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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
郷里と郷里と異変と

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幕間:水薬

時系列的には巨人戦が終わった後ぐらい(この書き方ってセーフなんかね?)


 この世界には、魔法の水薬と呼ばれる物がある。

 専門の職人が作った溶媒に、様々な素材を混ぜ入れて魔法を付与し、即効性のある薬品に加工したものらしいのだが………………詳しいことは俺も知らないので省く。

 大事なのは俺の目の前にそれが山の様に積まれているという事。

 そして、うちの愚昧がそれをつくったという事だけ。


「ねえお兄ちゃん!これ全部私が作ったんだよ?凄いでしょ!!」

「何つくってんだよ」


 机の上に無造作に積み上げられた、醜悪で退廃的で冒涜的でグロテスクなナニカ。

 心なしか「コロ……シテ」とか言ってそうなそれが何か、知りたくもない。


「今すぐ捨ててこい」

「やだよ、折角作ったのにさぁ」


 心底嫌そうな顔のアヤメ。

 だがしかし、コレを許容していいとは到底思えない。


「そもそもこれはどういう効果があるんだ?」

「筋力増強剤、かな?」

「今すぐ捨てろ」


 こんな危険物を放置するわけにはいかない。


「後は、まぁ、ね?」

「ね?じゃねぇんだよ!」

「私が作ったんだから安全に決まってるじゃん」

「だから信用ならねぇんだよ」

「ただのお薬が危険なわけないでしょ?」

「ふざけるな」


 それ以前に……………………


「どこで作り方を知った?」


 独学で作れるようになるとも思えない。

 最悪の場合、あのアビスウォーカーの同類がいる可能性すら……………………………


「独学だけど?」

「学べよ、専門に」


 まともな情報もなく作ったら、こうなるのは当たり前だな。

 それを含めても流石にここまで酷くはならない気もするが。


「…………アヤメ。いっそ、作り方を勉強してみたらどうだ?」

「どういうこと?」


 首を傾げるアヤメに、わかるように話す。


「本職の人が作ったものを見てそこから学べばいい」

「……………あっ」


 この馬鹿。


「取り敢えず外に出るぞ、実際に見ないと話にもならない」

「わかったよ」


 名残惜しそうに机の上の悪業廃棄物を弄るアヤメを引き摺って街に出た。























 いろんな人に道を尋ねて、ようやく辿り着いた一軒の店。

 古びた造りの2階建ての看板に書かれた『リューゲル魔法薬品店』の文字。

 木製のドアを潜り、中に入る。

 ズラリと陳列された摩訶不思議な薬品の数々。

 蛍光色に光る物に、青白く燃える炎のような色合いの物。

 赤黒い血を連想させる物まである。

 目を輝かせるアヤメ。

 何か取り返しのつかないことをしてしまったような気がするが、勘違いだろう。

 店の奥にいたお年寄りに話を聞いてみる。


「あの、すいません。水薬を買いに来たのですが………………」

「何が欲しい?」


 いきなりかよ。

 別にいいんだけどさ。

 黙ってアヤメに目配せを送る。


「じゃあ、とびっきり面白いのをください」

「お前なぁ……………」


 確かにこいつらしいと言ったらそれまでだが………………


「……………………わかった、ちょっと待ってろ」


 そういうなり、カウンターの向こうに消えていくご老人。

 暫くして戻ってきた彼が抱えていたのは………試験管ぐらいの大きさの硝子瓶に入った青色の水薬。


「これは?」

「『勿忘の朝靄』だ。忘れていた記憶を思い出させてくれる。ただし、思い出す記憶はランダムな上に、その記憶が本人にとって忘れてはいけない物であればある程、効果が出るまでにタイムラグがあるがな」


 便利そうだけど何を思い出すかは選べないのか。

 時間差があることも考えると利便性は低いのか?


「これ、4本買います」

「そんなに要るか?」

「念の為に3本と、お兄ちゃんにも1本」

「俺も貰っていいのか?」

「いいからいいから」


 そういって懐から出した財布の中身を弄るアヤメ。


「代金は幾らですか?」

「4本で金貨20枚だ」


 アヤメの動きが止まった。

 溜め息をつき諦めたように笑って……………………………


「ごめん、自分の分だけ払って?」

「金足りないのかよ」


 仕方ないと割り切って金を出す。

 せっかくだし、自分用にも何か買っておきたいが………………


「すいません、アレ、貰えますか?」


 店内を見渡して見つけた赤黒い小瓶。

 仄かに甘く腐ったような香りのするソレを手に取り、カウンターに持っていく。


「おいおい、『廉血酒』は人が飲んでいい代物じゃ………………」

「これはどういう効果が?」

「………………不死者の力を回復させるだけだ。あんたが使っても、腹を下すだけだろうよ」


 問題ないな。


「3本ください」


 呆れたように肩を竦める店主。


「本当にこれでいいのか?こんなもの人間の役には立たんぞ?」

「はい。…………それと、水薬の調合の教練書か何かがあれば売ってもらえませんか?」

「わかった、売ってやる。合わせて金貨18枚だが……………」

「ではこれで」


 ギリギリ持ち合わせで足りたので渋らずに払う。

 袋に包まれた小瓶と一冊の分厚い本。

 いい買い物ができた気がする。

 ふと、視界に映った溌剌と笑う少年と、偏屈そうな中年男性の写真。


「これが気になるか?」

「あ、いえその」

「息子さんとお孫さん、ですか?」


 お茶を濁そうとした俺の言葉を遮って喋るアヤメ。

 そしてなぜか淋しそうに笑うお爺ちゃん。


「いや、それは俺の倅だ。8年ほど前に家を飛び出してそれっきりでな。今頃どこをほっつき歩いていることやら…………………あいつのことだから、薬師にでもなってる気もするが」

「そうでしたか………………」


 やべぇ、クッソ気まずい。


「もう帰ろう?お兄ちゃん」

「そうだな。すみません、また来ますね」

「おう、また来いよ」


 お爺ちゃんに手を振り自室に戻った。

















「それじゃあ実食行ってみよう!!」

「いきなりかよ」


 机に置かれた青色の水薬。もう飲むのか。


「という訳で、ハイどうぞ」

「俺にまず飲ませるのかよ」


 差し出された小瓶の中身を一気に呷る。

 シュワッと弾けるような口当たりと、鼻に抜けるような爽快感。

 そして優しい甘み。

 これアレだわ。

 ラムネだ。

 昔夏祭りの縁日で飲んだやつだ。


「どう、お兄ちゃん?何か思い出した?」

「…………ランニング・デッドの返却期限切れてるな」


 延滞金がえぐいことになってそうだ。

 どっちにしろもう関係ないが。


「どうせならもっといい物思い出してよ。秘められた一族の力とかそういうの」

「無茶言うな」


 俺の非難を聞き流して水薬を飲み干すアヤメ。

 ぷはっ、と息を零し………………


「何も思い出せない」

「駄目なのかよ」


 頭を抱え悶絶するアヤメ。

 ガバっと擬音の付きそうな勢いで顔を上げもう1瓶手に取り──────喉に流し込んだ。


「おい」

「……………うにゃあぁぁあぁぁぁ!!!」

「駄目なのかよ」

「うるっさい!!」


 バンバンと音を出して机を叩くアヤメ。

 その姿は正しく駄々っ子のソレ。


「結局残りはどうするんだ?」

「後でリリアナちゃんとギンカちゃんにあげる」


 不貞腐れて部屋を出ていくアヤメ。

 溜め息をつきその背中を見送った。













 廉血酒とやらはおいしかったです。まる


次の章?まだ続くぜ?(今更短いことに気付いた、愚かなる、なろう投稿者の鑑)



















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