海と沈没と島と
何故か8000字越えてて確認したら4000字のループが爆誕してた。
「………………なぁ、本当にこれで行くのか?」
「もちろん」
目の前の浜につながれた一艘の船。
木材と思しき素材で作られたソレは、分類的には双胴船と呼ばれる類のもの。
側面から伸びた一対の棒の先には、丸太で作られた浮き。
船の中央にはマストが一つ。
どこかで見た様な、小型の船。
4人で乗るには、少々狭そうだな。
「そもそも、これはなんだ?」
「これで渡ってきた」
「マジかよ」
コイツ船の操縦できたんだな。
「二人共お待たせ!」
「皆さん、よろしくお願いしますね」
いつも通りの服装のアヤメに、黒と白のスカートみたいな民族衣装を着込んだリリアナ。
妙に甘ったるい匂いからして、化粧とか香水の類でもしてきたのか?
「……………リリアナ、その服装でいいのか?」
「え?旅行なので御洒落をしようと思ったんですけど」
「普通に任務だぞ」
「……………アヤメさん?」
「カートルっぽい服を見つけたから似合いそうだなと思って………………」
「…………………覚えていてくださいね?」
「ヒイィ!?」
笑っているはずなのに笑顔に見えないリリアナと、完全に涙目のアヤメ。
自業自得という奴だろう。
「早く乗って?もうそろそろ出発したい」
ギンカに急かされて船に乗り込み海に出た。
小舟を遠慮容赦なく打ち据え、砕き、海の藻屑にしようとしてくる荒波。
船を巻き上げひっくり返し沈めようとする高波。
どんよりを通り越して黒く染まった空から吹き降ろされる暴風。
今日の天気は豪雨、時々落雷。
クソが。
「うっぷ、オボロロロ」
「フニャアァァァ?!!!」
アヤメが嘔吐し、リリアナが甲板から吹き飛ばされかけるのをギリギリでキャッチ。
危うく死人が出るところだった。
初めから俺は死んでいるし、ある意味死屍累々の惨状ともいえるその中でただ一人、凶相に笑みを浮かべ淡々と帆を繰り舵をとるギンカ。
実に楽しそうで何より。
船体が軋みマストが吹っ飛び、波に揉まれ木端微塵になる。
もう少しでミキサーにかけられる野菜の気持ちが理解できそうだ。
……………うん。
「これ本当に大丈夫なんだよなぁ!?」
「知るか!!!」
「ふざけるな!」
そうこうしている合間にも状況は悪化するばかり。
大波に翻弄される木製の船体が、いよいよ断末魔の悲鳴を上げてギシリと大きく軋み沈没する、その寸前で─────────────────青空が見えた。
暗がりに慣れた目に光が差す。
先程までの異様な悪天候が、まるで嘘のような快晴。
波に乗った船は安定を取り戻し滑るように進み始める。
海鳥が先導するように飛ぶ中、勝ち誇るように溌剌と笑うギンカ。
「どう?」
ニマニマしながら訊ねてくるギンカ。
クソうざいが、ここは素直に褒めるべきだろう。
下手に拗ねられても面倒くさいし。
「…………お前、凄かったんだな」
駄目だ、これぐらいしか言えない。
流石にこれはキレられそうだ。
さて、どう宥め「当然。私が凄いのは当たり前」………………アカン、どう足搔いても『チョロイ』の文字しか出てこん。
笑いそうになるのを堪え、耐え忍ぶ。
「これからは呼び捨てじゃなく『ギンカ様』と呼んで敬い崇めるよっ?!」
「フグォワッ?!」
轟音が響き船が一気に傾く。
崩れそうになった体勢を、咄嗟に腕から伸ばした触手を甲板に突き立てて無理矢理支える。
ほっと一息ついた瞬間、背中にドロップキックを命中させるギンカ。
ここが正念場と全力で踏ん張って耐える。
「……………………おいゾンビ、上見たらぶっ殺す」
「上って」
言葉につられて上を見ようとして首を蹴り折られた。
………………………………まさかの黒かよ。
「受け止めてお兄ちゃん!!」
「ウニャァァアァアァァ!?」
「ヒデブッ!?」
追加される重量、ほぼ間違いなくアヤメとリリアナ。
その衝撃で固定していた百足が外れかけ。
「舐めんじゃねぇぞ、アンデット!!」
気合を入れて足の爪を太く鋭く変異させ、突き刺す。
人間3人分の体重ぐらいならまだ余裕で支えられる。
ひとまず危機は脱した。
これからどうするべきか………………
「取り敢えずこのまま行けるところまで行っ」
海面が爆発的に盛り上がり、波間を割って飛び出してきた異形の群れ。
大きく鰭を広げたソレは、寸法と一部のフォルムこそおかしいものの、それなりに慣れ親しんだあいつ。
──────サバ。
鯖。
SCOMBER。
鯖缶に味噌煮、水煮と保存が効くうえに、栄養も豊富な意外と使い勝手のいいあいつ。
無数のそれらが滑空するように飛んでいく、キチガイじみた光景。
そのうちの一匹が瀕死のボートに激突し……………
「クソが」
全員仲良く吹き飛ばされる。
海面に叩きつけられるがどうせ回復するので問題なし。
下を見れば口から気泡を吐き溺れるアヤメとぐったりしたまま沈んでいくリリアナ。
二人の腰に触手を巻きつけ俺の近くに固定し、ギンカを抱えて浮上する。
近くの板切れにしがみつき取り敢えずの足場に。
ここからどうしようか。
「おい、ギンカ。どこに向けて泳げばいい?」
「……………あっち、海が赤く染まっている方」
ギンカが指をさした方を見れば確かに水平線が薄らと赤く染まっているように見える。
うん。
水平線。
確か水平線の距離が大体5キロメートルほど。
この異世界でもそれが通用するかはわからないが、それより短いことをお祈りしながら泳ぐことにした。
……………あのクソ魚共は、いつか絶対味噌煮に加工してやる。
泳ぎ続けること体感およそ45分。
ずぶ濡れのまま上陸した。
3人を紅い地面に横たえて、取り敢えず放置。
「なぁ、ギンカ。ここからどこに向かえばいいんだ?」
「…………あの谷に開いた洞穴の近くに、集落があるからそこに」
遠くを見れば、森の奥に奇妙な形状の谷間と、その中腹に開いた二つの大穴。
結構遠いが何とかなる。
肋骨を反転させて伸ばし組み上げて籠状にして、3人を放り込む。
雑だがこれで十分。
必死の運搬ミッションが幕を開けた。
アカン、この森、ヤバい。
色々おかしい。
全部が赤く染まりきっていることはまだいい。
俺の知っている猪は全身から目玉を生やしてもいなかったし、足も5本じゃなかった。
蛇にしても、体を切り離して爆撃に使用するクリーチャーではない。
どこぞの速度が3倍の専用機みたいに、全身赤く染まった野性味過多のジビエ達。
殺意の波動をぶつけるのが得意なフレンズが襲い来る中、全力で走り抜ける。
人面のバッタを出会い頭に蹴り飛ばし、無数の翅に覆われた肉塊の様なサムシングを叩き伏せる。
何故かはわからないが、デタラメに生物を継ぎ接ぎして作った様な連中なので寧ろ逃げやすい。
自分の足が邪魔になって動けない奴や、そもそも足が生えていないものまで。
子供がレゴで遊んでも、もう少しまともなものを作るぞ。
温存していた身体強化を最大出力で使い、一気に駆け抜ける。
木の根を飛び越え枝に触手を巻き付け、ターザンロープの要領で宙を舞う。
背負った籠から「グェッ?!」ッという悲鳴が聞こえるが無視で。
ダグト〇オモドキを踏みつけ前進。
背後から迫りくる連鎖暴走を何とか撒いて、谷に辿り着いた時には日が暮れていた。
赤く、僅かに湿った血錆の匂いの漂う谷壁に掘られた階段を降りる。
下の方には赤い木の柵で囲まれた村が見える。
多分あそこだろう。
門の前で遊ぶ人影。
第一村人発見。
毬のようなものを蹴り合って楽しそうにはしゃぐ子供たちに尋ねる。
「悪い、一つ聞いていいか?」
「誰だよオッサン」
年端もいかない子供にオッサン呼ばわりされた。
いや、まぁ、確かにこいつらの年から考えたらそうなるんだろうが………………流石にそんな風に言われるほど老けているつもりもなかったから、余計に応える。
心に突き刺さるは言葉の刃。
悪意のない悪言は時に、どんな凶器よりも容易く人心を傷つける。
「あれ?巫女の姉ちゃん?」
「あ?」
俺の後ろを指さす少年。
振り返るが何もいない。
「シルム?」
のっそりした動きで籠から身を乗り出すギンカ。
巫女ってコイツの事か?
「なんだよ、姉ちゃんの知り合いかよ。だったらそうだって言ってくれれば良かったのに」
「ハーマもいたの?」
シルムとハーマがこの二人の名前なのだろうか?
どちらにしろ………………
「なぁ、村の中に入っていいか?」
「姉ちゃんの仲間なら問題ないよな?」
「大丈夫なんじゃないかな?」
「やめておこうよ。このオッサン、妖しいし」
「でも姉ちゃんの知り合いだよ?」
「でも胡散臭いぞ?」
好き勝手言いながら相談する子供たち。
「……………確かにこいつは怪しいし、胡散臭いけど問題ない。早く通してくれる?」
「お前なぁ……………」
色々と酷い。
仕方ないのかもしれないが、それにしてもあんまりだろう。
扉が開けられ中の光景が見えた。
木造の家と小さな畑。
家畜小屋らしきものもある。
すべてが赤いことを除けば、ごく普通の村。
そしてやたらと子供とお年寄りが多い。
どこを見渡しても、少年少女とお爺ちゃんお婆ちゃんしかいない。
この村大丈夫なのか?
「ギンカ、この村、どうなっているんだ?」
「私みたいに働ける人が出稼ぎに出てるから……………夏ならもっと人が多い」
いつもならもっと村人がいると。
「今は何人ぐらい人がいるんだ?」
「100人くらい?夏だったら400人ぐらい居るかも」
「少ないなぁ、おい!」
もしかして割とヤバい状況なのか、この村。
「あんた等、魔王軍の人か?」
お爺ちゃんが尋ねてきた。
なんとなくだが、近所の家具屋の爺さんに似ている気がする。
「はい、救援要請が来たので」
「遠いところからよく来てくれたな………………とにかく今日はもう休んでくれ。そちらのお嬢さん方にもゆっくりしてもらうべきだろうしな」
ヤバい。
二人ほど背中に背負ってたのを忘れてた。
「こっちに来て」
ギンカに連行された。
連れていかれた先は村外れの一軒家。
古びてこそいるがそれなりに丁寧な造り。
「ここは?」
「私の家。人が4人くらい眠れる程度の部屋はある」
「借りていいのか?」
「どうせ使わないし問題ない……………使う人もいないし」
「今なんて言った?」
「……………何も」
微妙に気になるが気にしないでおこう。
案内された部屋の中に二人を寝かせて、俺自身も拝借した布団に潜り込み、眠りについた。
シダ虫(ヒトデに寄生するヤベーヤツ)に寄生されてたので一週間ぐらい投稿速度がカス化します。許してください。
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