぞかせた。
何を話しているかまでは聞こえなかったが、その場を後にする坊主にお春は涙を流しながら何度も頭を下げていた。
「一体、何を話していたんだ?」
レンと同じことを思ったのか。
長屋の住人達はお春の元に駆け寄った。
「お春ちゃん、大丈夫か? それにさっきの坊さん、誰なんや?」
「さっきの方は安楽と名乗られて……葬式の出せへんうちのかわりに、タダで葬式を出すて」
「安楽て……聞いたことあるわ! 葬式を出せん家族のかわりに葬式出したり、身寄りのない遺体を引き取って供養しとる菩薩みたいな人やて話やで」
「ほんまにもう菩薩のような方や」
お春は涙を流しながら胸の前で両手を合わせた。
「金盗られて旦那の葬式も出せへんようなうちにも、あんたはなんも悪うないて優しい言葉かけてくれて……」
「そんなん、お春ちゃんはなんも悪うないに決まっとる。うちらはわかっとるから、な?」
「せやで、元気だし。うちらでよかったら手伝うし、何でも言うて」
「おおきに……」
住人たちに慰められて涙をこぼすお春に背を向けて璃兵衛は歩き出した。
「もういいのか」
「ああいうやりとりは蛇足でしかないからな。それよりも富次郎とは、あの後どうだったんだ?」




