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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
郷里と郷里と異変と

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徹夜と剣と食事と

意外に投稿してピンチ。でも書くのやめられないの(´・ω・`)

 朝靄のかかる赤色に染められた森を眺める。

 結局真昼間に寝たせいで夜通し眠れなかった。

 いやうん、寧ろ吸血鬼としてなら正しいのかもしれないが………………


「ぼさっとするな、吸血鬼」

「人の頭を叩くな」


 後ろからぶつけられそうになった拳骨を首を捻って躱す。

 振り返ってみれば、瞼の下に色濃く隈を作り、不機嫌そうに顔を顰めたギンカ。


「どうかした?」

「もしかしてだが、お前も徹夜したのか?」

「ずっと準備してた。……………まさか」

「ああ、その通りだ」


 理由は多分違うけども。


「それで、何してたんだ?」

「これを作ってた」


 そう言ってギンカが取り出したのは………………………灰色の襤褸切れに包まれた、一振りの古めかしい鉄剣。

 なんの変哲もない数打ちの安物に見えて、只の鈍らには有り得ない存在感を放つソレ。


「なんだこれ」

「『かつて我らが祖たる巨人は、貧相な鉄剣を携えた只人の剣士との千日戦争(テンサウザンドウォー)の末に相討った。巨人の爪は剣士の心の臓を貫き、只人の刃は巨人の肉を断ち切った。その骸は死してなお朽ちず、我らが郷里となり、我らの身の内を流れる。その剣は錆びることなく、今もただ巨人殺しの伝承を受け継ぐ』」


 目を閉じて意味のわからないことを朗々と告げるギンカ。


「どういうことだ」

「神話の時代の巨人殺しの戦士の剣…………その模造品」

「パチモンかよ」

「うるさい」


 しばかれた。

 自業自得ではあるが。


「もっと時間があればホンモノに近づけられるけど、一晩だとこれが限界。巨人殺しの伝承から作った刃は紛い物であっても、巨人の末裔に効果的に致命傷を負わせられる」

「おいおい、モラル的に大丈夫なのか、それ?」

「………………………実は禁忌でアウトだったりする」

「ダメじゃねぇか」

「…………………結構ギリギリのアウトラインで外法だったりする」

「ダメじゃねぇか」


 目を背けるギンカ。

 大丈夫かね………………


「アヤメを起こしてきて。早く向かった方がいい」


 明らかに話を逸らそうとしてるがまあいい。

 今頃爆睡しているはずのアヤメを起こしに行った。





















「ねぇ、まだ眠いんだけど?」

「昨日よく寝てなかったお前が悪い」

「今日のことは教えていたと思うけど?」

「仕方ないじゃん!ネクロノミコン面白かったんだもん!!」


 子供が駄々を捏ねるように────────実際子供だが────────手を振るアヤメ。

 見ていて面白いが、からかわない方がいいだろうな。


「そうだギンカ」

「どうかした?」

「今回の相手ってどれ位強いんだ?」


 相手の戦闘能力によって初手が大きく変わるしな。

 それこそ相手が強過ぎたら出し惜しみしたらあっさり負けるかもしれないし。


「神話の領域に片足踏み込んでる」

「アカンやん」


 脳裏にちらつくYOUDIDの文字。


「頑張れば勝てる、かも?」

「終わったな」

「いっそ私が纏めて吹き飛ばそうか?」

「よしそれで」

「………………わかった」


 納得いかない、と言いたげなギンカ。

 多分里の掟とか巫女としての役目的なサムシングがあるんだろうが、ここは諦めて貰おう。


「取り敢えず何とか隙を作って、その間にアヤメの最大火力をぶち込むと」

「安心してお兄ちゃん!ちゃんと火葬したげるから!!」

「やめろ」

「………早く埋葬されろ?」

「慈悲がないな」


 気休めと軽口を交わして進んだ。



























 木々を蹴り倒し、森を薙ぎ払い往く一対の巨影。

 目測50メートルを超える鈍色の長身と、その半分程もある長すぎる足。

 俯くように下を向く斧頭の様な頭部に、地面までだらりと垂れ下がった刃物のような両腕。

 赤く鬼火を宿した両眼にバックリと裂けた口。

 そしてそれに追従するように動くもう一体の異形。

 恐らく70メートルを上回っているであろう巨体に鶴嘴の様な頭部。

 白い巨杭の様な、4本の不釣り合いなほどに長い脚。

 異常に萎縮した胴体と、その前で交差するように組まれた両腕。

 ……………アレはアカン奴や。

 勝てる気がしない。

 メンバーは3人、前衛一人に後衛二人。

 相手は格上が2匹。

 大物喰らい(ジャイアントキリング)にも限界はある。

 あとさっき目が合った気がする。

 話し合い?

 知らない子ですね。


「よし、逃げるぞ」

「突撃する」

「援護お願いね、お兄ちゃん!」

「クソが」


 アヤメが錫杖を構え、ギンガが剣と腕を携え突っ走る。

 諦めて俺も腹を括る。


「『荒む顎』『みちぬ胃袋』『飽くなき貪食』『その業の一端を』『汝が眷属に授けたまえ』───────【喰剣】」


 喰剣を発動させ、ヤケクソ突撃。

 淡い白光を纏った大太刀を振りかぶり、足首を刈りに行き─────弾かれた。

 ガキィンッ!とか変な音がして火花が散る。

 流石にこれはおかしいと思うんだ。


「これ、どうするよ」

「頑張れお兄ちゃん」

「前衛頼む」

「クソが」


 悪態を零し太刀を構え、斬りかかろうとして嫌な予感。

 咄嗟に防ごうとして間に合わずに斬られた。

 というか見えなかった。

 体がずれ落ち、腸が零れ落ちかけるがすぐにくっつく。

 無駄な消耗が増えるから止めて欲しい。

 後ろを見ると鞭のように伸び、振るわれた一対の腕。

 更に加速し、唸り、音の壁を突き破って殺到したそれらに刻まれるが、どうせすぐ直る。

 身体強化を使って一気に飛び込み、刃を水平に構え。


「【乱れ牡丹】!」


 脚の一点を狙って斬り込む。

 弾かれそうになるのを筋力で押し切り、更に刀を振るう。

 爆炎と衝撃、そして無傷の外皮。

 流石にこれはへこむ。

 上からの殺気を察知。

 連続して振り下ろされる尖った杭に似た脚をギリギリで避けようとして、軌道を変えた一撃にどつかれる。

 胴体に大穴が空き、串刺しのまま持ち上げられ、ポイ捨てされた。

 さらにもう一体による斬撃。

 見事なコンビネーション。

 羨ましいな全く。

 こっちの後衛?

 後ろでサボっていますが何か?

 それに空腹がエグい。

 避けるよりも早く斬られるうえに、一発貰ったらそのまま空中でリンチされるから何も出来ない。 

 切られても治るから致命傷にはならないが、どうしようもなく。

 アヤメとギンカが狙われていないだけマシだが、どちらにしても隙を作って超火力を撃ち込んで貰わないとジリ貧にしかならない。

 どうやって討伐するべきか………………………


「ギンカ!拘束手伝っ」


 呼びかけようとした瞬間、正面から横殴りに振るわれた腕。

 なるほどね。

 斬撃を受けても修復する奴が相手なら、遠くまで吹き飛ばすのが最善だよな。

 はっはっはっはっは………………クソッタレが。


「お兄ちゃん?!」


 アヤメの声が聞こえた気もするが、返事も出来ずにぶっ飛ばされる。

 空歩で体制を立て直そうとした俺の視界に映ったのは────────────────いかにもチャージ中です、といった感じの紫光が収束する2体の口元。

 あぁ、まったく………………………


「厄日だチクショウ」


 極大サイズの十字砲火が、俺を消し飛ばした。



















「あっぶねえぇ………………ッ!」


 気付けば木の根元に転がっていた。

 いまだに煙を吹き再生途中の肉体を、無理矢理動かして立ち上がる。

 ふと、視線を前に動かせば鼻息荒くこちらを威嚇する、いつぞやの猪。

 取り敢えず害はないので放置して、虚空から太刀を取り出し見分。

 刀身に損傷は無し。

 というかそんなことはどうだっていい。

 至極どうでもいい。

 大事なことは俺の腹が減っているという事。

 そして………………………


「目の前にエサがあるってことだよな」


 豚生の危機を悟ったのか、慌てて逃げ出そうとする飯。


「って、逃がすわきゃねぇだろうがよぉッ!!」


 飛び掛かり頭を鷲掴みにして叩き伏せ、絶命させる。

 あまり旨そうだとは思えないが、喰えないよりはましだろう。

 腹を裂き、血の滴る生肉と湯気を立てる臓物に喰らいつき……………………………






オワッタゼ











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