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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
郷里と郷里と異変と

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船と海産物と蛸と

デビルフィッシュやったっけな。

 銀色の海に銀色の泡。

 悠々と泳ぐ、名も知らぬ銀色の生物たち。

 その只中で、唯一白く輝く巨鯨の似姿。

 またここかよ、久しぶりだな。


≪汝≫≪堕とし子≫≪討滅≫≪褒賞≫


 それはギンカの功績だと思うんだが。


≪然り≫≪但し≫≪汝≫≪協力者≫≪故≫≪褒賞≫


 よくわからんけど何かを貰えるってことでいいのか?


≪肯定≫≪汝≫≪授与≫≪奇跡≫≪武具≫


 二つも貰えるのか。

 どうせならこう、バーッ、と派手な必殺技が欲しいが…………ここは強欲で謙虚な壺になるべきだろう。


≪祈願≫≪健闘≫≪殲滅≫≪混沌≫≪先兵≫≪激励≫


 励まされた。


























 目が覚めた。

 気分悪い。

 気持ち悪い。

 吐き気がする。

 頭痛が痛い。

 疼痛と五月病と偏頭痛が頭の中でブルースを奏でている。

 控えめに言って地獄。

 はっきり言って地獄。

 クソッタレが。


「お兄ちゃん大丈夫?」

「……………いや、まったく」


 ベッドに寝転ぶ俺の顔を見つめるアヤメと、ソファーでくつろぐリリアナ。

 暢気な奴らだな。

 脂汗を拭い、起き上がり、水を飲む。


「そうだお兄ちゃん、ギンカちゃんが治ったってさ」

「早く言えよ」


 外に向かった。

























 谷の底から外洋に出る川の畔に停まった一艘の船。


「怪我はもう大丈夫なのか?」

「問題ない、たくさんご飯食べたら治った」

「ガキかよ」

「黙れ」


 頭を潰されかけるが、身を捻って回避。

 なにはともあれ、もとに

 終わったかもしれない。


「病み上がりなんだから、無理せずほかの人に任せたらどうだ?」

「いや、私がする」

「巫女のお姉ちゃん、無理しない方がいいよ?」


 小樽を抱えて船に運んでいた少年が心配そうにギンカを見上げる。

 たじろぐギンカ。

 いいぞガキンチョ、もっと言え。


「ギンカ、本当に送らないで良いのか?」

「問題ないってば」


 お爺さんにしつこく聞かれ、やや不機嫌そうにするギンカ。

 いい気味だ。


「お兄ちゃん、悪い顔になってるよ?」

「知るかよ」

「準備が出来た、そろそろ行くから乗って」

「………………今度は事故るなよ?」

「アレは私の責任じゃない、私は悪くない」

「ギンカさん、くれぐれも、安全重視でお願いしますよ?私もう、海で溺れたくありませんので」


 無言で圧力をかけるリリアナ。

 背後に幽波紋(スタンド)でもいそうな雰囲気だ。


「わかった。気を付ける」


 こくこくと首を縦に振るギンカ。

 いまいち信頼性に欠けるが、仕方無いのだろう。


「………………ギンカ、いつでも帰って」

「船を出す!乗り込んで!!」


 岸に船を繋いでいた荒縄を引き千切り、ギンカが船に飛び乗る。

 置いて行かれるわけにもいかないのでアヤメとリリアナを抱きかかえて跳躍、船に乗る。

 大きく喫水線が揺れるが問題は無し。

 赤い川の流れに乗って、滑るように進み出す船。


「……………なぁ、ギンカ。もっと話さなくて良かったのか?」

「大丈夫、また来れるから」

「………………後悔するぞ」


 俺がそうだったから。

 そんな言葉を鼻で笑うギンカ。


「…………………ソレはもうウンザリするほどした」

「そうか」


 わずかに哀愁を帯びた瞳に映るのは、赤毛の偉丈夫の姿。

 まっすぐに俺を見据える蒼い眼に、俺は何も言えなかった。

























「空気読めよクソッタレが!!」

「アッハハハハハハハハ!!」

「ねぇこれどういう事!?なんでこうなってるの!?」

「ちょっと皆さん落ち着いて下さふみゃあぁああぁぁ!?」


 叫ぶ俺に火炎をばら撒き、海面を蒸発させるアヤメ。

 混乱するギンカに巻き込まれかけるリリアナ。

 そして後ろから迫りくる海産物。

 嗚呼、なんて素晴らしいカオスなんだろう。

 クソが。


「なんとかしろよ、ギンカ!!」

「ムリ」


 速攻で諦めるギンカ。

 もっと熱くなれよ。


「《始原の種火》《転じて劫火》《古き微風》《色付きて風穴》《併せ造りし》《穿ち抜く閃撃》――――――【炎弾:連撃】!」


 アヤメの無差別爆撃でこんがりと焼かれる魚たち。

 熱くなったな、ざまぁみろ。

 海中から飛び出し、水面で尾鰭を振るい加速して突っ込んできたトビウオモドキを、十字槍で撃墜して叩き落し、腹に突き刺しトドメを刺す。

 目を見開き、狂気の滲む笑みを浮かべ、まるで魔法か何かのように船を繰るギンカ。

 駄目だ、正気を保っている奴がいねえ。

 まともなのは俺だけか。


「おいアヤメ、コイツラ殲滅できるか!?」

「ちょっと、厳しいかも!」

「そうか!!」


 返事を返して海産物の頭を叩き潰して抹殺。

 血糊を振り払い、穂先の横刃で引っ掛けて出荷。

 謎の達成感。


「うみゃああぁあああぁぁぁ?!」


 奇怪な悲鳴を上げるリリアナ。

 振り返れば、海中から伸びた触手に絡めとられたリリアナ……………ってそうじゃない。

 やや黒ずんだ赤に近い色合いと、2列に並んだ吸盤。

 サイズ感やら細部やらに俺の記憶との差異が見受けられるが、それでもまごう事なき────


「タコだよなぁ、これってよぉ……ッ」


 蛸。

 日本人の主食にして好物の一つ。

 寿司ネタにもタコ焼きにも味噌酢和えにも炊き込みご飯にも天麩羅にもなる便利な奴。

 偶に良く稀に鉢巻きに擬態したハラマキを装備しているあいつ。

 よく新鮮なのを掻っ捌いて、軽く火を通して炙りにして食ったな。

 爺ちゃんが喉に詰まらせた時に死ぬほど焦った記憶すら、今となってはいい思い出。

 さて……………どうやって料理しようか。

 肉が多いから食いでがありそうだが……………そして思案する俺を傍目に逃亡しようとする蛸。  

 まったく。


「逃がすわけねぇだろうがッ!!!」


 リリアナを捕まえていた触手を斬り落とし、石突で引っ掛けて回収。

 空中に放り出されたリリアナを、小脇に抱えて空歩で跳躍。

 集中して獲物の居場所を探る。


「あのっ、レンさん。ありがとうございま」

「クッハハハハ!見ぃつけたあぁぁぁ!!!」

「…………………そうですか」


 何か言うリリアナを、背中から生やした蛇で縛り密着させる。


「あの、レンさん?」

「いいから黙ってろ」


 赤い海中に、僅かに滲むように広がる赤。

 その中心を狙いすまして。


「【柘榴】」


 突き出した槍の先端から迸る無数の赤黒い弾丸が、海面を打ち据える。

 一瞬遅れて水柱を上げる水面。

 その中から現れた触手が、無防備な俺達をミンチにする寸前で。


「馬鹿が、かかりやがって!!」


 横刃を触手に埋め、スパイク代わりにして急加速。

 船の方めがけて蛇を振りかぶり、リリアナを投擲する。

 奥の方でアヤメが、慌てふためきながらリリアナをキャッチするのが見えたから大丈夫だろう。

 そのまま海中に飛び込んだ俺に殺到する触手を、躱して前に出る。

 焦ったように身を捩る蛸。

 その目と目の間、眉間めがけて槍を突き刺し捻じ込んだ。

























「で、何か言い残すことはありますか、レンさん?」

「いや、日本人として当然のことをしたまでで」

「死んでください」

「あっぶねえぇ!?」


 リリアナが突き出してきた銀色の短剣をギリギリで躱す。

 アレはアウトだ。

 不死者の命を刈り取る形をしている。


「というか、その明らかにアンデットに対する即死効果とかついてそうな短剣は何なんだよ」

「〔不死喰いの怨剣〕というらしいですよ?ルーシーさんが護身用にと渡してくれて………………」

「せめて護身に使えよ」


 やたら物騒な白いオーラを纏いだしていた短剣を鞘に納めるリリアナ。

 その後ろで、〆たばかりのタコ足を錫杖の先端から吹き上がる炎で器用に焼き上げるアヤメと、一歩引いたところでそれを見つめるギンカ。


「………………アヤメさん?それって食べていい物なんですか?」

「うん?おいしいよ?」

「………そうですか」


 諦めたように遠い目をしながら「一体皆さんの故郷はどんな人外魔境なんでしょうか?」などというリリアナ。

 ただの極東の鎖国チョンマゲ島国ですよ。


「タコ嫌い」


 ポツリと零すように呟くギンカ。

 旨いだろ、蛸。


「仕留め方にも下処理にも不備はなかったと思うが?」


 船に積んであった塩を使い、ヌメリを取り除いて内臓を摘出、身をブツ切りにした後に氷で冷やして身を締める。

 手筈通りの完璧な処理。


「………………違う、硬くて噛み切れない」

「ガキかよ」


 一抱え程もある肉塊に齧り付き、引き千切り咀嚼して飲み込む。

 旨いな。

 少々大味なうえに旨味が薄いが、それでも蛸だ。

 有明海産のが喰いたい。

 ギンカとリリアナに化け物を見るような目で見られるが、酷い誤解に決まっている。


「お兄ちゃん、そんなに食べてたら太るよ?」

「腹が減ったんだよ」


 そもそも、吸血鬼が太るのかという疑問が残るし。


「リリアナちゃんも食べる?」

「遠慮します」


 差し出されたタコ足をリリアナが押しのける。

 理解に苦しむ。

 船の上で蛸を平らげ、気の抜ける会話を交わしながら帰った。










よし!あとはこれで幕間かなんかをええ感じに挟んで適当に茶を濁して次の章に移れば…………なっ何だ君たちは!やめっ、うわぁあああ(日記はここで途絶えている)











気に入って頂けたのなら、高評価、ブクマ登録など宜しくお願いします。モチベーションに直結するので。

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