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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
郷里と郷里と異変と

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魔法と鋸と絶望と

やってやったぜぇ。

「なぁ、アヤメ」

「どうかした、お兄ちゃん?」

「なんでこうなったんだろうなぁ」

「さぁ?」


 クソッタレが。

 諦めて太刀を構え、前に出る。

 対面には手ぶらで佇むオネットさん。


「始めていい?」


 訓練場の端に立つギンカに頷く。


「よーい………ドン」

「突撃イィイイィィイイイ!!!」


 雄叫びを上げて突撃を開始。

 相手が魔術師なら、距離を詰めてフルボッコにすれば勝て。


「いい判断だけど少しばかり甘いかな?」

「ガッ!?」


 そんな言葉と共に吹き飛ばされる俺。

 目まぐるしく動く視界の中捉えたのは、地面から吹き上がる雷電。


「………………罠かよ」

「魔法使いが近づかれると脆いのは否定しないけど、だからといって不用意に距離を詰めるのはおすすめしないよ?何を仕込んでるか、分かったものじゃないしね」


 怖いな。

 だが気にする必要はない。

 太刀を鉈に変え、再び突っ込む。

 狙い澄ましたように爆裂した魔法陣をすれすれで躱し、触手に変異させた左腕を伸ばす。

 広範囲を打ち砕くソレを、華麗に身を捻って避けるオネットさん。

 バケモンかな?

 何となく某タイ〇ントさんの気持ちがわかったような気がする。

 きっと、あの生物兵器もこんな感じだったんだろうな。

 一気に肉弾戦に持ち込もうとした俺のどてっぱらをぶち抜く閃光。

 文字通り、生きたまま肉を焼かれるような痛み。

 眼前には瀟洒な装飾の施された、銀色の洋弓銃(クロスボウ)を構えたオネットさんの姿。

 ちょっとそれはズルいと思うんだ。

 惚れ惚れするほどスムーズに、鐙を足で踏み付け、弦を引き絞り、次弾を番えるオネットさん。

 それってそんなに速く装填できる代物じゃないと思うんだ。

 紫光を帯びた征矢を鉈で叩き落し、軌道を逸らす。

 いつの間にか距離を取り、砲撃じみた矢を連射するオネットさん。

 見当違いの方向に飛び、突き刺さった鏃が一斉に爆発し後ろにぶっ飛ばされる。

 流れ出た血を弄り焼け焦げた服の代わりに。

 土煙の向こうから笛のような独特な音を立てて飛来した鏑矢に、心臓を貫かれる。

 僅かに痛むが堪え、打って出ようとして。


「≪源流の老木≫≪願うは萌芽≫≪その祈りをもって≫≪彼の者を縛り給え≫──────【縛蔦】」


 急速に成長した木が俺の体を突き破って生え、更に地面に喰い込む。

 ニヤリと口角を歪め、両手で弩弓を構えるオネットさん。

 異様なプレッシャーを纏った征矢に紫電が収束してゆき─────────────


「≪雷光の一閃≫≪穿つ一撃≫≪龍殺しの穿杭に非ずとも≫≪此の槍を防ぐこと能わず≫──────【電鳴の貫槍】!!!」


 石畳を千々に引き裂きながら放たれた、金色に煌めく投槍が、苦し紛れに押し出した肉壁を歯牙にもかけずに吹き飛ばして着弾した。

 地面を抉り、深々と傷跡を残した一撃。

 たとえ不死性を持っていようと、まともに喰らえば行動不能は免れないのだろう。

 ………………………まともに喰らえば。

 肉塊と土埃を隠れ蓑にして、大きく弧を描き回り込むように接敵する。

 相手がこちらに気付く前に仕留めるべく、拳を固めて後頭部に振り下ろそうとして。


「おすすめしないって言ったよね?」


 爆音が響き、胴体を袈裟切りに割断される。

 焼けるような痛みを堪え、ズタズタに裂かれた腹から無理矢理下半身を生やして離れる。

 オネットさんの細腕に似つかわしくない異形の兵器。

 独特すぎる駆動音と無数の刃が鎖状に連ねられた、異世界には全く合わない刀身。

 手持ち無沙汰な連続殺人鬼と林業に従事する善良な一般おっちゃんの救世主として、地球上に名を馳せたソレは。


鎖鋸(チェーンソー)かよ」

「あれ?知ってたんだ?一応工房の最高機密なんだけどなぁ………………」


 何故か残念そうにするオネットさん。

 鋼鉄の獣が唸り声をあげ牙を鳴らす。

 圧倒的な死の気配。

 怖気を押し殺し。


「【螺鈿蓮彫り】!」


 チェーンソーの刃と切り結び爆破を利用して地面にめり込ませる。

 そのまま当身をかまし。


「その程度でコレが止まるとでも?」


 微塵切りにされた。



























「おかしいだろ。あれはおかしいだろ。納得いかねぇんだよ」

「諦めるといいよ?」

「黙れ」


 部隊の部屋でこの前買った〔廉血酒〕とやらを飲みながら話し合う。

 意外に旨いな。

 こっそりと舐めようとして匂いにやられるギンカと、魔法談義に夢中な二人。


「…………………あの、レンさん。魔王様がお呼びです」

「マジですかい」

「マジです」


 大広間に向かった。


















「レン君。いい知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」

「じゃあいい知らせで」


 この人って俺ら(異世界人)の同類なんじゃなかろうか?


「暫くの間、王国側との戦端が開かれることはないだろう」


 なんですと。


「その根拠は?」

「連続して勇者が逃げたり殺されたり殺されたりして、国王がビビって逃げたらしくてね?新たに、より強力な勇者を呼ぶまで、大体半年ぐらいは猶予がありそうだね」


 普通にいい情報ジャマイカ。…………………待ってそれなら悪い知らせって一体………………


「悪い知らせって一体」

「君たちの仕事が増える」

「はぁ?」


 理由がわからん。


「王国との戦争に備えて、他の国にも参加を要請したんだけど………その条件が『戦力の貸与』でね。つまり魔物の討伐やらダンジョンの攻略だったりを手伝えと」

「………………仕事、辞めていいですか?」

「明日からまた働いてもらうからね?」


 クソが。


「それでどこに行けばいいんですか?」

「オネットさんの故郷だね」


 ただ絶望が残った。


個人的に………ねぇ?……………チェーンソーを担いだ少女ってねぇ(クソネットリ)得点高いと思うんですよぉ………………











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