巨人と巫女と剣と
完☆全☆復☆活
「やっべぇ、やらかしたっ!!」
叫び声を上げて森の中を突っ走る。
暢気に飯食ってる場合じゃなかった。
あの2匹を相手にして、前衛が抜けた状況はマズすぎる。
木の根を踏み越え飛び越え、必死に走る。
向こうの方では、荒ぶる巨大な人型が二つ。
それらが腕やら脚やらを叩きつける度に加速していく環境破壊。
もっと森を大事にしろよ。
巨人の顔面に強襲をかけるメ〇フレイムじみた火炎放射と、それに耐える巨人達。
火耐性を意識したにしても、煤けただけってのは固すぎると思うんだ。
アヤメの最大火力でもぶち抜けるかどうか………………………コレ、もしかしなくても最初の計画が頓挫したんじゃ。
「邪魔してんじゃねぇよッ、雑魚が!!」
怒号を上げ、襲い来る魔物を文字通り蹴散らし踏破する。
カラスに顔面を小突かれたので叩き落し、ワンコに右腕を齧られるが気にしている暇は無いので腕を振って払い落とす。
正面から突撃してきた牡丹肉を跳び箱の要領で飛び越え回避。
茂みを抜け、木々に遮られる視界の中見つけたのは───────────────脇腹に刻まれた裂傷から血を零し倒れ伏すギンカの姿。
その頭部に杭の様な脚を振り下ろそうとする鶴嘴頭の巨人。
その尖った先端がギンカの頭蓋を貫く─────────────寸前で滑り込むように横から搔っ攫い、抱きかかえ回収する。
背中をゴッソリと抉り削られる、が問題無し。
呻き声をあげるギンカ。
腹からの出血が止まらない。
木立から物音、身を潜めながら駆け寄ってくる涙目のアヤメ。
生きてたか。
「ねぇ、ねぇ!ギンカちゃん無事だよね!?」
「何があった?」
「っ……………ギンカちゃんが、私を、それで」
「わかったからもう何も言うな」
軽くパニック状態に陥っているアヤメの頭を撫でて落ち着かせながら、ギンカの容体を見る。
青ざめた顔と細かく震える手足。
意識はない。
短く、喘ぐような呼吸。
普通にヤバいな。
生憎と俺は医療の知識もクソも無いヤブ医者ジャックだが、どうにかするしかない。
「少し我慢しろ」
「アグッ………ッギィ………アァッ!?」
穴の開いた箇所に肉塊(自前)を引っ掴み捻じ込み膨張させ、ついでに腰回りに巻き付けて応急処置完了。
雑すぎるがこれで良し。
止血にはなるし、ハラワタが零れるような事にもならないだろう。
苦痛に顔を歪め悲痛な叫びを漏らすギンカ。
罪悪感がエグイが仕方ないと割り切る。
手に付いた血を舐め取り太刀を握りしめて。
「アヤメ、最大火力頼む」
「お兄ちゃん!?」
「俺があいつらを拘束するから、その隙に撃て。いいな?」
「そうじゃなくて!」
「…………………悪い」
「ああっもう!好きにすればいいよ!!!」
憤るアヤメに背を向けて、巨人の方に歩き出した。
こちらに向けて腕を振るう巨人。
的確に肉を削ぎに来る一閃を躱す。
突き出された脚をいなし、地に埋めて走る。
腹の中で渦巻く激情。
心臓と脳をグシャグシャにかき回すような、そんな感覚。
少なくとも、目の前のこのクソどもを生かしておくわけにはいかない。
「お前ら、俺の仲間の腹抉っといて!生きて帰れると思ってんじゃねぇよ!!!」
跳躍、怒りに任せた大上段からの一太刀は、僅かに食い込むにとどまる。
やはり、硬いな。
太刀は碌に通じなかった。
槌も効くかどうか怪しい。
槍の傷では、あいつらを足止めするには心許ない。
鉈では小さすぎる。
剣も鎌も斧も棍も駄目。
ならば新しい得物を使うまで。
イメージするのは、厚く大きく波打つように歪む、もはや剣ですらない異形の片刃。
自分の内側からナニカが引き摺り出される感触。
俺の思考を反映した武具が歪み、変異していく。
5メートル近い長さのソレに肉塊を纏わせ、括りつけ、無理矢理担ぎ、喰剣と身体強化を発動し突撃する。
全身に甲殻を纏った百足を巻き付け、更に氷で覆い固定し、淡く白く光るそれを構えて────
「【乱れ牡丹:駆牙】」
押し切る。
重量と遠心力を最大限に活かし、刃が弾かれる勢いすら利用して独楽のように回り、2体まとめて脚を薙ぐ。
すれ違う一瞬の内に大小無数の傷を刻み付け、一泊遅れてそれが爆ぜる。
轟音が響き、巨人が膝をついた。
崩れ落ちながらも斧頭の巨人が腕を振り下ろす。
俺の真横を掠めるように通り過ぎ、地面にめり込んだ腕の上を駆け抜け、胴に飛び乗って刃を突き込むが弾かれる。
流石に硬いな。
ならばと、飛び降り全身から生やした触手をもって絡めとり縛り付ける。
巨人が藻掻く度に引き千切られそうになるが。
「っ……………【押さえ付けろ】!」
ギンカの放った黒い腕が、巨人の頭を、腕を、胴を、地面に叩き伏せ固定するも弾き飛ばされる。
恐らく後数十秒も持たないだろうがそれでいい。
「『我は先達の遺せし道標を拾う者』『破壊と殲滅の階梯を降る者』『未だ未熟なれど』『人の技の』『その深淵を覗く者』『故にその螺旋の一端を』『災禍の現身を望む』──────撃滅魔法LV1────────────【破砲】!!!」
アヤメの掲げた錫杖の先端に収束していく、真白の極光。
煌々と輝く螺旋の光芒。
前に見たときよりも明らかに規模を増した一撃が放たれ、巨人を穿つその寸前で。
拘束を跳ね飛ばした斧頭が、鶴嘴頭を庇う様に覆い被さった|。
二人組の巫女。
同時に黄泉返った者。
相手を庇うような動作。
朧気ではあるが推測はつくし、恐らくそれは正しいのだろう。
関係のない話だ。
全てを撃ち破る一撃が、斧頭の胴体を貫き砕き、鶴嘴頭の腹を穿つ。
風穴を中心にしてボロボロと崩れ灰と化す斧頭と、名伏し難い咆哮を上げる鶴嘴頭。
それがどんな理由によるものかなんて知りたくもない。
千切れた脚と半ば砕けた胴を引き摺り、身を起こそうとする鶴嘴頭。
その躰を動かすのは一体如何なる妄執か、それとも家族愛か。
考えたくもない。
後ろを振り返れば地面に倒れ伏すアヤメ。
早いとこフォローに行きたいが、こっちはこっちで限界が近い。
ついさっき食事をしたはずなのに、消耗から勝手に強化が解除される。
やっぱ消費がデカすぎるな、何とかしないと。
だがそれは後回し。
体を崩しながらも動き、その腕を振り下ろそうとする鶴嘴頭。
ありったけの余力をかき集め、抗うべく刃を構え。
「──────問題ない。私が行く」
俺の真横を、銀色の影が駆けた。
ばんそうこう代わりとでも言いたいのか、腹に巻き付けた黒腕と、だらりと下段に構えた直剣。
「おい、ギンカ!!待て」
「『葬星の神話』『巨人狩りの刃』『只人の戦士』『肉断ちの一閃』『その伝承の威を』『この場に示せ』────【錆鉄の貧剣】」
口の端から血を垂らし、悍ましい程に黒々としたナニカを纏う直剣を携え、疾走するギンカ。
狂気を感じるような凶相をつくったまま跳躍し、振り下ろした直剣が、巨人の胴を袈裟懸けに斬り裂いた。
これから2、3話書いてから幕間やら書き忘ゲフンゲフンゲフン!そう、敢えて!敢えて書かなかった分を!!!書き上げてから次の章に移ろうと思います。
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