巫女と半端者と不完全と
投稿速度がカス化する。(しないとは言ってない)
耳朶を打つ騒音で、目が覚めた。
何かが床をのたうち回るような音。
窓の外を見れば、まだ夜明け前。
ほとんど寝てないはずなのに、今朝はやけに体が軽い。
部屋を出て音がした方……………隣の部屋に向かい。
「お前ら、少し静かにしてく」
部屋の扉を開けると、ギンカを抱き枕にして眠るアヤメ。
目を擦って状況を把握する。
………………うん。
見なかったことにしよう。
「おいお前!早く助けヒャウンっ!?」
「う~………にゅふふ~ん」
「………………良い夢を」
「ちょっと待て」
逃げるんじゃない。
これは戦略的撤退というものだ。
自分自身にそう言い聞かせ、ベッドに戻った。
「レン、お前はいつか絶対この手で殺す」
「殺意高いな」
「ねぇ、昨日何があったの?」
「アヤメさん、そろそろ自覚して反省してください」
「なんで!?」
静かに黙々と朝食(パン粥蜂蜜がけ異世界風味)を口に運び、木製のコップに注いだ水を飲み干し一息つく。
優雅な朝の一時。
キャットファイトを繰り広げるチビッ子二人組とか見えないし知らないし聞こえない。
床に転がって揉みくちゃになって互いに頬を引っ張り合う二人なんていない。
涙目になってポカポカと迫力ゼロの音を出して叩き合うコンビなんぞ居るはずもない。
「………………お二人とも?それぐらいにしてくださいね?」
場に緊張が走る。
笑っているはずなのに般若の幻影が見える。
震えながら席に着く二人。
それ以前に…………………
「そもそも俺達は仕事で来てるからな?さっさと片付けて帰るぞ」
「せめて、故郷の皆とつもる話ぐらい」
「却下だ」
「クソが」
「輸血パックがないんだよ」
腹が減り過ぎたら再生が遅くなるうえに強化も出来ないから戦えないんだよ。
空腹だとなんも出来んのですわ。
「甘えるな」
「酷いな」
そもそも船が沈んだせいで、今現在こうなっているわけだから、ギンカの責任でもあると思うのだが………
「どっちにしても早く倒した方がいいし、取り敢えず話聞きに行こ?」
アヤメがまともなことを言うという異常事態が発生。
これは荒れるぞ。
槍の雨が降るか、星が降るか、それとも世界が滅ぶのか。
「………………ねぇ、なんで皆引いてるの?」
訝しげに眉を寄せるアヤメ。
当たり前のことだから仕方ない。
しかし的を射た発言であることもまた事実。
何か腑に落ちないが気にしないようにして家の外に出た。
「そもそもワシ等、この村の住民の由来は神代の時代に死して一柱の神となった巨人の聖骸に住み着いた流浪の民がその血に適応したものじゃ。故に稀ではあるが、その力を色濃く受け継いだ『巫女』が現れる。巫女となったものは名前を変え神に仕える事になる。今回おぬしらに倒して欲しいのは先代の巫女、その成れの果てじゃ」
唐突に語りだした長老さん。
そして色々おかしい。
新参者に暗黙の了解を求めるのは、時代遅れな気がするんだ。
「どういうこと?そんなのは聞いていない」
状況についていけていない俺と、何やら焦った様子のギンカ。
「この土地には先に言ったように神の血が流れている。信仰を持たぬ故にそれに適応できぬ祈り持たぬ魔物どもは形状が崩壊し怪物と化す。それが先代の巫女の遺骸で起こった。それだけの話じゃ」
つまりターゲットは俺の同類と。
厄介そうだな。
………いや待て、もしかすると、不死者どうし意気投合からの和解ルートが成立する可能性も。
「……………………先代たちの状況は?」
「こちらに向かってきておる。故に早急な討伐の必要があるのじゃ」
「わかった。明日には出る」
部外者を置いていくな。
身内にしか通じない話題はタブーだという事を知れ。
そして黙ったまま席を立つギンカ。
「待てギンカ、せめて説明ぐらいしろ」
「時間が勿体ないからあとで話す。…………………明日の朝に出るからそれまでに準備しておいて」
「ギンカちゃん、少し急すぎない?」
「悪いけどこれから用意があるから先に行ってる」
そそくさと出ていくギンカ。
アヤメと目を合わせ肩を竦める。
お爺ちゃんに礼を言い部屋を後にした。
「結局ギンカはどこに行ったんだ?」
「知らないよ?本人が言ってたし準備してるんじゃない?」
適当な話をしながらできるだけの用意をしておく。
といっても、二人揃って持って行く物も何も無いのだが。
帰ったら何食べようかなどとどうでもいい事を考えながら床に転がる。
ベッドの上で寝転び、足をバタつかせながらネクロノミコンを読むアヤメ。
危険人物×危険物。
マッドサイエンティストとタイラントなウイルスのランデブーの様な、破滅の香り。
「何を読んでいるんだ?」
「生命力を代償とした術式の威力底上げ及びに邪神召喚についての考察、かな?」
「やめとけ」
お前ならそんなことしなくても十分な火力出るだろ。
「そうだ、吸血鬼に関係した内容のページもあったよ?」
マジか。
普通に嬉しいぞ、それは。
「何が書いてあったんだ?」
「吸血鬼の力を利用した不死の軍勢の量産と筆者自身の吸血王化に至るまでの実験記録だね。日記形式なんだけどアンデットの量産には成功したものの、それらの操作や自分の吸血鬼化には失敗して、最終的に知性も理性もない怪物になって死んでるね。自業自得かな?」
「辛辣だなぁ、おい」
何時にも増してアヤメの毒舌が鋭いのは、きっと気のせいじゃないだろう。
「取り敢えず吸血鬼が下級から始まって戦士、騎士、僧侶、聖騎士、賢者、呪い使い、純血貴族とか色々派生して最後は吸血王に行き着くみたいだね」
「吸血鬼で聖騎士って呼ばれる段階で矛盾しているように思うのは俺の気のせいか?」
というか俺がその吸血聖騎士とやらになれば、ワンチャン目の前のフレンドリーファイヤ大好き妹の誤爆に耐えられるようになれるんじゃ………………
「普通なら爆発四散するみたいだね」
「クソかよ」
救いなんてなかったんや。
「それ以前に、お兄ちゃんが今何処にいるのかわからないんだよねぇ………………」
どういう事よ?
「いや、今のお兄ちゃんってさ、ぶっちゃけ段階を幾つかすっ飛ばして、そうなってるのよ。魔王様は下級って言ってたけど、それにしてはスペックが矢鱈と高いし、上級、或いはそれ以上と考えるには中途半端すぎる」
いきなり上げて落とされた。
「これは私の推測なんだけど………………お兄ちゃんは今、不完全な上級吸血鬼なんじゃないかな?」
「すまん、分かり易く説明してくれ」
「肉体的には上級吸血鬼としての性能があるけど、頭の中では自分の事をまだ人間だと思っているからこその半端者なんだと思うよ?」
言い方に一々棘が多い気がする。
それに。
「最近結構人間離れしてきたと思うんだが」
触手生やしたり肉壁作ったりしてるし……………………
「まだ足りてないんじゃない?」
つまり俺にこれ以上の変身をしろと?
第三形態はまだ実装されてないぞ?
「もっと頑張ればどうにかなると思うよ?」
「ハイハイ」
適当な返事を返し、明日に備えて瞼を閉じた。
ブラボの実況がおもろ過ぎるんや。
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