帰還と表彰とぬいぐるみと
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!投稿が遅れてしまったッ!!!!
「さて、これからどうするべきか………………」
地面に座り込み考える。
ダメだ、疲れて何も出てこない。
腹が減った。
隣に転がってる侍の死体を喰ったら動ける気もするが、それをやったら、いよいよ人として致命的にナニカを失う気がする。
でも腹が減った。
このジレンマよ。
「お兄ちゃん!手伝いに来たよ………………って、もう終わらせちゃってたか」
何故か残念そうにするアヤメ。
わけがわからない。
「ああ、割と苦戦したが、何とか勝てた。そっちは?」
「楽しく遊べたよ?」
「そうか………………待て、今なにか途轍もなく不穏な言葉が聞こえた気がするんだが」
「そう?」
キョトンとするアヤメ。
無かった事にしよう。
「まぁいい……………ギンカはどうだった?」
「私は知らないよ?」
嫌な予感がする。
「……………早く行った方がよさそ」
俺の台詞を遮って、遠くで吹き上がる土煙。
遅れてやってくる表現しがたい爆音と衝撃波。
「うにゃあぁぁああ!?」と奇怪な悲鳴を上げて飛ばされるアヤメ。
土埃を斬り裂いて現れる、ゴマ粒サイズの黒い影。
強化された視力で捉えたソレは、俺の記憶に狂いがなければ勇者の筈。
ズタボロの状態で打ち上げられたソイツの顔には、あからさまな恐怖の表情。
「やりよったなギンカ」
俺を襲う異様な怖気と悪寒。
どことなく、白鯨と遭遇した時のソレにも似たプレッシャー。
地上の一点を中心に放射状に伸びる無数の腕、腕、腕。
互いに絡みつき掴み合い癒着したそれらが、一つの黒く節くれだった巨腕の形をとり───幾重にも重なった衝撃波の円環を作りながら、勇者を叩き潰した。
同心円状にぶち割られたクレーターの手前に膝をつき、肩で荒く息をするギンカ。
陥没した大穴の中心に転がる、よくわからない肉塊。
ざまぁみやがれ。
ギンカの後ろから声を掛ける。
「お疲れさん」
「………………あぁ、ゾンビか」
酷いな。
「ギンカちゃん、怪我とかしてないよね?」
恐る恐るといった様子で尋ねるアヤメ。
「コフッ……ッ………あばらが2本と右足がやられた。それ以外には特に問題ない。回復お願い」
口の端から血を零すギンカ。
だが…………………
「俺にはムリだぞ?」
「私も無理だけど」
「………………えっ?」
豆鉄砲で撃たれた鳩の様な表情のギンカ。
「アンデットが自分の弱点の回復を使えるわけないだろ」
「私はそもそも覚えてないんだよねぇ………………殺される前に殺せばいいし」
危険思想を暴露するアヤメ。
後できつめに叱っておこう。
「………ポーションぐらいあるよね?」
「持ってないな」
飲んでもダメージ受けるだけだし。
「魔力回復薬ならあるけど……………飲む?」
「いらない」
差し出された小瓶をペイっとはねのけるギンカ。
「…………というかあの人が負けた相手にどうやって勝ったんだ?」
厳密に言えば一対一ではなく多対一だった筈だから、そこら辺がどうなのかよくわからんが。
「あのクソが奇跡を封じてきた」
「マジかよ」
アヤメだったらその段階で詰んでるな。
自己強化が使えないなら、俺も普通に負けるかもしれん。
「だから拳でぶん殴った」
「おい待てそれはおかしい」
何でそうなる。
「それから更にコレで殴った」
そう言いながら手に持った黒い腕を見せつけてくるギンカ。
何かがおかしい。
「気絶するまで小突き回して放り投げて後は……………」
握り拳を作り、振り下ろすマネをするギンカ。
「ペッタンコ?」
「あの一撃をそんな生易しい擬音で表すな」
ギンカが小首を傾げ………………そのまま地面に倒れ込んだ。
「おい、大丈夫か?」
「………………さっきのあれは、今の私の、文字通り最大火力。よって消耗もかなり激しい」
「何が言いたい」
「あと任せた」
ゆっくりと目を閉じ寝息を立てるギンカ。
軽く揺すってみるが起きる気配はなし。
やりよった、こいつやりよった。
「………………お兄ちゃん、私が運ぼうか?」
「その貧弱体力でか?」
「頑張れお兄ちゃん」
とてもいい笑顔でサムズアップを決めるアヤメ。
暢気に寝るギンカ。
いっそもう、これでいいか。
腕の骨を急成長させ、捻じ曲げ拡大し格子状に。
肩を突き破って生えたソレの上にギンカを横たえ、骨材で括り付ければ完成。
クソ雑だがこれで十分。
「………………………ねぇ、お兄ちゃん。流石にそれは手抜きだと思うんだ」
「なら、お前も括られてみるか?」
「あっ………うん。ごめんなさい」
途端に萎れるアヤメ。
担架を持ち全身の筋力を用いて担ぐ。
意外に安定するな。
「お兄ちゃんって、意外とゴリラ?」
「キレるぞ」
軽口を叩きながら帰還した。
「レンさん、無事でしたか」
「往生しかけた」
「無事なんですよね!?」
叫ぶリリアナを宥めて落ち着かせる。
「ギンカちゃん寝かせてきたよ?」
やたらツヤツヤした顔のアヤメ。
隣の部屋から何やら嬌声が聞こえてきたが、気にしない方がいいのだろう、うん。
「それでこれからどうするの?」
「取り敢えず魔王様に報告に行くぞ」
「来たよ」
いつの間にか後ろにいた魔王様。
この人いつもこうだな。
「じゃあ、状況説明よろしく」
「勇者パーティーを殲滅しました」
「………………それだけ?」
「ほかに何を話せと?」
「いや、血沸き肉躍る戦いの描写を………………」
「不意を突いて噛み殺しました」
「一方的に嬲り殺しました」
「………………なんか、ゴメン」
微妙な顔の魔王様。
「あぁ、そうだ、君たちに伝えておきたいことがあるんだ」
「唐突ですね」
いや、本当に。
そして真顔になる魔王様。
「後で表彰するから皆で大広間に来るように」
「はぁ?」
「おいギンカ、起きて」
「乙女の部屋に入るな」
起こしに行った俺の顔面にめり込む、ファンシーなウサギのぬいぐるみ。
投手は、やたらモコモコしたクマのアップリケの寝間着を着込んだギンカ。
「………………その寝間着はお前の趣味か?」
「気付いたら着てた」
「…………………………あいつの趣味だな」
脳裏に浮かぶうちの妹。
後で話をしよう。
「それでどうかしたの?」
「魔王様から大広間に行くように言われているから、早く着替えろ」
「………………………」
いつもよりだいぶ温度低めのジト目で睨んでくるギンカ。
「部屋から、出てけっ!!!」
吹き飛ばされた。
解せぬ。
俺はまだ死なんぞオォォォオォォォオォォ!!
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