工房とエルフと地獄と
遅くなってしまった。
「オネットさん、ここの発射用の術式削ったら威力上げれる?」
「出来るけど…………………それやっちゃったら、ただの火炎放射になるよ?」
「問題ない、かな?…………よし、そうしよう」
「やめてくれ」
物騒な事を話し合うアヤメとオネットさん。
この二人の組み合わせはやっぱりアウトだ。
ろくでもない未来しか見えない。
「それじゃあさ、射程距離を殺して魔法自体を収束したら?後は適当に火力を盛ればいい感じになりそうだし」
「盛るな」
もう本当にやめて欲しい。
「アヤメさん、もうその辺りにして帰りましょう?この国はあまり好きじゃありません」
心底嫌そうに言うリリアナ。
確かに居心地が良いとは言えないが………………
「この国って呆れるほど排他的だからねぇ………………次代女王候補が言うのもなんだけど」
「仕方ないですよ。オネット様に拾ってもらえるまで、俺達みたいな半妖精には人権すらありませんでしたし……………」
溜め息を零す工房の作業員さん。
その耳は、オネットさんと比べて、少し短いようにも見える。
「……………なんていうか、大分アレな場所ですね」
「だからこそ、居場所のない子を僕が引き取って此処で雇っている訳なんだけど」
「そうだったんですか」
「そのせいでたまに攻めてこられるんだけどね!!」
「アカンやん」
思わず飛び出る似非関西弁。
「どっちにしろ新兵器の実験だゲフンゲフン!正当防衛で叩きのめすから問題ないし」
「今、実験台って言いかけたよな?」
「ソンナコトナイヨ」
思いっ切り目が泳いでいるオネットさん。
酷いな。
「そういうわけで、この工房が僕たちのアジトみたいな感じになってい」
オネットさんの言葉を遮って工房の外が爆ぜた。
「何が起こった!!」
「原因不明!推定、兵器類の暴発、或いは魔導書の暴走!!」
「落ち着いて!水系統持ちは消火活動に当たって、風系統持ちはガスの対策を……………」
こんな状況でも指示を出せるあたり、オネットさんは意外とまともなのかもしれない。
それよりも………
「アヤメ、気付いてるよな?」
「何に?」
一気に気が抜けた。
虚空から太刀を取り出して構える。
同じように黒い腕を携えるギンカ。
流石に勘づいたか。
そして急速に膨れ上がる殺意。
「ねぇ、お兄ちゃん。何が」
「来るぞ!!」
次の瞬間、工房を取り囲んでいた無数の気配──────恐らくは暗殺者か何か────────が襲い掛かって来た。
暗緑色のローブに身を包んだ陰気な連中が投げた瓶が床に落ちて割れ、中から噴き出した黒い煙が工房の内部を埋め尽くす。
重く暗く淀んだ黒煙を吸ったエルフが白目を剥いて倒れ込む。
毒か、或いは魔術か。
「うにゃあああぁぁ?!」と奇怪な悲鳴を上げるアヤメと昏倒するリリアナ。
少しミスしたな。
口元を覆ったギンカと目線を合わせて……………………………ローブ君を殴り飛ばす。
本来なら視界すら碌に聞かないのだろうが、吸血鬼からすればそんなの関係ない。
狼狽えるローブ君その2の顔面を鷲掴みにし、その3に叩きつける。
どうやら反撃を想定していなかったらしく、一斉に距離をとるローブ君たち。
馬鹿だな、さっさと逃げりゃいいのに。
「一斉射撃、用意!撃」
「【叩き伏せろ】!」
魔法を撃とうとしたエルフ達が、不可視の手に潰されて地面に這いつくばる。
フラフラしながら起き上がった一人の延髄に蹴りをかまし、昏倒させる。
背後から首に手を回し、絞め上げる。
仲間ごと撃とうとしたエルフに腹パン。
苦悶の声を漏らすローブを傍目に、後ろに下がり……………………
「アヤメ、行けるか?」
「もちろん!《始原の種火》《転じて劫火》《古き微風》《移ろいで風穴》《併せ造りし》《爆ぜ散る一閃》────【炎弾:爆轟】」
飛来した火球が襲撃者を纏めて吹き飛ばした。
「で、コイツらどうするんだ?」
目の前に並んだ荒縄で拘束されたエルフたち。
吐かせるにしろ潰すにしろ、一応許可を取るべきか……………………………………
「コイツら、どうする?」
言外に殺すか絞め上げるか尋ねた俺の質問に、あからさまにビビるエルフ。
アサシンがそれじゃ駄目でしょうに………………………
「逃げていいよ?」
「は?」
「逃げていいって言ったの。早く行きなよ、殺しちゃうよ?」
「ッ…………………………!!」
黙ったまま消えていくエルフたち。
意味がわからん。
「なんで逃した」
半ばキレながら詰問するギンカ。
一応口に出さないが、俺も同意見だ。
「殺す意味も無いし殺す気も無いしねぇ………………」
「だからって………」
「それに同族だし」
微妙に憂いを浮かべた表情で言うオネットさん。
「というか、アイツら工房壊して行きやがった!?やっぱ今からぶっ殺す!!」
いきなりブチ切れたオネットさん。
態度が豹変した。
「やめてください、オネットさん。今から工房の修復をしないといけないんですから」
いい笑顔で言う工房の人。
「という訳で、手伝ってくれるよね?」
いい笑顔で言うオネットさん。
待て待て待て。
「まさか俺たちも?」
「もちろん!」
後ろを振り返る。焦げ付き、黒く変色した工房の壁。
これを片付けるのか。
ハッハッハ。
「ガッデム」
地獄が始まった。
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