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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
郷里と郷里と異変と

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表彰と危険と脳髄と

おっそくなったぁぁああ?!!

 前来た時と違い、豪華に飾り付けられた大広間。

 天井からぶら下げられた、蠟燭も点いていないのに燈を灯すシャンデリア。

 ある種のパーティー会場のようなその部屋の壁際には、軍服を着こんだ異形の軍勢と、貴族服に身を包んだ角と尾を持つ人々。

 横を見ればプルプルと震えるアヤメとギンカ。

 恐らく俺も似た様子だろう。

 そして後ろで、虚無を感じさせる表情でブツブツと何かを呟き続けるリリアナ。


「おい、リリアナ。大丈夫か?」

「なんで私がここに連れてこられたんですか!?私、非戦闘員ですよ!?」

「道連れだな」


 どっかの偉い人が言ってた。

 道連れは多ければ多い方がいいって。


「魔王直属強襲部隊隊員、前へ」


 厳かに告げられた合図に合わせて前に進む。

 緊張からか右手右足が同時に前に出るアヤメに、油の切れた発条人形の様にぎこちなくギクシャクと動くギンカ。

 墓から起き上がった動死体(ゾンビ)の様に生気のない動きをするリリアナ。

 こちらを凝視する異形の頭部を、脳内フィルターでカボチャとジャガイモに置き換え、誤魔化して歩く俺。

 笑いを堪える魔王様。

 クソムカつくがここは我慢。

 心を静めて整列し、どっかで見たうろ覚えの記憶を元に、なんかそれっぽい姿勢をとる。

 慌ててそれをまねる皆。

 偶然にもコレで合っていたみたいだ。

 周りの人たちが失笑しているのは気のせいだろう。

 うん、きっとそうだ。

 そうに決まっている。

 隣のギンカが「コイツぜってえぶっ殺す」とでも言いたげな凶相で睨み付けてくるが、間違いなく冤罪だろう。


「…………………プッ」


 魔王(この人)、笑いやがった。何にも知らない素人に教えもせず、いきなり本番に持ち込んだらこうなるのは普通の事だと思うのだが。


「それでは、今より表彰を始める」


 頬がピクついているものの、表情筋を引き締め真顔になる魔王様。


「ランチェルブス地方、〔巨人の里〕出身。『巨人の祈祷師(ギガント・シャーマン)』ギンカ・オリバナ」

「はっ、はい!!」


 ややキョドリながら返事をして前に出るギンカ。

 奥の通路から、緑髪の女性がワゴンに乗せた何かを運んでくる。

 そのうちの一つを手に取る魔王様。


「先の一戦での勇者討伐の戦功を称して、君にはこれをあげよう」


 そういって魔王様が手渡したのは、紅の淡い輝きを帯びた片刃の短剣。

 緩やかに湾曲した刀身を持つ、幾分か大きめのカランピットの様なナイフ。


「これは?」

「アヴィンの遺した盾を削りだして造った物だ。君を守ってくれるかどうかはわからないけど、間違いなく君が持っているべきものだろう」

「……………っ、ありがとうっ、ございます!!」


 涙ぐみながらナイフを掻き抱き頭を下げるギンカ。

 微妙にもやもやするが気にしない方針で。


「異世界、〔二ホンコク〕出身。『撃滅魔導士(エクスプロージョナ―)』アヤメ・アガワ」

「ひゃいっ!」


 思いっ切り噛みながら前に出るアヤメ。

 そして渡されたのが………………………


「本?」


 生皮で舗装され、どす黒い靄を纏い、鎖で雁字搦めに封じられた分厚く巨大な本。


魔導祈祷書(ネクロノミコン):バラム。72冊しかない魔導の神髄について書き記された禁書の一冊。君にピッタリだと思って引っ張り出してきたんだ」


 アカン、間違いなくアカン奴や。

 明らかに伝説のなんちゃらとかそういう類のマズい一品でっせ。 

 そして目を輝かせながらそれを嬉々として受け取るアヤメ。

 危険物×危険物。

 混ぜるな危険。

 もはや手遅れ。

 ワーニングワーニング。


「同じく異世界、〔二ホンコク〕出身。『|吸血の厄星(ヴァンプディザスター)』レン・アガワ」

「はい」


 返事を返して前に行く。

 渡されたのは……………………黒みががった銀色の金属とコルク栓で封がされた、一本の大瓶。

 その中になみなみと満たされた、やや黄色がかった白濁した粘液。


「………………これは?」

「古の吸血大公、その脳髄液だよ。そもそも不死者を殺す方法は大きく分けて4つある」


 4つもあるのか。

 不死とは一体………………


「一つ目が魔法による浄化。二つ目が高位の戦士の祈りを込めた致命的一撃(クリティカルヒット)。3つ目がオリハルコンやミスリルで造られた魔力を帯びた武具による攻撃。そして4つ目が共喰い。不死者を不死者が喰らうことで消滅させ、その力を取り込む。つまり君がこれを食べることで………………君は強くなれる」


 キメ顔で言う魔王様。

 ってオイまさか。


「俺にこれを喰えと?」

「そうなるね」


 表彰でもらえるのが罰ゲームか………………………………チクショウ。


「そうそう、あともう一人いたんだった。獣国、〔今は亡き黒獅子族の村〕出身。リリアナ」

「ふぇあぁ?!」


 素っ頓狂な悲鳴を上げるリリアナ。


「君にはこれをあげよう」

「あっえっ、あのその」


 渡されたのは………………目の潰された十二翼の怪蛇を模った赤銀の腕輪。


「『サマエルの守り輪』。ある程度の結界と迎撃性能を持つ魔法道具だね。非戦闘員の君には丁度いいんじゃないかな?』

「えっと、あの、ありがとうございます!!」


 恐縮しまくるリリアナ。

 少し面白いな。

 実際、戦闘力の低いリリアナにはいい感じの安全策になるだろうし。


「レン君。君に一つ頼みたい」

「何ですか」

「現在、魔王直属強襲部隊の隊長は欠員状態にある。つまりその役を務めれる人材が必要なわけだ」


 嫌な予感がする。


「引き受けてくれるね?」


 くそったれが。

「君は強くなれる」………………このネタ分かる奴居るんかなぁ?










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