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第二章 3

「こうした類いの話が苦手な富次郎には悪いが、同じような遺体は見つかってないか。最近何かおかしなことは起きていないか。それを今日は聞きに来た」

「なるほどなあ……」


 腕を組み、ここ最近起きた事件についてを思い出す富次郎は、先程まで璃兵衛の話を聞いて口元をおさえていた時とは別人のようだった。


「……思い出してみたけど、少なくとも俺が担当しとるとこではそんな遺体は見つかってへん。それやったら、とっくに瓦版になっとるはずやろ」

「たしかにそれもそうだな」


 瓦版がこんな派手な文面になりそうな話を見逃しておくはずがない。

 

「他に何かないのか?」

「何かって言われてもなぁ……」


 富次郎は困ったように頭をかいた。


「お前自身が知っていることでいい。それに幼馴染に世間話として語るなら何も問題はないだろう?」

「どういうことだ?」


 たずねるレンに璃兵衛は答えた。


「さっきは同心としてのこいつに聞いた。だが、今は幼馴染としてのこいつに聞いているんだ。頭をかく時は大抵なにか知っている時だからな」

「げっ! ほんまか!?」


 璃兵衛の指摘に慌てる富次郎を璃兵衛はじっと見ていた。


「やっぱり、お前、なにか知っているな」

「頭をかいているところを見て、知っていると思ったんじゃないのか?」

「あんなものうそに決まっている。だが、俺の指摘に慌てるところを見ると何か知っていることにまちがいない」

「なるほど、そういうことか」

「あー、もう! 降参や、降参!!」


 ふたりのやり取りを聞いていた富次郎はやけくそのように叫んだ。


「富次郎、朝早くから近所迷惑だ」

「その言葉、そっくりそのまま返すわ。それでお前はどこまで知っとる?」

「なにも? ただ情報も集まる先は選ぶ。お前は幽霊嫌いの恐がりだが、好かれている同心であることには違いない。そうした人間の方が情報も集まりやすいだろう」

「勝手な時だけ幼馴染面しおって、お前は……」


 富次郎は諦めてようにため息をつくと話し出した。


「言うても惨い事件とかやないぞ。ここんとこ阿片の盗難が続いとるとか、菩薩て呼ばれとる坊主がおるとかくらいで……」

「阿片の盗難は穏やかではないな」

「阿片……?」

「麻酔、痛みを取り除く薬として使われている。芥子と言えばお前にもわかるだろう」

「あぁ、あの花のことか」


 レンがいた国でも芥子は薬の一種として使われていた。

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