呪いと不死と迷宮と
微レ存だから無罪。異論は認める。
「そもそも、お主らはこの町の由来を知っておるか?」
知ってるわけないだろ、という言葉を飲み込んで、やたらとガタイのいい筋骨隆々のオッサン───────恐らくはかなり高い地位にいる───────が続きを話すのを待つ。
下働き?らしき人に案内されて、ここに連れてこられたのだが…………………今一つ、言いたいことがわからない。
「とうに気付いておるとは思うが、この町はありとあらゆる物が金属で造られている。何故かわかるか?」
わからん。そして一つ確信した。俺、この人嫌いだわ。
あと椅子が硬すぎる。
尻にダイレクトアタックを叩き込まれる気分だ。
「この町はな、あの迷宮を封じるためにつくられたのじゃよ。かつての吸血王、その居城たる肉塊をこの地に縛り付け、眠らせるためにソレを中心に六つの呪いを刻んだ街をつくり、土地全体を封印した。ここまでは良いな?」
良くねぇよ。近接の人に難しい話は分からんのですよ。
そして何故か目を輝かせるアヤメ。これが啓蒙の差という奴か。
「…………まぁいい、話を戻すぞ。つい最近、その町の一つが破壊された。襲撃者の正体は、今のところ確証はないが、直後に出された犯行声明から察するに恐らくは邪神崇拝者じゃろう。あの迷宮の内部で何が起こったかはわからんが先王が討ち死にされたことは事実。よってお主らの出番というわけじゃ」
邪神崇拝者とかいるのか。物騒ではあるが…………王権神授説が罷り通る世界なら仕方ないのか?
「出立の予定は?」
「明日の明朝。夜が明けると同時に乗り込んでくれ」
「わかりました」
取り敢えず『なんかヤバイ』という事だけ分かった。あとは知らん。内容を伝えるため、用意された部屋に帰った。
「アヤメ、アレは結局どういう事だったんだ?」
「知らないよ?」
「……………………はぁ?」
金属製の廊下を進みながら解説を求めた俺に対してわからないと返すアヤメ。
「私の専門は攻撃と火力だから封印云々とか言われてもよくわからないし必要ないし。聞かれても答えられないのは当たり前でしょ?」
肩を竦めて「封印より殺す方が手っ取り早いし」と言うアヤメ。脳筋魔法少女とはこれ如何に。
「お兄ちゃんこそ、そっちが本命でしょ?頑張るべきなんじゃない?」
「前衛に無茶言うな」
「でも魔眼は覚えたんだよね?」
「一応な」
尤も、目の前の脳筋には通用しなかったが。
「どんなのがあったの?」
「色々、だな。【洗脳】、【発狂】、【幻視】、【精神破壊】、【命奪】、【狂血】、【怨喚】、【来氷】。合計で8つある」
「結構すごいんじゃない?お兄ちゃんも漸くまともな遠距離攻撃手段を手に入れたわけだし」
「射程がほぼ零距離でもか?」
「…………………ドンマイ」
問題はそこ。魔眼とか言っておいて射程距離がアホみたいに短い。それこそ少しでも距離を取られると当たらないレベルで。しかも発動から発射までにタイムラグがある。【怨喚】と【来氷】に至っては攻撃ですらなく只の自己強化。それぞれ死霊系統と氷系統の出力の増加。どっちにしても撃たないので意味が無い。溜め息を堪え、部屋の扉を開ける。
「レン、遅い。もっと急いで戻ってこい」
「僕みたいに1000年も生きられないんだから時間を大事にするべきだよ?どうせすぐに寿命で死ぬんだし」
散々な言われようだな。そこまで言われるようなことをした覚えはないのだが。
「で、アヤメちゃん。何か分かったことは?」
「なんかヤバそうって事だけ。あとは私が知っていること位かな?」
「お前、何か知ってるのかよ」
事も無げに言うアヤメ。
「迷宮の成り立ちならちょっとね」
「どこで知ったよ」
「コレ」
そう言ってアヤメが取り出したのは………………ネクロノミコン。またこれかよ。
「迷宮とは膨大な生贄と魔力を捧げることによって成り立つ異界の総称である。外界に影響を与えられず、迷宮の核を破壊されると自壊するという枷を負うことで魔物や宝物を生み出し、世界を改変することができる」
「……………………確かにヤバげだな」
というか本当にマズいヤツなんじゃ…………
「レン………………肉壁は任せた」
「レン君。前衛は頼んだよ」
「お兄ちゃん、肉盾、頑張ってね」
……………………………………そろそろ泣いても許されると思うんだ。ちょちょ切れそうになる涙を堪えて、地図を取り出す。
「今俺達がいるのがこの町で、ダンジョンがあるのが此処から南南西に下った所。明日の朝日が昇る前にダンジョンに乗り込む。後は最上階まで駆け上がってボスをぶん殴って任務完了」
「馬鹿なのかな?」
「事実だろうが」
実際そうなるわけだし。肩を竦めるアヤメとギンカに苦笑するオネットさん。簡単に言っただけなのになんでなんだろうな。
「というかアヤメの最大火力ならダンジョンごと消し飛ばせるだろ」
「無理。流石に神様製の物を壊すのは………ねぇ?」
「ねぇって」
そんなことを言うアヤメ。よくわからんが無理っぽい。無理なら仕方ない。
「…………僕はもう寝るね?朝には弱い方だし」
「私も寝る。お休み」
そそくさと二人が布団に潜り込んだ。俺はどうせ寝られないからいいがアヤメも眠っておくべきだろう。
「アヤメ、お前も寝ておけ」
「お兄ちゃん…………は、うん。お休み」
目を伏せるアヤメ。少し気まずいが深く考えずに、俺もベッドに横たわった。
眠いよぉ~。
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